法人口座は都市銀行だけでなくネット銀行でも開設できる。どちらで法人口座を開設すべきか迷う人のために、ネット銀行と都市銀行を徹底比較する。法人口座の開設におすすめのネット銀行も紹介するので参考にしてほしい。

目次
1.ネット銀行と都市銀行のメリット・デメリットを比較
2.法人口座開設をする銀行を選ぶポイント
3.銀行の法人口座に落ちてしまう4つの理由
4.法人口座開設におすすめの銀行4選
5.メガバンクや地銀の併用もおすすめ

1.ネット銀行と都市銀行で法人口座を開設するメリット・デメリットを比較

ネット銀行,法人,口座
(画像=ipopba/stock.adobe.com)

ネット銀行と都市銀行で法人口座を開くにはそれぞれメリット・デメリットがある。両者の違いについてみていこう。

ネット銀行で法人口座を開設するメリット

実店舗を持たないネット銀行で法人口座を開設するメリットは以下の3つだ。

・振込などの取引がオンラインでできる
・他行宛ての振込手数料が安い
・法人に必要な銀行サービスも受けられる

ネット銀行ではオンラインバンキングを利用し、あらゆる手続きをインターネット上で行う。残高照会・取引履歴の確認・振込など、基本的に24時間365日できるのがメリットだ。

ネット銀行では、これらの手続きのためにわざわざ店舗へ出向く必要がなく、ビジネスで貴重となる時間や労力を節約できる。

ネット銀行での現金の出し入れはコンビニや金融機関などの提携ATMを利用できるので、店舗がなくても問題ない。その分、ネット銀行は人件費などのコストを抑えられるのも特徴だ。そのため他行宛ての振込手数料に関して、都市銀行よりも安い傾向にある。

銀行名 金額 他行宛て振込手数料(税込)
GMOあおぞらネット銀行 3万円未満 166円
3万円以上 261円
ジャパンネット銀行 3万円未満 176円
3万円以上 275円
楽天銀行 3万円未満 168円
3万円以上 262円
三菱UFJ銀行
(インターネットバンキング)
3万円未満 220円
3万円以上 330円
三井住友銀行
(インターネットバンキング)
3万円未満 220円
3万円以上 440円
※各社の公式サイトをもとに2020年6月筆者作成

法人口座の場合、定額自動振込などのサービスが必要な場合もある。ネット銀行でもこれらのサービスに対応しているので問題ない。

ネット銀行で法人口座を開設するデメリットと注意点

ネット銀行で法人口座を開設するデメリットや注意点として以下の2点が挙げられる。

・口座開設で面談がない
・社会的な知名度が低い

ネット銀行の口座開設は、提出した書類ですべて判断される。都市銀行では面談があり、事業内容・計画などを丁寧に説明することで心証を良くすることも可能だが、ネット銀行にそのような機会はない。

ネット銀行は歴史が浅いため、都市銀行と比べて社会的な知名度が比較的低いことも留意しておきたい。会社によっては取引先の信頼性について、主要取引銀行で判断することもある。

都市銀行で法人口座を開設するメリット

法人口座を都市銀行で持つメリットは以下2点だ。

・支店が多く、知名度が高い
・融資など対面で相談できる

原則として実店舗を持たないネット銀行に対し、都市銀行は実店舗数が多い。入出金や振込手続きなどに加え、さまざまな相談を窓口でできるのもメリットだ。

知名度の高いメガバンクに口座を持っておくと、会社としての信用度がプラスになり、大手企業などとの取引のときに役に立つこともある。

また法人口座の場合、融資などで相談したい機会もあるだろう。店舗に出向き、担当者と対面で話せるのも都市銀行のメリットだ。

都市銀行で法人口座を開設するデメリットと注意点

都市銀行で開設する場合、以下の3点には注意しておきたい。

・他行宛ての振込手数料が高い
・インターネットバンキングを利用すると月額利用料がかかる
・審査が厳しいこともある

都市銀行では他行宛ての振込手数料がネット銀行と比べて高い傾向にある。他行に振り込むことが多い法人でコストを抑えたいなら、ネット銀行も検討しておいたほうがいいだろう。

法人が都市銀行でインターネットバンキングを利用すると、以下のような月額基本料が発生する。

・三菱UF銀行BizSTATION:1,760円
・三井住友銀行パソコンバンクWeb21<デビュー>タイプ:2,200円
・みずほ銀行ビジネスWEBライトプラン:3,300円

月額基本料が毎月かかることを考えると、注意が必要なコストといえる。上記はいずれの銀行でも最安の場合で、オプションを追加すればさらに高額になる。

一般的に都市銀行は法人口座開設の審査が厳しいとされている。口座開設を断られた場合、ネット銀行に申し込んでみるのも良いだろう。

2.法人口座開設をする銀行を選ぶポイント ネット銀行での法人口座開設に向いているケースとは

どこで口座開設をすべきか迷う人のために、銀行選びのポイントについて解説する。

銀行を選ぶときに考慮すべき3つのポイント

法人口座を開設するなら、以下の3点を念頭におきたい。

・手数料の安さ
・オフィスからのアクセス
・資金調達ができるか

振込回数が多いと手数料も多くかかってしまう。コストを抑えるために、手数料の安い銀行を選ぶのがおすすめだ。同行間であれば、振込手数料が格安になったり無料になったりすることが多い。取引先が利用する銀行に合わせるのもひとつの考え方だ。

法人の場合も、銀行に出向く機会があるだろう。オフィスから遠いと移動時間がかかったり渋滞に巻き込まれたりと無駄な時間が発生する可能性がある。

オフィスからアクセスが良いかも銀行選びで重要なポイントだ。ネット銀行の場合は提携ATMがオフィスの近くにあると入出金の手続きのときに便利なので、事前に確認しておこう。

また企業経営では、資金調達も非常に重要だ。資金がいつ必要になっても大丈夫なように、資金調達が可能かどうか、どのような手続きでできるのかをあらかじめチェックしておこう。

ネット銀行の法人口座開設に向いているケース

会社をスタートしたばかりのときは、財政面も不安定で、コストを抑えたいと思う経営者も多いはずだ。ネット銀行は他行宛て振込手数料が安く、インターネットバンキングの月額基本料もかからない。

会社の余剰資金がまだ少なく、少しでも経費を節約したいときはネット銀行が最適だ。

また会社の場所によっては、都市銀行が近くにないこともあるだろう。ネット銀行ならインターネットで手続きができるため、手間をかけて銀行に出向く必要はない。

都市銀行の法人口座開設に向いているケース

会社の経営がある程度軌道に乗ると、規模を拡大するため、より大口の顧客を獲得したいことがあるだろう。都市銀行の法人口座を持っていると、信頼度UPにつながるのでおすすめだ。

3.銀行の法人口座に落ちてしまう4つの理由

法人口座に申し込んでも、審査で落とされてしまうことがある。審査内容は非公開なので、理由は一概に決められないが、以下のような場合に審査落ちすることがある。

銀行の審査に落ちる理由1……事業内容が不明瞭

事業内容が曖昧で、どんなビジネスをしているのか把握しづらいような場合は審査に落とされやすくなる。書類作成や面談では、知識がない相手でも事業内容が理解できるよう、入念に準備することが望ましい。

銀行の審査に落ちる理由2……固定電話がない

一般的に事務所をしっかり構えている会社であれば、固定電話を備えているはずとみなされる。しかし携帯電話しかない場合、営業実態がないのではと疑われ、審査で不利になることがある。

銀行の審査に落ちる理由3……資本金が少なすぎる

現在の会社法では資本金の下限がないため、極端にいえば資本金が1円でも会社は設立できる。しかし資本金があまりに少ないと、銀行の心証はプラスにはならない。目安として、資本金は少なくとも50万円、できれば100万円以上を確保することが望ましい。

特に当座預金口座の場合、小切手や手形を決済することになる。支払期日までに決済できず、不渡りを出してしまうと大きな問題になる。

そのため支払い能力に問題がないかどうか、決算書などから会社の業況を厳しく審査されることもある。

銀行の審査に落ちる理由4……オフィスがフリーアドレス形式

バーチャルオフィスやコワーキングスペースは、割安な料金で借りることができるレンタルスペースで、コストを抑えたいスタートアップやベンチャー企業がよく利用している。

しかしこれらの場所が個室の占有スペースではないフリーアドレス形式の場合、審査のハードルが上がることがある。営業実態が把握しづらく、ペーパーカンパニーやダミー会社などの疑いを持たれる可能性もあるからだ。

バーチャルオフィスやコワーキングスペースで法人口座が開設できないというわけではないが、審査が不利になる可能性はある。

4.法人口座開設におすすめのネット銀行と都市銀行4選

ネット銀行と都市銀行のなかから、法人開設におすすめの銀行を4つ紹介する。上述した法人口座開設の銀行を選ぶポイントを踏まえ、特に「手数料の安さ」を重視した。

法人口座開設におすすめの銀行1……GMOあおぞらネット銀行

GMOあおぞらネット銀行は来店なしで、パソコンの申し込みフォームから法人口座の申請ができる。他行宛ての振込手数料が166円~と安く、月額利用料や維持手数料は無料だ。

またVISAビジネスデビットが利用でき、支払いで利用するごとに1%のキャッシュバックが受け取れる。うまく活用すれば、経費の節約につながる。

法人口座開設におすすめの銀行2……住信SBIネット銀行

低コストで利用できるネット銀行として、住信SBIネット銀行もおすすめだ。振込手数料が安く、公式サイトで「業界最低水準」とアピールしている。

インターネットバンキングの利用手数料も無料なので、コストを重視する会社には魅力的だ。

コストが安いだけでなく、助成金・補助金の支援サービスや、オンライン融資など金融サービスも充実している。

法人口座開設におすすめの銀行3……楽天銀行

楽天銀行では全国100,000万台のATMを利用できる。セブンイレブン、イオンなど多くの人にとって身近な場所のATMが使えるので利便性が高い。

楽天銀行の法人口座を開設すれば一括振込を最大30件まで利用できる。1回あたり30件をまとめて振込できるので、1件ずつ振り込むより経理作業が軽減される。

またビジネスデビットカード(JCB)で法人口座から支払いができる。現金なしで決済できるため、仕入れや出張費の支払いなどに便利だ。

法人口座開設におすすめの銀行4……三菱UFJ銀行

都市銀行のなかでも経常収益(売上高)の規模の大きいのが三菱UFJ銀行だ。法人のインターネットバンキングの月額基本料金は1,760円と、三井住友銀行やみずほ銀行に比べて安い。

資金調達の「Biz LENDING」では、同行の利用者であれば最短2日で資金調達が可能。審査もAIを活用したもので来店する必要がなく、決算書の提出も不要だ。

5.ネット銀行に加えてメガバンクや地銀の併用もおすすめ

ネット銀行の法人口座には他行宛て振込手数料が安い、インターネットバンキングで24時間取引ができるといったメリットがある。入出金するときはコンビニなど身近な場所のATMを利用できるので問題もない。

一方で、ネームバリューや会社の信頼性の向上といった面では、メガバンクや地銀が優れている。それぞれのメリットを享受するため、ネット銀行と使い分けることも視野に入れるとよいだろう。

執筆・安藤真一郎(ファイナンシャルプランナー)
主に金融系ライターとして活動し、2019年に2級FP技能士資格を取得。マネージャンルで役立つ情報を、初心者にも分かりやすく解説することを心掛けています。関心分野は、キャッシュレス決済、積立投資、ポイ活、節約術など。

MONEY TIMES

【関連記事 MONEY TIMES】
人気のネット銀行10社を徹底比較 定期預金金利、普通預金金利、ATMや振込手数料など
ネット銀行を使うメリット・デメリットは?メインバンクとしてどうなのか?
日本の銀行ランキングTOP10!格付け、口座数、時価総額、自己資本比率など
SBI証券のハイブリッド預金とは?特徴やメリットを紹介
楽天証券の「マネーブリッジ」とは?金利優遇やポイント2重取りなど、メリットも紹介