日経平均株価は6月上旬をピークに、その後は調整色の強い展開になっていましたが、ここにきて戻り歩調が強まっています。日経平均株価は7/15(水)に6/10(水)以来の高値水準を回復してきました。過剰流動性を背景に需給関係が強いことに加え、「ウィズ・コロナ」の世の中でも活躍が期待されるIT企業の株価について、上昇が目立っています。

逆に、新型コロナウイルスの感染拡大が長期化した場合、業績悪化が懸念される銘柄の多くは株価が年初来で大きく下げ、相対的にはその戻りも鈍いのが現実です。今回の「日本株投資戦略」では、これら今年大幅下落した銘柄について、投資チャンスは存在しているのか、押し目買いタイミングはあるのか、考えてみました。

新型コロナウイルスの感染が拡大する中、株価が上がった銘柄&下がった銘柄

日本株投資戦略,上方修正期待銘柄
(画像=PIXTA)

2020年は春先に中国で流行し始めた新型コロナウイルスがアジア、欧米へと拡大し、それを嫌気する形で、特に3月中旬に向け、株価が大きく下落する展開になりました。その後は、各国の金融政策や財政政策を好感する形で株価は底入れし、反発が本格化する展開になっています。日経平均株価は昨年末の23,656円62銭から、3/19(木)に一時16,358円19銭まで3割超下げましたが、7/15(水)には6/10(水)以来の高値水準となる23,000円手前まで値を戻す展開になっています。

表1と表2はそんな2020年相場において、時価総額1千億円以上(7/15現在)の銘柄(ただし、銀行、証券・商品先物、保険に属す銘柄は除く)について、上昇率の大きい10銘柄と下落率の大きい10銘柄を列挙してみました。

株価が大きく上昇した銘柄は、「ウィズ・コロナ」の世の中でも活躍が期待される銘柄が多く、期待を反映してか、予想PERやPBRも高くなっています。グロース株かバリュー株という分類で区別するならば、多くはグロース株に分類されるでしょう。上昇率トップのBASE(4477)は昨年10月に東証マザーズに上場したばかりの銘柄で、他の銘柄も上場後間もない若い銘柄が多いように見受けられます。

一方で、株価が大きく下落した銘柄は、「ウィズ・コロナ」の世の中が経営的にも逆風になる銘柄が多いようです。PBRが「解散価値」とされる1倍を割り込んでいる銘柄が6銘柄もあり、グロース株かバリュー株という分類で区別するならば、バリュー株に分類されるでしょう。上記の値上がり銘柄に比べれば、歴史のある銘柄が多いように思われます。なお、予想PERの欄に「-」とあるのは、今期予想純利益が赤字見通し(市場コンセンサス)になっていることを反映しています。

新型コロナウイルスの感染は鎮まるどころか、さらに拡大を続けており、楽観は許されない状態です。それにもかかわらず、世界的に株価は総じて堅調であり、違和感を感じる投資家も少なくないと思います。ただ、値上がり銘柄と値下がり銘柄を調べる限り、株式市場は冷静に、現状を追い風にできる企業と、現状が逆風になる企業を選別し、その結果として日経平均なり、TOPIXなり、東証マザーズなりの現在があると考えるのが妥当なのかもしれません。

もっとも過剰流動性を背景とする株式相場においては、往々にしてこれと同様のことが繰り返されてきました。平成バブルの初期には、重厚長大の大型株への買いが続く一方、円高不況を背景に輸出株は見向きもされませんでした。ITバブルではネット関連株がPER数百倍という極端に割高な水準まで買われる一方、オールドエコノミーの銘柄は出遅れました。しかも、それらの二極化相場が長めに続きました。今回も基本的には、強い銘柄と弱い銘柄が極端に分かれる相場展開がもう少し続くのでしょうか。

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(画像=SBI証券)
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(画像=SBI証券)

表1 2020年の年初以来もっとも上昇率の大きかった10銘柄(東証・時価総額1千億円以上)
コード / 銘柄 / 株価(7/15・円) / 騰落率(年初来) / 予想PER(倍) / PBR(倍)
< 4477> / BASE / 5,760 / 228.2% / 229.85 / 37.3
< 3962> / チェンジ / 8,110 / 178.9% / 77.23 / 20.4
< 4563> / アンジェス / 1,667 / 160.9% / - / 17.0
< 4488> / AIinside / 32,300 / 157.0% / - / 51.9
< 4776> / サイボウズ / 3,510 / 136.5% / 118.78 / 46.4
< 6035> / アイ・アールジャパンホールディングス / 11,300 / 132.7% / 54.78 / 38.7
< 3694> / オプティム / 3,525 / 105.8% / 215.91 / 63.9
< 8771> / イー・ギャランティ / 2,528 / 101.0% / 46.06 / 8.4
< 6920> / レーザーテック / 10,890 / 95.9% / 91.63 / 33.0
< 4385> / メルカリ / 4,215 / 88.6% / - / 12.9

表2 2020年の年初以来もっとも下落率の大きかった10銘柄(東証・時価総額1千億円以上)
コード / 銘柄 / 株価(7/15・円) / 騰落率(年初来) / 予想PER(倍) / PBR(倍)
< 3086> / J.フロント リテイリング / 679 / -55.6% / - / 0.46
< 8570> / イオンフィナンシャルサービス / 898 / -48.0% / 8.36 / 0.42
< 9603> / エイチ・アイ・エス / 1,640 / -47.7% / - / 0.91
< 2222> / 寿スピリッツ / 4,275 / -46.9% / 97.04 / 6.29
< 4902> / コニカミノルタ / 379 / -46.8% / 18.27 / 0.36
< 7453> / 良品計画 / 1,385 / -45.8% / 516.72 / 1.87
< 6425> / ユニバーサルエンターテインメント / 2,046 / -44.9% / - / 0.44
< 7458> / 第一興商 / 3,185 / -44.4% / 76.58 / 1.34
< 4849> / エン・ジャパン / 2,661 / -44.3% / 21.06 / 3.42
< 7762> / シチズン時計 / 337 / -43.6% / 18.71 / 0.46

※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。年初来騰落率は2019/12/30終値に対する2020/7/15終値の騰落率となっています。新興市場も含みます。予想PERは今期予想EPS(市場コンセンサス)をベースに計算されています。PBRは前期実績BPSをベースに計算されています。参照するメディアにより、予想PERやPBRの数字が異なる場合もあります。上記の表はあくまで客観的データの提供を目的に作成されており、銘柄の推奨を意図したものではありません。なお、銀行、証券・商品先物、保険に属す銘柄は除いています。

今年大幅下落した銘柄について、押し目買いタイミングを考えてみる

昨年末から現在まで、株価が大きく下落している銘柄の多くは、新型コロナウイルスの感染拡大が逆風になると考えられる銘柄ですが、それらの銘柄の押し目買いタイミングについては、どのように考えるとよいのでしょうか。

無論、業績悪化に歯止めがかかったことが確認されれば、株価は底を打つと予想されますが、株式市場はそこまで投資家を待ってくれないように思われます。決算発表により当面の業績悪化が明らかとなって「悪材料出尽くし」と理解されるか、ワクチンや治療薬等の開発が進み、それらの使用にメドがつけば、これらの銘柄は反発に転じると予想されます。

そもそも、株式相場の反発局面では、それまでの下落局面で大きく下げていた銘柄の戻り率が大きいと期待することは、「リターン・リバーサル」の考え方からもオーソドックスな見方であると言えます。その意味で、表2に掲載されている銘柄を押し目買いで優先するという考え方はあります。ただ、業績悪が想定外に長引いたり、それによって経営が脅かされるリスクは残ります。また、ワクチンや治療薬の開発が遅れる場合もあり得ます。事実、新型コロナウイルスの抗体は生成されても短期間のうちに消えてしまう可能性も指摘されています。

そこで今回、「日本株投資戦略」では以下のようなスクリーニングにより、リスクを下げる試みを施してみました。

(1)東証一部上場銘柄であること。
(2)時価総額1,000億円以上の銘柄であること。
(3)銀行、証券・商品先物、保険以外の業種に属す銘柄であること。
(4)ネットキャッシュ(現金等から長短借入金・社債等を引いた金額)がプラスの値を取る銘柄であること。
(5)予想配当利回り(市場コンセンサス)が2.1%(日経平均採用銘柄の平均)超の銘柄であること。

上記の全条件を満たす銘柄について、年初来の株価下落率が大きい順に並べた銘柄が表3となります。これらの銘柄は、決算発表により当面の業績悪化が明らかとなって「悪材料出尽くし」と理解されるか、ワクチンや治療薬等の開発が進み、それらの使用にメドがつけば、反発に転じやすい銘柄であると「日本株投資戦略」では考えています。

(4)の条件を満たしていることで、該当銘柄は豊富なキャッシュを背景に財務体質が良好とみられるため、短期的に業績悪化が続いても、それに耐えられる力は相対的に大きいと考えられます。また、(5)を満たすことで、投資家は高めの配当を享受(ただし保有期間に注意)しながら、中期投資を実施することが可能になると考えられます。

なお、7/10(金)~7/15(水)の米国株式市場でNYダウが4日続伸となりました。ワクチン開発の前進がプラス材料になっているようです。そうした中、表3に掲載した銘柄の多くも動意をみせているように見受けられます。

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(画像=SBI証券)

表3 2020年に株価が大きく下落したものの、押し目買いタイミングを考えてみたい銘柄
コード / 銘柄 / 株価(7/15) / 年初来騰落率 / 市場予想1株配当 / 予想配当利回り
< 7458> / 第一興商 / 3,185 / -44.4% / 111.67 / 3.5%
< 4849> / エン・ジャパン / 2,661 / -44.3% / 60.05 / 2.3%
< 7762> / シチズン時計 / 337 / -43.6% / 11.20 / 3.3%
< 6113> / アマダ / 812 / -35.0% / 33.60 / 4.1%
< 1719> / 安藤・間 / 623 / -34.6% / 31.00 / 5.0%
< 7752> / リコー / 807 / -32.3% / 26.23 / 3.2%
< 7731> / ニコン / 911 / -32.2% / 36.92 / 4.1%
< 4927> / ポーラ・オルビスホールディングス / 1,772 / -32.2% / 80.00 / 4.5%
< 5991> / 日本発条 / 687 / -31.0% / 17.00 / 2.5%
< 6807 / 日本航空電子工業 / 1,555 / -29.9% / 33.89 / 2.2%

※各社株価データ、公表財務データ、Bloombergデータ等をもとにSBI証券が作成。年初来騰落率は2019/12/30終値に対する2020/7/15終値の騰落率となっています。予想1株利益は市場コンセンサス。

図1 第一興商(7458・日足)

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(画像=当社チャートツールを用いてSBI証券が作成)

図2 エン・ジャパン(4849・日足)

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(画像=当社チャートツールを用いてSBI証券が作成)

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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鈴木英之
SBI証券 投資調査部

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