「とりあえず、旅行でもしながら、のんびり余生を過ごしたい」そんな話を良く耳にします。
私のFP事務所には定年後の不安(老後不安)についてのさまざまな相談が寄せられます。では、理想的な定年後の生活とはどのようなものなのでしょうか? 相談者に質問をしてみると即答できる人は意外と少ないです。多くの人は少し考えてから「とりあえず、旅行でもしながら、のんびり余生を過ごしたい」と話します。
生き方は人ぞれぞれです。のんびり「余生」を過ごすのも悪いことではありません。ただ、定年後の人生は「余生」と呼ぶにはあまりにも長いです。厚生労働省によると日本人の平均寿命(2018年)は男性81歳、女性87歳で「4人に1人」は90歳を越えています。平均寿命は年々延びており、読者のみなさんが80歳を迎える頃には「人生100年時代」に突入しているかも知れません。ちなみに、同省によると昭和38年に100歳を超えている人は153人でした。2019年は7万1238人で、49年連続で過去最高を更新しています。
大概の問題は「生きがい」を見つけると解決できる?
読者のみなさんの中には「60歳で定年退職し、65歳まで再雇用で働きたい」と考えている人も多いことと思います。その後65歳から100歳まで生きるとすれば、残りの人生は35年です。35年を「余生」と呼んでしまうのは少しもったいないように思います。なにしろ、人生の約3分の1は定年後の時間なのですから。定年後の人生は文字通り「第2の人生」と呼んで良いでしょう。
当コラムでは「定年後の不安」をテーマに前々回は【お金編】、前回は【健康編】としてお届けしました。言うまでもなくお金と健康は切実な問題なのですが、それと同じくらい大切なのが「生きがい」です。筆者は「生きがい」さえあれば大概の問題は解決できると考えています。
今回は定年後の「生きがい」についてお届けしましょう。
「不安」は枚挙にいとまがないのに…
前述の通り、私のFP事務所では理想的な定年後の生活について「とりあえず、旅行でもしながら、のんびり余生を過ごしたい」との声を良く聞きます。しかし、具体的なイメージを描いている人は意外と少ないように感じられます。たとえば、旅行の期間についても具体的に考えているわけではなく「なんとなく(とりあえず)旅行をしたい」と考えているような印象を受けます。
定年後の不安は枚挙にいとまがないのに、理想的な生活については「旅行」くらいしか思い浮かばないのは少し不思議なようにも思います。