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2020年4月2日配信記事より

「食の観点から、誰もが安心して歳を重ねていける社会を作る」として、高齢者向けの配食サービスを手掛けている株式会社シルバーライフ。生きるためになくてはならない食事。特別なものではなく日常的に食べる料理を、高齢者の方が年金だけで食べられるようにと工夫されています。このような社会課題の解消に邁進されている同社。今回は、取締役管理部長の今尾次郎氏にお話を伺いました。

自分を変えなければならないと考え、苦手な道へ

― 新卒では、日本政策金融公庫に入庫していますが学生時代から金融業界を志望していたのですか?

いえ、そうではなかったです。むしろ最初は全然違う流通業界に行きたかったくらいなので。

私はコミュニケーションといいますか、人と話すのが正直苦手なんですよ。なのであまり人と話さなくて良い仕事をしたかったんですけど、やはりそれじゃいけないんじゃないかと思い直しましてね。それでまず人と話をする機会のある業界に目を向けました。

その中で金融機関を選んだのは、企業経営者の仕事のパートナーになれるというところで貴重な経験も積めますし、じっくりコミュニケーションを取って大事なことを進めていく仕事なので、非常に魅力的だと感じ自分を変えられる環境であるだろうと思ったからです。

― 実際に苦手な道に飛び込んでみて、いかがでしたか?

最初はやはり苦手意識もありましたし、右も左も分からず大変でしたけど日々話をする経営者の方は融資がどうなるかで会社が変わってしまう場合もあるわけで、その中で本気で話をするのは、責任も伴うし勉強にもなりました。でも営業成績は散々でしたね。

そのなかで、転機になったのは転勤して中小企業のメッカである東大阪支店に行ってからです。その当時、すごく営業成績の良い先輩がいたんですよ。端から見ているとなぜ成績が良いのか分からなかったんです。明るく元気でハキハキしているようなタイプでもなかったですし。でも、なぜか抜群に成績が良いしお客様の評判も良い。なぜなのか注意深く見ていたら、その先輩は個人で税理士の勉強をされていて、その税務や会計の知識を元に、コンサルのような形でお客様の経営数字を分析してアドバイスしていたんです。

それを見て、自分の得意な部分を前面に出して活かしていくことが大事なんだと気づきました。でも自分には会計の知識はないしどうしよう?と思ったときに、自分が持っているのはスピードかなと。

経営者目線で融資までのスピードを重視。仕事のスタイルが固まって軌道に乗り始める

― スピード重視で、具体的にどういったことをされたのですか?

実際に融資を行うまでのスピードを速くしました。融資のご依頼をするときは、みなさん少しでも早く融資決定の返答が欲しいですよね。そのために何が必要かを、訪問前から徹底的にシミュレーションしていきました。

通常だと、1回目の訪問でヒアリングした内容を元にどんな形の融資がベストか持ち帰って検討するんですけど、そうではなくあらかじめこういう話になるだろうと、いくつかのパターンを予測して、融資の条件とか全て決めておいた上で訪問していたんです。

そうしていくと、訪問して想定通りの話が出たときにもうその場で答えを出せるんですよ。それならこの条件でお約束出来ますと、その場で。契約日まで固めていました。経営者の方はみんなびっくりされていましたね。えっ?持ち帰らなくていいの?って。

― そうですよね。融資には結構時間がかかるイメージでした。

普通はそうです。契約日まで決めるのに通常は最低でも1週間くらいはかかっていましたからね。その代わり、私は支店に戻ってからその日のうちに稟議書を必死に書いていましたけど(笑)

― シミュレーションするのもただ考えただけでは外れもあるし難しいのではと思うのですが、どんなことに気を付けていましたか?

自分がその会社の経営者だったらどうするか?ということを考えましたね。同じ目線でその会社の今後を考えて、その道筋に沿ったシナリオを想像していきました。そのおかげで、経営者のみなさんと経営の中身の話も出来るようになって来たのがこの時期ですね。

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長く勤めた銀行を辞め、事業会社へ転職

― 政策金融公庫には17年程在籍されたんですよね。その後、事業会社をいくつか転職されて今に至りますが、なぜ事業会社への転職を選んだのですか?

長く経営者の方と接して経営者目線で色々な会社を見ていたことで、会社の外から見るのではなくて自分が中に入って、自分の思ったことを実行してみたいなと思うようになったんです。そういう気持ちになったのがちょうど不惑の歳になったときで、年齢的にも転機になるであろうなと。

そう思っていたとき、たまたま過去に担当していたお客様の会社で経理部長のポストが空くというお声がけをいただいて。それもタイミングかなと思いまして受けることにしました。

― お客様とのご縁も長く続いていたのですね。

そうですね。このとき紹介して下さった方もですし、何人かの担当した経営者の方とは今でもお付き合いがあります。

彼らからすると私はちょっと変わった人間だったみたいですね。政策金融公庫って政府系の金融機関なので、ちょっと真面目なイメージがあると思うのですけど、私はありとあらゆる手を使って色々仕掛けていくタイプだったので、異色に映ったようですね。

金融機関なので規定もしっかりしているし改定も多かったんですが、それを徹底的に頭に入れて対応していけば、色々なパターンの仕掛けが出来るので愉しかったですよ。本部ではあまりに営業成績が上がる(融資金額、新規先獲得数、ベンチャー支援全国トップの三冠!)ので「何かやってるのでは?」と疑われて抜き打ち検査で徹底的に調べられたりもしました。しかし、当然何もルールに反することはしていないので検査役から逆に「君すごいね」って唸られました。

知るべきルールを知った上で勝負するというのは、どの世界でも大事なことですよね。

― 転職されてからは、戸惑うことはなかったですか?

担当していたときから、自分がこの企業の経営者だったらと考えて会社のことを見ていたので特に違和感はなかったですね。経理の実務は当然やったことがなかったですけど、それは自分も勉強していきましたが、実際に作業するのは他のメンバーですし、決算書が出来上がったときにもっとこうすれば金融機関からの見映えが良くなるとか、銀行交渉とかは当然分かっていたので思ったよりもスムーズに入っていけました。

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実はグローバルに強い?経理の仕事

― この後に転職された会社も含め、今まで2社で海外子会社の監査役もされていますが、言葉や仕事のやり方など困ったことはなかったですか?

言葉はかなり苦労しましたね。ただ、意外と仕事をする上ではそれほど困らなかったですよ。香港でも韓国でもどこでも、数字は同じですから。言葉が通じなくても数字でコミュニケーション出来ました。数字は万国共通なんだなと実感しましたね。

― 経理の仕事ってグローバルに強いんですね。

そうですね。もちろん数字の中身を知った上でコミュニケーションを取るというのは大前提ですが、数字を扱えれば誰でも海外で仕事が出来ると思います。

事業モデルと社長に惹かれ、シルバーライフへ

― 事業会社をいくつか経験された後、現職であるシルバーライフさんへジョインされていますが、きっかけや決め手は何だったのですか?

最初の事業会社以外の転職は、すべてエージェントさん経由で紹介してもらったのです が、シルバーライフもそうでした。ありがたいことに知り合い経由でお声がけいただくことも多かったですが、条件面等であまり無茶も言えないですし友人関係はそのままにしておきたかったので、フラットに考えられるようにしたかったんですよね。

シルバーライフは、事業モデルと社長が決め手ですね。社長の清水が元々警察官だったという異色のキャリアでそこにも興味を惹かれましたし、面接のときにこの会社しかないなと思ったのは、清水が「うちは単なるお弁当屋です」と言ったんですよね。高級なお弁当じゃなくて、年金だけで暮らしている高齢者の方が毎日食べられるような、素食でいてちゃんと美味しいお弁当を作っているんだと。食事って毎日摂るものなので、それを高齢者の皆さんが安心して食べられるようなお弁当を作っていきたいと言っていて。そこに非常に共感しましてね。正直、自分の収入は結構落ちたんですが、そういった社会的使命を持って仕事が出来るというところにとても意味があると思いました。誰でも理解出来て、社会的に意義のある事業に惹かれたんですよ。

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自分は「なんでも屋」メンバーが仕事をしやすいようにするのが自分の仕事

― 入社してから、どういうことを意識してお仕事をされて来ましたか?

入社したのは東証マザーズ上場直後で、その頃に人の移り変わりもあったのでまずはチームビルディングでした。人の移り変わりや状況の変化は常にあるものだと思っているので、今も引き続き体制は強化中です。

― 直近で東証一部に指定替えもされて、ますます社会的な信用も高まりますね。

それはしっかり意識していかないといけないですよね。まだ創業して十数年の会社で、それにしては速い成長を遂げているので、それに見合った体制作りを意識して行っています。その中で大事にしているのが、自分は財務経理だけ見るのではなくて「なんでも屋」だということです。どういう仕事してるの?って聞かれたら「雑用だよ」と言うんですけど(笑)みんなが仕事をしやすいようにするのが自分の仕事だと思ってるんです。

みんな完璧じゃないし、当然私もそうですので抜け漏れや足りないところをカバーしながら、全体としてうまくまとまっていければいいかなと思っています。

― バランサーの役目をされているのですね。

手探りしながらですけどね。役職的にはCFOのようなことをしていますが、うちくらいの規模の小さな会社だと財務経理だけを専門としたCFOは必要ないと思うんです。何でも出来る、何でもやる必要があるのではないかと。でも、もっと規模の大きな会社だとその限りではないと思うので、会社の規模や状況によって求められることって違ってくるのだろうなと思います。CFOがCOOの役目を果たすことも場合によっては必要だとも思いますよ。

CFOを目指す人へのアドバイス

― 今まさにCFOを目指している方にアドバイスをお願いします。

数字周りだけに自分の専門を絞ってしまったらCFOではなく経理課長とか部長で終わってしまうのではないかなと思います。CXO職は経営者ですから、社長と同じ目線で経営をしていかないといけないですね。社長1人ではまかないきれないところを、数字の専門家として巻き取るのがCFOなだけであって、役割分担です。

― 政策金融公庫のときから経営者目線でお仕事をされていたのが活きているのですね。

そうですね。その考え方はかなり身に付きました。いま思えば営業職を経験するのも大事でした。営業で売りっぱなしにするのではなくて売掛金(貸付金)を回収しないと会社の数字(利益)にはならないから、この一連の流れを経験していくことはとても意味があると思いますね。

― 25、6歳の頃から徹底した経営者目線を持っていた今尾さん。その根底には、どうしたら目の前の人の為になるか?という思いやりの深さや、強い実行力がありました。ありがとうございました。

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【プロフィール】
今尾 次郎(いまおじろう)
株式会社シルバーライフ 取締役 管理部長

1991年4月 中小企業金融公庫(現株式会社日本政策金融公庫)入庫
2007年12月 トーカドエナジー株式会社入社
2011年7月 同社 執行役員
2013年4月 TOCAD DON-HWA(KOREA)CO.,LTD.監査役兼務
2015年1月 日本アンテナ株式会社入社
2015年4月 上海日安天線有限公司監査役兼務
2015年10月 日本アンテナ株式会社 管理本部 副本部長
2017年4月 AZAPA株式会社取締役CFO
2018年3月 株式会社シルバーライフ入社
2018年10月 株式会社シルバーライフ取締役管理部長(現任)