ジョンズ・ホプキンス大学の集計によると、米国の新型コロナウイルスの感染確認者数は8月3日現在で約466万人、死者数は15万4860人に達し、いずれも世界最悪となっている。感染「第2波」が現実味を帯び始めているが、ここで経済活動が再び制限、あるいは停止となれば米国経済は深刻な打撃を受けることにもなりかねない。ただ、その一方でウォール街の市場関係者からは、トランプ政権がワクチン開発を後押しする「ワープ・スピード作戦」に注目、早期実用化に期待を寄せる声も聞かれる。

実際、新型コロナウイルスが自然消滅しない限り、経済活動の正常化にはワクチンもしくは治療薬の開発が現実的な手段となる。世界経済の未来はワクチン(治療薬)の開発次第といっても過言ではない。そこで今回はワクチン開発をめぐる主要企業の進捗状況を見てみよう。

開発期間を数週間から数カ月短縮?

新型コロナ,ワクチン
(画像=mits / pixta, ZUU online)

まず、ワクチン開発は動物実験で「免疫反応」を引き起こすかを確認した後、3段階の臨床試験を経て実用化される。第1相試験では小規模な患者を対象に主に「安全性」を確認し、第2相試験では対象を増やして主に「有効性」を確認する。そして、安全性と有効性が示された場合、最終の第3相試験で大規模な集団を対象に安全性と有効性を最終判断するためにデータを収集し、評価する。

したがって、ワクチンの開発にはある程度の患者数が必要となる。当初、ワクチン開発は何年もかかるとみられていたが、これはロックダウン(都市封鎖)等で感染者数の伸びが鈍化傾向にあったことに加え、気温が上がる夏場にはさらに感染者が減少する可能性があったためだ。実際、過去の感染症では、早期に流行が収束したことで、ワクチン開発が間に合わないケースもあった。

ところが、地域によってばらつきはあるものの、新型コロナウイルスの感染者数は世界的に増え続けている。NIAID(米国立アレルギー感染症研究所)のアンソニー・ファウチ所長は「感染そのものは喜ばしいことではない」としたうえで「感染者の増加によりワクチンの開発期間を数週間から数カ月短縮できる可能性がある」との見解を示している。

「ワープ・スピード作戦」で開発・生産・供給を加速

5月15日、トランプ米大統領は新型コロナウイルスのワクチンの開発・生産・供給を加速させる「ワープ・スピード作戦」を発表した。ワクチンの製造や購入保証契約に最大100億ドル(約1兆円)を投じ、通常数年かかるプロセスを数カ月に短縮する計画だ。

「ワープ・スピード作戦」は2021年初めまでに米国のすべての国民が1回接種できる3億回分のワクチン確保を目指している。無料で国民に投与する予定であるが、優先順位等の詳細は明らかにしていない。

ちなみに、ウォール街の市場関係者の注目を集める有力企業としては、米バイオ医薬品大手のモデルナ、米製薬大手のファイザー、英国の製薬大手アストラゼネカ、製薬・医療機器大手のジョンソン・エンド・ジョンソン(以下、J&J)などがある。

モデルナは7月27日、開発の最終段階となる第3相試験の開始を発表している。第3相試験はNIH(米国立衛生研究所)等と共同で全米で3万人規模のボランティアを集め、そのうち半分のグループにはワクチンを2度投与し、残りのグループには偽薬を投与する。2つのグループの状態を比較し、ワクチンの安全性と有効性が確認されると実用化の運びとなる。