「もちろん、お金があるなら働かないですよ!」

私のFP事務所には定年後の不安(老後不安)について様々な相談が寄せられています。その中で最も多いのが「お金(老後資金)」についての悩みです。老後資金が足りない人は、定年後も働くことで資金寿命を延ばすなど対策を講じる必要があります。では老後の生活に困らない「十分なお金」があったらどうでしょうか。それでも働くのでしょうか? 相談者に問いかけてみると、多くの人が前述のように「働かない」と回答します。

人は何のために働くのでしょうか? 多くの人が「お金を稼ぐために働く」と考えがちですが、必ずしもそれが全てではありません。仕事は社会との「接点」や「生きがい」のほか、近年は「健康」にも影響を及ぼすことが分かってきています(詳細は後述)。人生100年時代、いつまでも「生きがい」をもって健康的に生きるためにも、「働く」ことへの意識を少し変えてみる必要があるかも知れません。

今回は私のFP事務所に寄せられた相談事例を交えながら「人生と仕事」について考えてみましょう。

リタイヤ後は「悠々自適の生活」のはずが…

定年後,仕事したくない
(画像= ケイーゴ・K / pixta, ZUU online)

ハナザワ・カツオさん(仮名)が年金についての個別相談に訪れたのは8年前のことでした。彼は不動産会社の社長でした。

「不動産屋といってもね。当時は家族経営のアットホームな事務所だったんですよ」カツオさんは懐かしそうにそう言いました。大学時代、街の小さな不動産屋でアルバイトをしていたカツオさんは、そこで社長の娘と出会い結婚しました。卒業後、その不動産屋に就職した彼は、やがて経営を任されるようになります。そして現在、その不動産屋は首都圏に広く展開する企業に成長しています。

カツオさんの相談は老後資金についてでしたが、資金計画にかなり余裕があり、まったく心配ありませんでした。「たとえ100歳まで生きたとしてもお釣りがくるくらいですよ」と私は太鼓判を押しました。

話を聞いて安心したのか、カツオさんは「60歳でスッパリと仕事を辞める!」と言いました。不動産会社の社長として多忙な日々を過ごしていたカツオさんですが、リタイア後は特に何をしようということは考えていない様子でした。「とにかく、何も考えないでゆっくりしたい」そんな言葉が印象的でした。

楽しかったのは2カ月まで?

その後、カツオさんは予定通り60歳でリタイアしました。リタイア後の1〜2カ月は自由な時間を満喫したそうです。「月に100万円くらい使って、旅行や趣味、そして友人に会ったりして、とにかく遊び回った」と振り返ります。

でも、楽しかったのは2カ月くらいまででした。3カ月目を迎える頃には「このままで良いのだろうか?」と感じはじめたと言います。「これじゃダメだ!」5カ月目には、それまでの経験を活かして社会の役に立つ仕事がしたいと考えるようになりました。

現在、65歳のカツオさんは複数の不動産会社の顧問を掛け持ちしています。週3日ほどの稼働ですが、とても充実した日々を過ごされているようで「元気なうちは出来るだけ長く、この仕事を続けていきたい」と語っていました。

働くことは「健康」につながる?