相続をする際に、現金や更地の土地をそのまま相続するのがとても不利だ、ということはご存じだと思います。今回は相続税だけでなく、節税や安定収入にも効果の高いアパート経営もついて、そのメリットとデメリットをご紹介します。

アパート経営で相続税の節税が可能なのはなぜか

相続税対策
(画像=kai/stock.adobe.com)

アパート経営が相続税対策になる理由を結論から言ってしまえば、「課税評価額」が低くなるからだと言えます。現金より土地、土地のままよりも建物が建っている方が課税評価額は低くなります。

土地・建物は現金より評価額が低い

たとえば現金を相続する場合には、相続税評価額(率)は100%です。もともと土地の相続税評価額は、一般的に時価の8割程度とされているので、その分でも節税効果が生まれますが、

これが200平方メートル以下のアパートの敷地であれば、50%の減額措置を受けることができます(後述する小規模宅地等の特例を受けた場合)。同様に建物も、賃貸割合(満室の割合)によって変動しますが、やはり数十%の減額措置を受けることが可能です。

アパートは建築費用が安い

同じ広さの土地ならば、耐久年数も長く家賃も高額に設定できるマンションを建設したいと考える方もいらっしゃると思います。ただしマンションとアパートでは、建設費用がまったく異なります。建設コストの回収と節税効果を考えるなら、建設費用の安いアパートがおすすめです。

小規模宅地等の特例が適用される

「小規模宅地等の特例」とは、相続の際に相続税が遺族の生活を圧迫することのないように設けられた相続税の軽減措置制度です。アパートなどの「貸付事業用宅地」は先述のように50%の減額(200平方メートル以下)、自宅とアパートを兼用している場合には80%減額(330平方メートルまで)されます。

ただし2018年の税制改正で、相続をした時点でアパートの経営が3年以内の場合は本特例を受けることができなくなってしまったので注意が必要です。

アパート経営のメリット

相続に関わる節税効果の他にも、アパート経営には数多くのメリットがあります。いくつか紹介しておきましょう。

安定して収入を得られる

アパート経営は、賃貸の部屋に入居者がいる限り継続的な収入が得られます。銀行等から借り入れがあったとしても家賃収入で返済し、完済後は利益となります。老後の資金や、年金の不足分に充足するなど、長期的な安定収入の確保には最適です。

相続税以外にも節税できる

アパートなどの「貸付事業用宅地」では、何も建てていない場合に比較して、固定資産税が最大で1/6、都市計画税が1/3になります。また現在給与所得があれば、給与所得の利益と、不動産所得の損益を相殺できる「損益通算」が使えます。給与と不動産所得を相殺して所得合計が少なくなった場合、 所得税や地方税などを抑えられます。

債務控除が適用される

自己資金ではなく銀行等から借り入れを行ってアパートを建設した場合には、債務控除が適用されます。借入金は債務控除として相続財産からマイナスされるので節税効果が生まれます。

アパート経営のデメリットとその対策

空室率が高いと収入が減少

アパート経営や区分マンション投資の一番のリスクは空室です。借入金返済や収入の源となるのは、入居者からの家賃収入だからです。賃貸物件の空室率は、ある程度立地で決まります。最寄り駅まで徒歩10分以内など、入居者にとって利便性の高い場所にアパートを建設することがとても重要です。

修繕費がかかる

建物は年数が経つにつれ、外装から居室内の設備まで一定の修繕費がかかります。敷金などである程度は補填できますが、管理費などから計画的に修繕費を積み立てておくことが肝心です。

年数経過とともに収益性が下がる

アパートは築年数が古くなると徐々に収益性が下がっていきます。主に居室や設備が老朽化することにより家賃を下げざるを得ないことが原因ですが、これには決定的な対策がありません。外装や内部を定期的にリニューアル(リノベーション)することである程度対応できますが、建物自体の老朽化は防ぐことができません。家賃の価格を維持するために、無理な借り入れをして大規模な修繕などをすることのないように注意しましょう。

専門業者に相談しながら進めよう

節税効果と安定収入が魅力のアパート経営ですが、残念ながらデメリットもあります。借入をせず、多額なキャッシュアウトをした場合、のちの納税資金の確保も重要です。前述の損益通算についても、不動産所得が赤字(キャッシュインよりキャッシュアウトの方が大きい場合)であれば、納税資金が目減りしていることなので、アパート経営の改善が必要です。リスクを避けるためには、アパート経営で豊富な実績を持つ専門業者に相談するのが効果的でしょう。しっかりと対策をして、魅力的なメリットを失ってしまわないようにしたいものです。(提供:企業オーナーonline


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