5G(第5世代移動通信システム)を契機とするファーウェイの締め出し、そしてロックダウン下のサプライチェーン崩壊を理由とする脱中国依存など、欧米諸国で中国への風当たりが厳しくなっている。中国企業に対する国際的な圧力は、これらの企業に投資している投資家の頭痛の種だ。ファーウェイ問題のほかに、多数の中国企業に投資しているソフトバンクグループ(SBG)の業績への懸念が高まっているのも不思議ではない。

今後の中国とのビジネスの仕方について、日本の企業は再考する時期に差し掛かっているのではないだろうか。

米国が先陣を切る中国企業締め出し どこまで拡大する?

ソフトバンク
(画像=AlexeyNovikov/stock.adobe.com)

中国企業締め出しの先陣を切るのは、トランプ政権誕生以来、壮絶な関税合戦を繰り広げ、摩擦が絶えなかった米国だ。2018年には中国企業の排除に本腰を入れるべく、「中国による悪質な活動」に対する法的規制を含む、米国防権限法(NDAA)2019」が制定された。悪質な活動とは、中国政府へのユーザーデータの流出や、国家安全保障上の脅威といった数々の疑惑を指す。

これには、ファーウェイやZTEなど中国IT企業5社、あるいはこれらの企業の製品やサービスを利用している企業に対し、米国政府機関との取引を一切禁じる条項が設けられている。米国政府と取引を行う企業には、米国だけではなく他国における業務においても、これらの企業の製品やサービスを一切利用していないことを宣誓する義務が課せられた。

最大のターゲットとして矢面に立たされているファーウェイに関しては、2019年5月以降、半導体の供給網を絶つ目的で、関連企業を含む144社に対し、米国製品・サービスの輸入などを禁じているが、2020年8月には38社を禁輸措置対象に追加した。

さらに、中国IT企業の従業員へのビザ制限、米国の会計基準を順守していない米上場中国企業に対する上場禁止あるいは廃止策など、制裁範囲は拡大している。

米中対立の板挟み

欧州においては、先頭を切ってファーウェイの完全排除を発表した英国の決断が、煮え切らない他の欧州諸国に圧力をかけていると報じられている。欧州連合は2020年1月、加盟国向けの推奨事項の中で、「各国はファーウェイなどのハイリスク5Gベンダーを、5G通信ネットワークの主要部分から制限または除外できる」との意向を示した。

そして、世界各地で見られるこのような不穏な動きが、ソフトバンクの行く末に波紋を投げかけている。ソフトバンクは2015年以降、ファーウェイと4.5G技術「TDD+」を共同開発し、多数のファーウェイ製品を採用するなど、有益な関係を維持して来た。

しかし、このまま提携関係を維持すれば、今後ファーウェイを排除した国での事業の継続が、困難になる可能性が浮上する。だからと言ってファーウェイとの関係を断ち切った場合、今度は中国側から圧力がかかるリスクが考えられる。アリババを筆頭に、多数の中国企業に投資しているソフトバンクにとっては、絶体絶命のピンチといった状況だ。

巨額の赤字の要因は?

市場の懸念はすでに表面化しており、ソフトバンクは2020年3月期連結決算で、9616億円という過去最大の最終赤字を計上した。主因は「10兆円ファンド」の鳴り物入りで立ち上げた投資事業、ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)の低迷だ。2018年度には約1兆3,000億円の営業利益をもたらしたが、2019年度には2兆円近くの損失を出している。

最近では2019年12月、中国平安保険のFinTech事業ワンコネクト・ファイナンシャル・テクノロジー(OCFT)の米上場評価額が約37億ドルと、ソフトバンクが1億ドルを投じた当初の半分に落ち込んだほか、2017年の上場時には香港のIT企業最高額の15億ドルを調達したオンライン保険企業、衆安在線財産保険の株は、上場当時の約半分の価格で取引されている。

中古車販売プラットフォームのGuazi.com、自動運転車子会社Didi Chuxingなど、巨額を投じた中国企業の多くは期待されたほどのパフォーマンスを見せておらず、SVFの投資先の価値評価に疑問を唱える声が強まっている。

また、2018 年の資金調達ラウンドでリードインベスターを務めたByteDanceが運営するショートビデオアプリ「TikTok」は、若い世代に爆発的な人気を誇るものの、国家安全保障上の懸念と中国政府へのユーザーデータの流出の懸念から、すでにインドで禁止措置がとられている。米国も同様の措置を検討中であることが、マイク・ポンペオ国務長官の発言から明らかになっている。

アリババ米上場廃止のリスク浮上でさらに窮地に?

低迷するソフトバンクにとって、頼みの綱はアリババグループだ。アリババがまだスタートアップだった2000年、2億ドルを投じて最大の株主となったソフトバンクは、2020年1月の時点で29.4%(約1250億ドル相当)のアリババ株を所有していた。コロナショック時にはこの巨額の収入源の一部を売却して、財務悪化対策用資金1兆2,500億円の資金を調達している。

しかし、米国における持株外国企業責任法(HFCAA)の承認により、アリババを筆頭に米上場廃止となる気配が濃厚となった今、さらなる窮地に追い込まれる可能性は否めない。折しも、アリババの創設者であるジャック・マー氏とSBGの孫正義会長兼社長が、お互いの企業の取締役退任を表明するなど、今後の両社の関係に大きな転機が訪れていることは間違いなさそうだ。

グルーバル事業を展開する日本企業に必須の要素とは?

米中対立というジオポリティクス(地政学)・リスクが、今後欧州やアジアにもさらに飛び火する可能性は大いに考えられる。ソフトバンクの苦境は、中国企業に投資している、あるいはパートナーシップを組んでいる日本の企業にとっても他人事ではない。

ファーウェイの例だけでも、米国の下した制裁により、同社のスマホの部品を調達先である日本や韓国、台湾など、多数の企業に影響が出るものと予想される。同社が日本企業から調達した部品の総額は、2019年だけでも1兆円を超えている。

中国に限らずグローバルな事業を展開している日本企業は、地政学リスクに耐性のある経営戦略や管理体制を整え、それに伴う規制(輸入禁止・外資規制など)や経済的リスク(為替や金利、商品価格の変動など)にも、細心の注意を払う必要があるだろう。万が一の事態に備えて、サプライチェーンや調達システム、生産地を迅速に調節できる柔軟性をもつことも重要だ。(提供:THE OWNER

文・アレン琴子(オランダ在住のフリーライター)