アメリカ経済の強さは「多様性」と「金融のプロ」の存在にあり

新型コロナウイルスでは世界最大の感染者を出し、経済的にも大打撃を受けたにもかかわらず、なぜ株価が下がらないのか。

これは、政府の財政出動の効果が一番大きいとは思いますが、レンタカー大手のハーツやアパレルのJクルーなどコロナ倒産に追い込まれた企業がある一方、コロナショックがむしろ追い風となったIT企業や医療メーカーが好調を維持していることも大きいでしょう。このように、多様な産業を持つこともアメリカの強みです。

今でこそ原油価格が低迷していますが、石油は世界経済の最重要資源の一つであることには違いありません。アメリカはシェール革命のおかげで世界最大の石油生産国になりました。またGAFAと呼ばれる情報産業の会社はすべて米国籍です。要は石油と情報という、これからの世界の二大資源を押さえているのがアメリカなのです。

また、自国の経済を切り盛りするアメリカの財務長官が、常に金融のエキスパートであることも、信頼に足ります。現職のスティーブン・ムニューシンは、ゴールドマン・サックスの幹部として活躍した人物です。その前任のジェイコブ・ルーはシティグループの投資選択部門でCOO(最高執行責任者)を務めていました。歴代財務長官には他にもゴールドマン・サックス出身のヘンリー・ポールソンやロバート・ルービン、ハーバード大学で史上最年少の教授になった経済学者であるローレンス・サマーズなど、錚々たる面々が並んでいます。日本の歴代の財務大臣が、経済・金融のプロでないのに比べると、雲泥の差です。

以上のことを考えると、コロナの感染拡大が終息すれば、世界で最初に経済が回復するのはアメリカだと考えざるを得ないのです。好き嫌いは別にして、一番安全性の高い通貨に避難すべきということです。

コロナショック&Xデーを生き抜くお金の守り方
(画像=THE21オンライン)

コロナショック&Xデーを生き抜くお金の守り方
藤巻健史(経済評論家) 発売日: 2020年07月17日
コロナショックの影響はいつまで続くのか……。正直、先は読めないが、著者によれば「どう転んでも日本の危機は逃れられない」という。では、不可避の危機に対して、我々個人はどうすればいいのか。本書では、通貨、株、国債、金、不動産などについて、「今買うべきもの」と「買ってはいけないもの」を一つひとつ分析。国内外を知り尽くす金融のプロであり、政治家として日本の問題点にも鋭く切り込んで来た著者だからこそ書ける一冊。コロナショックを受け緊急発刊!

藤巻健史(経済評論家)
(『THE21オンライン』2020年07月21日 公開)

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