日本電産 <6594> は、精密小型モーターの開発・製造で世界一のシェアを誇る電気機器製造会社である。9月15日、その日本電産の株価が一時9824円まで上昇、年初来の高値を更新した。後段で述べる通り、日本電産株は今年3月23日に新型コロナ危機で4838円の安値を付けていたが、その後V字型の回復を示し、この6カ月ほどで2倍に上昇している。

ちなみに、日本電産の外国人持株比率は36%に達し、海外投資家の人気が高い銘柄としても知られている。今回は日本電産株が年初来の高値を更新した背景を見てみよう。

目次

  1. 超小型ファンモーターの出荷が過去最高
  2. 「EVトラクションモータ」で世界シェア35%を目指す
  3. 株価は未来を写す鏡…市場は過去最高益を意識?

超小型ファンモーターの出荷が過去最高

日本電産,株価
(画像=pixta, ZUU online)

7月21日、日本電産は2021年3月期第1四半期(4〜6月)決算を発表した。新型コロナ危機で中国の多くの工場が閉鎖された影響等で、売上は前年同期比6.6%減の3368億円となったが、本業の利益を示す営業利益は1.7%増の281億円となった。新型コロナ禍でのリモートワークの急速な広がりを受けて、ノートパソコン向けの超小型ファンモーターの出荷台数が過去最高の500万台を超えたことが寄与した。一方で車載向けモーターは落ち込んだものの、購買価格の見直し、製造ラインの合理化等のコスト削減が奏効した。

日本電産が手掛けるモーターは、世界シェアで8割を占めるHDD用モーターやファンモーター等の精密小型モーターのほか、自動車用や家電用、産業用の中・大型モーターなどがある。いずれもEV(電気自動車)やロボット、ドローン、ノートパソコン等で電気を動力に変換するのに欠かせないものだ。株式市場では新型コロナ危機は、むしろ、ITの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる「DX(デジタルトランスフォーメーション)」を加速させるとの期待がある。日本電産の株価上昇の背景には、そうした期待もあると見られている。

「EVトラクションモータ」で世界シェア35%を目指す