経済
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マイナス圏に沈むユーロ圏経済、欧州金利は現行レンジで低迷

T&Dアセットマネジメント 執行役員 チーフ・ストラテジスト / 温泉 裕一
週刊金融財政事情 2020年10月5日号

 新型コロナウイルス感染拡大の影響により、ユーロ圏の2020年4~6月期実質GDP(2次速報)は、前期(1~3月期)比12.1%減と統計開始以来最大の落ち込みとなった。

 その後は緩やかながら持ち直しの動きが続いているものの、足元ではスペインやフランスなどで新型コロナの感染者数が再び増加、一部の地域では行動制限が復活するなど、先行きは予断を許さない。ユーロ圏総合購買担当者指数(PMI)は8月に51.9と7月(54.9)から低下し、特にサービス業が50.5と7月(54.7)から急低下するなど、先行きへの楽観的な見方は修正されつつある。欧州中央銀行(ECB)の9月公表の経済報告も「現在の失業率は雇用補助制度で歪められているため、今後はさらに失業率が悪化する」との見通しを示すとともに、「今後、消費財の需要が回復する兆しは乏しい」と指摘している。

 物価も原油価格の下落を主因に年初より下がっている。加えて20年7月以降にドイツで実施されている付加価値税(VAT)引き下げや、ユーロ高による輸入物価低下圧力から、8月の消費者物価(HICP)上昇率は前年同月比0.2%減と「マイナス圏」に突入している。コロナ禍による需要低迷から、特に外食・宿泊といったサービス価格の減速が顕著で、この傾向は当面続くとみられる。

 こうしたなか、ECBは大規模な流動性供給と量的緩和・信用緩和手段を実施。足元ではコロナ対策に特化した1.35兆ユーロという規模のPEPP(パンデミック緊急購入プログラム)を主軸として、国債を中心に資産購入を続けている。金融仲介機能低下などへの懸念から今後も利下げは見送られ、当面、緩和手段は資産買い入れや流動性供給が中心になると思われる。今年末にかけて、ECBは政策全般に係る「戦略見直し」を行う予定であり、インフレ目標や資産購入策の期限なども含めECBの政策姿勢に注目が集まるだろう。米国同様、基本的にECBが緩和姿勢を強調する方針に変更はないとみている。

 ドイツ10年国債利回りも、景気の回復基調と財政拡大によって若干上昇圧力が強まるものの、そのペースは非常に緩慢で、年内は現行レンジのマイナス0.4~同0.5%台を中心に推移すると想定している。相場の波乱要因としては、新型コロナが収束に近付くにつれ、リーマンショック後と同様に、各国の財政状態の急激な悪化が市場の焦点となり、イタリアなど南欧債への警戒との対比でドイツ債利回りが想定以上に下押しされる局面が懸念される。

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(提供:きんざいOnlineより)