2020年の路線価は新型コロナ感染症により経済が落ち込んでいるにも関わらず、前年に比べて1.6%の上昇となりました。しかし来年は路線価が下がるかもしれません。そうなったら収益物件の生前贈与の考え時です。

2021年は収益物件の生前贈与のチャンスかも

生前贈与
(画像=monkey-business/stock.adobe.com)

新型コロナウイルス感染症の影響で経済が停滞した2020年。路線価も下がるかと期待されましたが、路線価評価の時点がその年の1月1日であるということが災いし、7月に発表された内容では7年連続の上昇となりました。「経済は右肩下がりなのに税金だけは高い」とぼやきたくなる現状ですが、2021年は不動産投資家にとって生前贈与のチャンスの年となるかもしれません。

コロナ禍で評価額が下がる可能性大

なぜ2021年が生前贈与のチャンスかもしれないと言えるのかというと、1つには来年の路線価評価額の下落の可能性が高いからです。先ほどお伝えしたように、路線価はその年の1月1日時点の評価額となります。2020年1月1日は新型コロナウイルスの影響はまだ表面化しておらず、東京オリンピックの開催も予定通りと期待されていました。

しかし2021年はコロナ禍による経済活動の低迷やインバウンド消費の落ち込み、さらに東京オリンピックの延期などが評価に織り込まれ、路線価が下がるかもしれないのです。

また、2021年は固定資産税評価額の評価替えの年でもあります。3年に1回行われるこの評価ではこの3年間の経済動向が織り込まれるのです。東京オリンピック開催に伴う資材の高騰や人材不足で評価額は高くなるであろうとメディアで論じられたことがありましたが、今年のコロナ禍の影響も評価の材料となるはずです。

リモートワークの増加も影響可能性大

もう1つとして、リモートワークの増加の影響があります。コロナ対策の一つとして多くの企業が従来の勤務形態を改め、従業員に自宅での勤務とオンラインでのコミュニケーションを指示するようになりました。2020年9月現在、コロナ感染がピークを迎えた春ほどではないにせよ、いまだに多くの企業がリモートワークを推奨しています。

リモートワークへの切り替えで、都心部のテナントの一部が賃貸借契約を解約するようになりました。「これまでのように大規模なオフィスは要らない、小規模で賃料の安いところで十分だ」という考えです。こういったオフィス契約の解約も路線価評価に影響を与えるものとみられます。

収益物件の生前贈与のポイント

路線価評価が下がれば、その分相続税や贈与税を計算する際の賃貸物件の宅地の評価額も下がります。評価額が下がって時点で贈与をすれば低い贈与税で将来の相続税を節約できるわけですが、やみくもに生前贈与をすればいいというものではありません。次のようなポイントを押さえることが大事です。

将来の値上がりが期待できる財産に効果あり

最初に押さえたいのが「値下がりは一時的である」という点です。来年値下がりしても、いずれ値上がりするものでなければ意味がありません。将来の値上がりが期待できる収益物件こそ節税効果が得られます。

相続時精算課税も活用可能

相続時精算課税制度は一般人の間では「2,500万円までの贈与は非課税」ということで知られていますが、税理士の間では「相続税の前払い制度でしかなく手続きが厄介」と言われ、あまり評判のよくありません。しかし一つだけ有用な点があります。それは「値上がり分だけ将来の相続税を節約できる」というものです。

相続時精算課税制度を使って生前贈与した財産は相続税の計算の対象になります。ただし、相続税の課税対象となる価格は「相続開始日の時価」ではなく「贈与時の時価」です。贈与時に1,000万円だったのが値上がりして相続開始時に2,000万円であれば、差額の1,000万円分、相続税が節約できるのです。

収益力が大きければ早期移転の効果大

賃貸物件の収益力は物件の評価額や目に見える家賃だけで測れるものではありません。立地条件や執念環境、管理会社の質などに左右されます。コロナ禍で経済状況が落ち込んでも安定的な経営ができるのであれば、早期移転はより効果的となります。家賃などで得られる現金を早々に子供に移転すれば、その分だけ相続税を抑えられるのです。

生前贈与の注意点

路線価が下がったときの生前贈与のメリットについてお伝えしました。ただし、生前贈与はいいことだけではありません。注意すべき点もあります。

空室に注意

コロナ禍により電車やバス、車での人の移動が減りました。テレワークの急増により商用の物件では契約解除も相次いだようです。このような解約により空室が出てしまうと、貸家や貸宅地の割合が減った分評価額が上がります。路線価だけでなく物件の賃貸状況も検討材料に入れましょう。

特別受益による争いを防ぐ

複数の相続人がいる世帯で収益物件の生前贈与を特定の親族に対して行うと、相続の遺産分割協議の際、特別受益だとして争いになるおそれがあります。他の相続人の取り分も考える、現預金が手元にないのなら生命保険などの活用を検討するなどで事前に対策をとりましょう。

不動産取得税・登録免許税がかかる

相続時精算課税制度を含め、生前贈与を行うと不動産取得税がかかります。また、登録免許税は相続よりも贈与の方が高くなります。この他、司法書士や仲介業者への手数料も発生します。「コストを支払っても見合う生前贈与なのか」を考えましょう。

小規模宅地等の特例は使えない

通常、賃貸事業用の物件の敷地は小規模宅地等の特例によって、200㎡まで50%評価減が行われます。しかしこれはあくまでも相続で引き継いだ時だけです。生前贈与を行うと、この旨味が失われます。

小規模宅地等の特例自体、活用に様々な条件があります。内容を確認してから生前贈与を検討した方がよいでしょう。

この他、「ローンを完済してから生前贈与した方がいい」という注意点もあります。節税になるからと安易に飛びつくのではなく、全体のバランスを見てから判断するようにしましょう。(提供:YANUSY

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