銀行預金は低金利が続いているため、資産を形成するためには何らかの資産運用が必要だ。なかでも外貨預金は手軽に始めることができ、高金利や為替差益を期待できる資産運用といえる。今回は外貨預金でおすすめの通貨や銀行、各国通貨の特徴などを解説する。

1,外貨預金とは外国の通貨で預金すること

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(画像=lastpresent/stock.adobe.com)

外貨預金とは、日本円ではなく米ドルやヨーロッパ(EU)のユーロなどの外国通貨で預金をすることだ。多くの金融機関が外貨預金を扱っており、普通銀行の窓口やネットバンキング、ネット銀行などでも対応している。オンラインで手軽に入出金ができ、専用アプリによるサービスもあるため利便性が高い。

国内では長く低金利状態が続いていて、今後もしばらくは上昇が期待できない。一方、海外では景気動向などにより日本と比べて金利が高い国が多いため、外貨での預金は日本円を預けておくよりも利益が生まれる可能性が高いといえる。

外貨預金は、預ける通貨は異なるものの基本的な仕組みはほぼ円預金と同じで、少ない金額からでも始められるのが魅力だ。しかし、円と違って為替手数料がかかるうえに、為替差損が発生する場合もある。このような外貨預金ならではのリスクは、事前に知っておいたほうがよいだろう。

2,外貨預金をおすすめする理由 4つのメリット

メリット1, 金利が高い

現在、日本国内の一般的な普預金金利は0.001%とほぼゼロに等しく、100万円を1年間預けても利息は10円しかつかない。外貨の場合は国によって差はあるものの、0.010% といった高い金利で運用することができる。

どの国でも景気動向やインフレ率予想などによって変わる政策金利が、預金金利にも反映される。現在は米国や欧州と比べて日本のほうが政策金利が低いため、米ドルやユーロといった外貨のほう高い金利を得られる。先進国よりもインフレ率が相対的に高い南アフリカ共和国などは、さらに金利が高い。

メリット2, 為替差益を得られることもある

為替レートは常に変動しているため、外貨預金ではそれによって為替差益を得られることがある。為替差益は、為替レートが円高または円安方向に動くことで発生する。円高とはその外貨に対して円の価値が上がることであり、円安とはその外貨に対して円の価値が下がることだ。

外貨預金では、まず日本円を米ドルなどの外貨に換えて預金し、その後外貨を日本円に換えて引き出す。引き出す時に円安になっていれば、その分の為替差益を得られる。

例えば、1米ドルが100円の時に10万円分を外貨預金に預けると預金残高は1,000米ドルになる。その後1米ドルが110円なった(円安)タイミングで米ドルを円に戻すと、10円の差額×1,000米ドル=1万円が上乗せされて、11万円に増える。これが「為替差益」であり、利子ではなく為替レートの変動による利益だ。

メリット3, 外貨で引き出すことができる

銀行によって異なるが、米ドルやユーロは外貨のまま外貨預金から引き出せることが多い。海外旅行などの際に、空港や現地で両替をする必要がないので便利だ。

外貨預金口座から引き出した外貨を、銀行が自宅などの登録住所に届けてくれる外貨宅配サービスもある。銀行へ送金手数料の支払いが必要だが、外貨のまま国内外へ送金するサービスを提供している銀行もある。

最近では、外貨預金の口座と連動したデビットカードなども目立つようになった。これを持っていれば、加盟店でショッピングができるだけでなく、海外のATMで外貨預金の口座から現地通貨を引き出すこともできる。

メリット4 ,資産運用として始めやすい

外貨預金は仕組みがわかりやすいため、投資初心者でも始めやすい資産運用方法といえる。

期間の定めがなく、為替相場の動向を見ながら好きなときに預け入れや払い戻しができるので、気軽に始めることができる。外貨定期預金の積立であれば毎月500円程度から始められ、決まった日に自動で一定額を預けることができるので手間もかからない。

少額で始められることも、資産運用の初心者にとってはメリットである。銀行によって多少の違いはあるものの、最近では1,000円程度から預けられるようになっている。なかには1米ドルなど、1通貨単位で預けられるところもある。

3,外貨預金の通貨の特徴

外貨預金では米ドルやユーロといった一般的な外貨だけでなく、世界各国のさまざまな通貨が取り扱われている。各通貨には、それぞれ特徴がある。外貨預金では、さまざまな通貨の中から自分のニーズや投資方針に合った通貨を選ぶことが大切なので、ここで各通貨の特徴を確認しておこう。

米ドル……世界の基軸通貨

・特徴——世界の基軸通貨として流通している
・メリット——海外旅行などで現金として使いやすい
・デメリット——極端な値動きがないので為替差益を期待できない
・向いている人——どの通貨から始めたらよいかわからない外貨預金初心者

ユーロ……世界で2番目に取引量が多い

・特徴——米ドルに次いで第二の基軸通貨として確立されている
・メリット——イギリスを除くEU主要国の統一通貨で取引量も多い
・デメリット——イギリスのEU離脱に追随する動きに注意が必要
・向いている人——外貨預金の初心者

英ポンド……世界4番目に取引量が多い

・特徴——EU主要国の中で唯一ユーロへ移行されていない
・メリット——米ドルやユーロと同様にメディアなどで情報を得やすい
・デメリット——米ドルやユーロに比べて流通量が少ないので変動が激しい
・向いている人——ロンドン市況など活発な相場の動きをチェックできる人

スイスフラン……日本同様マイナス金利を導入

・特徴——永久中立国のため有事の際でも買われやすい安全通貨
・メリット——世界情勢の影響を受けにくく安定している
・デメリット——比較的低金利
・向いている人——金利は低くても安全・安定を求めたい人

オーストラリアドル……資源国通貨の代表格

・特徴——比較的高金利の通貨として注目されている
・メリット——国の財政状況が健全で安定している
・デメリット——資源価格と中国の経済動向に左右され相場が変動することがある
・向いている人——為替相場を注視できて高金利を狙いたい人

ニュージーランドドル……オーストラリアや中国経済の影響を受けやすい

・特徴——密接な関係を持つオーストラリアドルと近い動きをする
・メリット——比較的高金利の通貨
・デメリット——為替相場の変動が比較的大きい
・向いている人——為替相場をチェックできて高金利を狙いたい人

南アフリカランド……資源価格の影響を受けやすい通貨

・特徴——金などの資源価格の影響を受けやすい
・メリット——高金利が続いている
・デメリット——グローバルな資金移動の影響を受けやすい
・向いている人——多少リスクがあってもハイリターンを狙いたい人

トルコリラ……高金利通貨の代表格

・特徴——先進国の金融政策によって相場が変動しやすい
・メリット——政策金利が高く金利も高め
・デメリット——インフレ率が高い
・向いている人——グローバルな金融情勢に注意を払える人

香港ドル……アメリカや中国の影響を受けやすい通貨

・特徴――米ドルとペッグ(固定)制を結び、連動している通貨
・メリット——動きが安定しており、米ドルの約8分の1と安い
・デメリット——金利が低く、人民元の動きに左右されることもある
・向いている人——安定と少額取引を求める人

中国元……対外通貨としては使えない通貨

・特徴——政府の厳しい管理体制のもとで値動きが決定する
・メリット——金利が高く、経済成長により将来性が見込める
・デメリット——対外通貨として使えないマイナー通貨
・向いている人——中国の経済指標をチェックでき、中長期で保有できる人

4,外貨預金を始めるなら普通銀行とネット銀行どちらがよい?

外貨預金で取り扱う通貨の種類や為替コストは、銀行によって異なる。外貨預金を始める前に、各銀行でどのような通貨を扱っているか、為替コストはいくらなのかを知っておくことが大切だ。以下の表に普通銀行(ネットバンキング)4行と代表的なネット銀行6行の取り扱い通貨と為替コストをまとめたので、参考にしてほしい。

取り扱い通貨比較表

 
ドル
ユーロ
ポンド
スイス
フラン
オースト
ラリア
ドル
ニュージー
ランド
ドル

アフリカ
ランド
トルコ
リラ
香港
ドル
中国
三井
住友
銀行
× × × ×
三菱
UFJ
銀行
× × × ×
りそな
銀行
× × × × × ×
みずほ
銀行
× × × ×
楽天
銀行
  × ×
住信
SBI
ネット
銀行
× ×
イオン
銀行
× × × × × × ×
GMO
あお
ぞら
ネット
銀行
× × ×
ジャパン
ネット
銀行
× ×
ソニー
銀行
×
※筆者作成

為替コスト比較表 (円→外貨 預入時/1通貨単位)

 
ドル
ユーロ
ポンド
スイス
フラン
オースト
ラリア
ドル
ニュー
ジー
ランド
ドル

アフ
リカ
ランド
トルコ
リラ
香港
ドル
中国
三井
住友
銀行
50銭 70銭 2円 45銭 1円
25銭
1円
27銭
× × × ×
三菱
UFJ
銀行
25銭 25銭 50銭 50銭 50銭 50銭 × × × ×
りそな
銀行
20銭 50銭 × × 50銭 50銭 × × × ×
みずほ
銀行
40銭 60銭 1円
60銭
35銭 1円 1円 × × × ×
楽天 25銭 25銭 45銭 × 45銭 45銭 30銭 × ×  
住信
SBI
ネット
銀行
4銭 13銭 28銭 28銭 25銭 25銭 14銭 × 5銭 ×
イオン
銀行
0 × × × 0 0 × × × ×
GMO
あお
ぞら
ネット
銀行
2銭 10銭 15銭 20銭 15銭 15銭 7銭 × × ×
ジャパン
ネット
銀行
5銭 14銭 30銭 30銭 30銭 30銭 15銭 × 6銭 ×
ソニー
銀行
15銭 15銭 45銭 45銭 45銭 45銭 20銭 × 9銭 30銭
※筆者作成

外貨預金を始めるならネット銀行がおすすめ

普通銀行のネットバンキングとネット銀行を比較すると、外貨預金にかかる為替コストはネットバンキングであってもメガバンクのほうが高く、ネット銀行のほうが低い傾向があることがわかる。例えば米ドルの為替コストは、メガバンクでは20~50銭だが、ネット銀行ならその10分の1以下で済むことが多い。

メガバンク店舗の窓口販売では、取り扱う通貨の種類はもっと多いが、為替コストは非常に高い。ネット銀行の為替コストとは比較にならないレベルだ。

為替コスト比較表の数値は、日本円を外貨に換える際に発生する「片道分」の為替コストであり、外貨を日本円に戻す時は同程度のコストがかかる。往復では約2倍の為替コストがかかるため、銀行ごとの為替コストの差額はさらに広がることになる。

それ以外にも、ネット銀行をすすめたい理由がある。メガバンクの米ドルの金利は0.01%とほぼ横並びだ。一方でネット銀行のなかには、米ドルに0.20%という高い金利を設定しているところがある。

外貨預金で重要である為替コストと金利においては、ネット銀行のほうがかなりお得といえるだろう。

5,主要ネット銀行6行の外貨預金の特徴を紹介

ネット銀行の外貨預金サービスの内容は一見横並びに見えるが、実はそれぞれに特徴がある。為替コストや金利が異なるだけでなく、取扱通貨も3種類から9種類(上記表に記載した通貨に限定)とかなり幅がある。

各銀行は定期的にキャンペーンを実施している。為替コストを低くしたり金利を上げたりするものが目立つが、なかにはポイント付与による優遇もある。ただしほとんどのキャンペーンは期間限定なので、その都度チェックする必要がある。

主要ネット銀行6行が提供する外貨預金の特徴をまとめたので、参考にしてほしい。

楽天銀行……楽天スーパーポイントを預けられる

 ・特徴——楽天スーパーポイントを外貨預金に預け入れることができる
 ・メリット——中国元の扱いがある。あらかじめ設定した為替レートに到達するとお知らせが来る「Eメール通知機能」がある
 ・デメリット——他のネット銀行に比べて為替コストが高い
 ・キャンペーンなど——初めて外貨定期積立をする人が3ヵ月続けると最大2,000円プレゼント

イオン銀行……取引通貨が少ない

 ・特徴——外貨預金でスコアが貯まり、ステージごとに特典が提供される
 ・メリット——預入時の為替コストがいつでも無料
 ・デメリット——取扱通貨が3種類と少ない
 ・キャンペーンなど——外貨預金口座を新規開設し月1万円以上の積み立てをすると1,000円相当の電子マネーポイントを付与

住信SBIネット銀行……取引通貨が8種類もある

 ・特徴——SBI証券との連携サービスがあるなど利便性が高く、リアルタイム取引だけでなく多彩な注文方法がある
 ・メリット——為替コストが比較的低い、取扱通貨が8種類と多い
 ・デメリット——SBI証券のFX(外国為替証拠金取引)に比べると為替コストが高い
 ・キャンペーンなど——年に数回米ドルの為替コストが0円になるキャンペーンを実施

GMOあおぞらネット銀行……為替コストが低い

 ・特徴——外貨に強みを持つGMOクリック証券とグループ連携している
 ・メリット——イオン銀行0円を除き、他行に比べてどの外貨も為替コストがかなり低く、金利が高い
 ・デメリット——外貨定期預金がない
・キャンペーンなど——これまでに、対象6通貨の特別高金利優遇や、購入外貨に応じたキャッシュバックなどのキャンペーンを実施

ジャパンネット銀行……ツールやアプリが充実

 ・特徴——指値注文など利用者の希望に沿った取引ツールや支援アプリを整備している
 ・メリット——取扱通貨が8種類と多く、米ドルの為替コストが低め
 ・デメリット——海外への外貨送金はしていない
 ・キャンペーンなど——外貨定期預金で指定通貨の特別金利キャンペーンを定期的に実施

ソニー銀行……取引通貨が多く中国元も扱っている

 ・特徴——レートを指定できる指値注文取引、外貨普通預金からの定期預金、円定期と外貨定期の同時申し込みなど、取引方法のバリエーションが豊富
 ・メリット——取扱通貨が9種類と最多で、中国元の扱いもある
 ・デメリット——他のネット銀行に比べて為替コストが高い
 ・キャンペーンなど——米ドルの高金利キャンペーン、他行からソニー銀行への外貨送金で現金プレゼント、口座開設日から開設月の翌々月末日まで、外貨購入時の為替コストが無料

6,外貨預金を始める際に注意したい3つのデメリット

ここまで外貨預金の仕組みやメリットを説明してきたが、当然ながらデメリットもあるため注意が必要だ。代表的な3つのデメリットを挙げるので、しっかり認識しておこう。

デメリット1,為替手数料がかかる

外貨預金を始めるにあたってまず知っておいてほしいのは、為替手数料(コスト)がかかることだ。前述のとおり、手数料は日本円を外貨に換えて預け入れる時と、その外貨を日本円に換えて引き出す時にそれぞれかかる。円預金の感覚で頻繁に出し入れしていると、そのたびに為替手数料がかかり、残高が目減りしてしまう。

例えば米1ドルが100円の時に、片道15銭の手数料がかかる銀行に日本円を米ドルに換えて預ける場合、合計100円15銭を支払うことになる。同じレートで米ドルを円に交換する時は、100円から手数料を引いた99円85銭しか戻らない。微々たる金額と思うかもしれないが、預金額が大きいと手数料もかなりの金額になる。

為替手数料を抑えるためには、できるだけ手数料が低い銀行を利用するしかない。前項でメガバンクよりもネット銀行のほうが手数料は低い傾向があると書いたが、ネット銀行同士を比べても手数料にはかなり差がある。場合によっては10倍といった違いが生じることもあるため、よく調べておきたい。

デメリット2,元本割れの可能性がある

外貨預金で最も注意すべきデメリットは、為替レートは常に変動しているため為替リスクが伴うことだ。外貨での元本保証はあるものの、最初に預けた円の金額が保証されているわけではない。為替相場の変動により、受け取る円貨が預け入れ時の円貨相当額を下回る可能性がある。

外貨預金では、預け入れた後で円安になると為替差益を得られるが、円高になると逆に為替差損が生じる。

前項で説明したとおり、1米ドルが100円の時に10万円を1,000米ドルに換えて預け、1米ドルが110円(円安)の時に円に戻せば、「110円×1,000米ドル=11万円(利子別)」となり、1万円の為替差益を得られる。ところが払戻時に1米ドルが90円(円高)になっていた場合は、「90円×1,000米ドル=9万円(利子別)」となり、1万円の為替差損が生じるため元本の10万円を割ってしまう。

また、外貨預金では往復の為替手数料がかかるため、その分を吸収できるくらい円安にならないと元本割れになってしまうのだ。

デメリット3,預金保険制度の対象外

日本には、銀行や信用金庫などの金融機関が預金保険料を預金保険機構に支払うことで、万が一破綻した場合は一定額の預金が保護される「預金保険制度」がある。しかし、この制度は外貨預金には適用されないことを事前にしっかり認識しておこう。

7,リスクを理解したうえで外貨預金を始めよう

外貨預金は高金利や為替利益といったメリットがあるが、ある程度のデメリットもある。初心者でも始めやすい商品とはいえ、資産運用である以上、日頃から為替レートをチェックするなど、自己責任による管理が求められる。

また元本保証がないため、預金が少しでも減るのが耐えられない人はおすすめできない。外貨預金のリスクを十分理解したうえで、まずは自分が無理なく支払える金額から始めてみよう。

文・渡辺友絵(ライター・編集者)/ZUU online

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