太陽光発電ファンドとは、運用会社が大勢の投資家から少額のお金を集めて太陽光発電を行いそこで得た収益を分配する金融商品です。一般的な太陽光発電投資とは何が違うのでしょうか。そのメリットやデメリット、具体的にどんな商品があるのかについて解説します。
太陽光発電ファンドのメリット・デメリット
同じ太陽光発電をテーマにした投資でも「太陽光発電ファンド」と直接投資をする「オーナースタイル(自己所有)」では特性が大きく異なります。太陽光発電ファンドを軸にした場合のメリット・デメリットを見ていきましょう。
太陽光発電ファンドのメリット
・メリット1:投資金額が少額で済む
オーナースタイルの太陽光発電投資は、規模によって異なりますが1プロジェクトあたり1,000万~数千万円程度の投資金額になります。金額が大きいだけに投資に対して慎重になるのは当然でしょう。一方で一般的な太陽光発電ファンドは上場ファンドの場合、1口10万円前後と比較的少ない傾向のため気軽に始められるのがメリットです。
・メリット2:運用中の手間がかからない
もともとオーナースタイルの太陽光発電投資でも手間はかかりません。なぜなら、太陽光パネルのメンテナンスや敷地の手入れなどをすべて業者(販売会社)に委託するのが一般的だからです。もちろん自主管理の場合は管理の手間がかかります。太陽光投資ファンドは、さらに運用中の手間もかかりません。オーナースタイルだと業者とのコミュニケーションが必要ですが、太陽光投資ファンドだとそれも不要になります。
・メリット3:出口戦略がいらない
オーナースタイルの太陽光発電投資の場合、事業をやめるときには太陽光パネルの処分や土地の売却などの出口戦略が必須です。しかし太陽光発電ファンドの場合は、市場に売却して資金化するだけなのでこういった手間も一切かかりません。
太陽光発電ファンドのデメリット
・デメリット1:レバレッジをかけられない
オーナースタイルの太陽光発電投資の場合、金融機関の融資を受けてビジネスを始められる強みがあります。例えば2,000万円の規模で始める場合、このうち100万円分は手元のキャッシュで工面し、残りの1,900万円は金融機関の融資を利用するといった具合です。太陽光発電ファンドは融資が利用できないため、手元キャッシュの何倍、何十倍のレバレッジをかけることができません。
・デメリット2:利回りが低い
オーナースタイルの太陽光発電投資の平均的な利回りは年10%前後です。一方太陽光発電ファンドの平均的な利回りは6~7%台(上場ファンドの場合)と比較すると低くなっています。オーナースタイルと比較し利回りが低い理由は、売電収入からファンドの運用費用を差し引いて出資者に分配されるためです。高い収益を追求する人はオーナースタイルのほうが向いているといえるでしょう。
・デメリット3:節税ができない
オーナースタイルの太陽光発電投資は減価償却費の計上や消費税還付を利用した節税ができますが、太陽光発電ファンドではこれができません。減価償却費とは太陽光パネルなどの設備を耐用年数(国税庁が定めた設備の寿命)に合わせて毎年少しずつ経費化していくことです。これにより所得を圧縮することができます。
もう一つの消費税還付は、太陽光パネルなどの設備購入で支払った消費税が売電収入で預かった消費税を上回った場合、その分のお金が戻ってくるというものです(課税事業者になる必要があるなど条件があります)。こういった仕組みを賢く使って手元キャッシュを増やしたい人にはオーナースタイルの太陽光発電投資が向いています。
ここでは、太陽光発電ファンドのメリット・デメリットを見てきました。注意点は、オーナースタイルも太陽光発電ファンドも元本が保証されるわけではないという点です。オーナースタイルであれば、太陽光パネルが故障・破損をしてメンテナンス費用がかかったり、想定した発電量が得られなかったりするリスクがあります。また太陽光発電ファンドは、運用会社がビジネスに失敗すれば想定していた利回りが得られない点がリスクです。
太陽光発電ファンドと太陽光発電投資、どちらが向いている?
同じ太陽光発電ビジネスでもオーナースタイルとファンドではキャッシュフローが大きく違います。この点について押さえておきましょう。太陽光ファンドのキャッシュフローはシンプルです。ファンドを所有している間は、売電で得られた収益から運用費用を差し引いた分配金が定期的に入ってきます。一方で金融機関から融資を受けて太陽光発電投資をした場合、完済までの間のキャッシュフローは「売電収入-(諸経費+ローン返済)」の手残りです。
この間のキャッシュフローは少なめですが完済後はローン返済がなくなるため一気にリターンが増えます。このようなキャッシュフローの違いを考えると、直近でちょっとした臨時収入が欲しい人は「太陽光発電ファンド向き」、老後資金など将来まとまった資金が欲しい人は「オーナースタイル向き」といえるでしょう。
太陽光ファンドの3つの種類:上場、非上場、アプリ型
太陽光発電ファンドとオーナースタイルの太陽光発電投資を比べて「少額投資ができるファンドのほうが自分に合っている」と考えた場合でもさらにいくつかの種類があります。これらの特徴を知ったうえで最終の選択をするのが賢明です。
種類1:上場している太陽光発電ファンド
これは「インフラファンド」とも呼ばれる金融商品です。上場株式と同様、証券口座があれば手軽に売買でき上場審査基準(純資産額、情報開示、運用体制など)でかなり厳しいハードルがあるため、投資家からすると安心して投資できます。上場している太陽光発電ファンドの銘柄・1口あたりの価格・利回りなどの例は次の通りです。
上場しているインフラファンド
銘柄名 | 1口あたりの価格 | 利回り |
---|---|---|
ジャパン・インフラファンド投資法人 | 9万3,700円 | − |
エネクス・インフラ投資法人 | 9万5,400円 | 6.27% |
東京インフラ・エネルギー投資法人 | 8万9,600円 | 7.14% |
カナディアン・ソーラー・インフラ投資法人 | 11万7,800円 | 6.20% |
日本再生可能エネルギーインフラ投資法人 | 9万8,800円 | 6.65% |
いちごグリーンインフラ投資法人 | 5万5,900円 | 6.80% |
タカラレーベン・インフラ投資法人 | 11万 5,200円 | 6.27% |
※2020年9月11日時点の1口価格と最新利回り
※ジャパン・インフラファンド投資法人は公開間近のため最新利回りは未定
種類2:非上場の太陽光発電ファンド
「太陽光発電ファンド」のキーワードで検索するとずらりとサービスが表示されるように非上場の太陽光発電ファンドは相当数存在します。その中身は多種多様で出資金一つとっても50万円、10万円、5万円、1万円……など高額から少額までさまざまです。運用期間も1~20年など幅広い選択肢があります。
種類3:アプリ型の太陽光発電ファンド
最近では、スマホのアプリで申し込みから運用までを手軽にできる太陽光ファンドも登場しています。例えば対象のファンドが運用する発電所と金額を投資家がアプリ上で選択、しその後は「毎月利回り+元本」分のコインがデジタル上で保存され一定期間を過ぎると現金化ができるといったビジネスモデルです。あくまでも一例のため、サービスの中身はそれぞれのファンドで違います。
本稿では太陽光発電ファンドについて解説してきました。一口に「太陽光発電に投資する」といってもさまざまな選択肢があります。大切なことはこの中から「自分に合った投資方法を選ぶこと」です。ミスマッチのないようここで学んだ情報を参考に慎重な選択をしましょう。(提供:Renergy Online)