景気の現状判断DIは5か月連続で改善、先行き判断DIも2か月連続で改善

景気ウォッチャー調査
(画像=PIXTA)

10月8日に内閣府が公表した2020年9月の景気ウォッチャー調査(調査期間:9月25日~30日)によると、3か月前との比較による景気の現状判断DI(季節調整値)は49.3と前月から5.4ポイント上昇した。また、2~3か月先の景気の先行き判断DI(季節調整値)は48.3と前月から5.9ポイント上昇した。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

今回の結果からは、緊急事態宣言の解除により、経済活動が再開され、景況感に持ち直しの動きが継続していることが確認された。また、新型コロナウイルス感染症の感染状況の落ち着きにより、先行きへの警戒感が和らいできているように思われる。現状判断DI、先行き判断DIともに50に近づいた。

また、地域別でみると、現状判断DI(季節調整値)、先行き判断DI(季節調整値)ともに全ての地域で前月より上昇した。独自の緊急事態宣言が9月5日に解除されたことを受け、沖縄の前月からの上昇幅が最も大きかった。

なお、現状判断DIや先行き判断DIは、景気が変化する方向を示す指標であり、景気の方向感としては改善しているが、景気の水準自体に対する判断を示す現状水準判断DI(季節調整値)は32.4(前月差+5.5ポイント)であり、経済活動の水準自体は新型コロナウイルス感染症の感染拡大前と比べると依然として低い水準にとどまっていることに留意する必要がある。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

景気の現状判断DI(季節調整値):全ての内訳で改善

現状判断DI(季節調整値)は、4月に7.9まで落ち込んだ後に5月から5か月連続で改善した。景気の現状判断DIの回答者構成比をみても、改善と回答した割合(「良くなっている」と「やや良くなっている」の回答の合計)(8月:23.8%→9月:30.7%)や現状維持(「変わらない」)と回答した割合(8月:39.1%→9月:40.4%)は8月より増加し、悪化と回答した割合(「悪くなっている」と「やや悪くなっている」の回答の合計)(8月:37.1%→9月:28.8%)が減少していることから、景況感は着実に改善していることが伺える。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

現状判断DI(季節調整値)の内訳をみると、家計動向関連(前月差+5.0ポイント)、企業動向関連(同+6.3ポイント)、雇用関連(同+5.8ポイント)の全てで改善し、家計動向関連のDIは50を超えた。また、家計動向関連の内訳をみると、小売関連(前月差+1.0ポイント)、飲食関連(同+18.1ポイント)、サービス関連(同+8.7ポイント)、住宅関連(同+10.2ポイント)の全てで改善しており、飲食関連、サービス関連、住宅関連のDIは50を超えた。企業動向関連の内訳においても、製造業(前月差+8.4ポイント)、非製造業(同+4.4ポイント)の双方で改善した。

回答者のコメントからは、新型コロナウイルス感染症に対する警戒感が和らぎ客足が戻ってきていることや、9月の大型連休の人出の好調さ、Go To Travelキャンペーンと9月の大型連休が相乗効果を発揮し、景況感に好影響を与えたことが伺われた。

<新型コロナウイルス感染症に対する警戒感の緩和に関する主なコメント>

  • 新型コロナウイルスの影響が下火になりつつあり、客の自粛ムードも薄れている(四国・一般レストラン)
  • 新型コロナウイルスの第2波がピークを過ぎた感じで、客の外出が増加し始めており、モデルハウスの来場者数も前年並みに戻りつつある(中国・住宅販売会社)

<9月の大型連休の人出の好調さやGo To Travelキャンペーンに関する主なコメント>

  • 9月の大型連休は客の流れが良かったため、少しは経済も回ったと感じる。気温もそれほど下がっていないため、飲料水の売上も少しは良くなっている(近畿・食料品製造業)
  • 9月の大型連休がすごかった。新型コロナウイルスが終息したわけでもないのにあの人出は驚異的である(北陸・一般小売店[鮮魚])
  • Go To Travelキャンペーンの定着に加えて9月の大型連休に恵まれたために、レジャー目的の需要が増加した(東海・百貨店)
  • 8月ほどではないが宿泊稼働も 50%近くまで回復してきている。特に、9月の4連休はほぼ満室の状況が続き、久しぶりに忙しかった。3か月前と比べると、Go To Travelキャンペーンの影響で販売量が大幅に伸びている(南関東・都市型ホテル)

景気の先行き判断DI(季節調整値):全ての内訳で改善

2~3か月先の景気の先行き判断DI(季節調整値)は、7月には新型コロナウイルス感染症の感染者の増加に対する懸念から大きく落ち込んだが、8月に続き2か月連続で改善した。景気の先行き判断DIの回答者構成比をみると、改善と回答した割合(「良くなる」と「やや良くなる」の回答の合計)(8月:14.7%→9月:24.9%)が増加する一方で、現状維持(「変わらない」)と回答した割合(8月:48.5%→9月:47.2%)や悪化と回答した割合(「悪くなる」と「やや悪くなる」の回答の合計)(8月:36.8%→9月:27.9%)は減少しており、先行きの景況感への好感が示唆されている。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

先行き判断DI(季節調整値)の内訳をみると、家計動向関連(前月差+6.0ポイント)、企業動向関連(同+5.0ポイント)、雇用関連(同+7.2ポイント)の全てで改善した。また、家計動向関連の内訳をみると、小売関連(前月差+4.5ポイント)、飲食関連(同+10.6ポイント)、サービス関連(同+7.8ポイント)、住宅関連(同+4.4ポイント)の全てで改善しており、飲食関連とサービス関連のDIは50を超えた。企業動向関連の内訳においても、製造業(前月差+5.2ポイント)、非製造業(同+4.4ポイント)の双方で改善した。

回答者のコメントからは、新しい生活様式の定着やGo To Travelキャンペーンの東京除外が解除されることへの期待が伺われる一方で、現状の景況感がこのまま持続するだろうとの予想が広がっていることが伺われた。

<新しい生活様式の定着に関する主なコメント>

  • 新しい生活様式に人々が慣れてくることで、年末の帰省も含めて、徐々に人の動きが活発になると見込まれる。そのため、今後の景気はやや良くなる(北海道・スーパー)
  • 新型コロナウイルスの感染者数の動きにもよるが、今後はWithコロナで徐々に来客数は戻るのではないか(甲信越・観光名所)

<Go To Travelキャンペーンの東京除外の解除に関する主なコメント>

  • 10月以降東京からのGo To Travelキャンペーン需要を期待している。一時的なことだが、ホテルは少しにぎわってきた。宿泊、レストランは今後も好調に推移しそうである(東海・都市型ホテル)。
  • Go To Travelキャンペーンに、東京都も対象となる 10 月以降に大きな期待 を寄せている。個人に続き団体も動いてくれると、景気が上向いてくる(南関東・旅行代理店)。

<現状維持の先行きに関する主なコメント>

  • 新型コロナウイルスに対するワクチンや特効薬が開発されない限り、景気状況が劇的に回復することはないと推察する。しかし、業種によっては回復基調となっており、景気としては現状と大きく変わらないのではないかとみている(東北・建設業)
  • 現在の新型コロナウイルスの感染状況から、景気の先行きについて現状から大きく変わるようなことはない(北海道・乗用車販売店)10 月以降東京からのGo To Travelキャンペーン需要を期待している。一時的なことだが、ホテルは少しにぎわってきた。宿泊、レストランは今後も好調に推移しそうである(東海・都市型ホテル)。

なお、たばこや「第3のビール」に対する酒税の増税やたばこ税が10月に増税されることへの悪影響を懸念するコメントも複数あった。

9月調査の結果は、新型コロナウイルス感染症の感染者数の落ち着きなどから景況感が改善していることを示すものであった。ただし、景気の水準自体は依然として低いことに留意する必要がある。今後も、新型コロナウイルス感染症の感染状況を意識しながらの経済活動にならざるをえないことは変わらないものの、再度の感染拡大が起こらなければ、「新しい生活様式」の定着やGo To Travelキャンペーンなどの政策効果により、景況感の改善は期待できるだろう。


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山下大輔(やました だいすけ)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 准主任研究員

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