中国で毎年11月11日に実施されるショッピングイベント「W11(ダブルイレブン)」。その盛り上がりは年々増しており、2019年は1日の取扱高が6兆円を超えた。W11とはどのようなイベントなのだろうか。始まった経緯を含め包括的に解説していく。

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(画像=PIXTA)

中国において「11月11日」とはどういう日なのか

W11について理解するためには、中国において「11月11日」がどういう日なのかを知っておく必要がある。

中国では1990年代ごろから、「1」が4つ並んだ11月11日が「独身の日」として定着し、この日に合わせて大規模なイベントやパーティーなどが行われるようになった。独身の日は「光棍節(こうこんせつ)」や、「11」が2つ並ぶため「W11」や「双11」とも呼ばれている。

この独身の日に合わせて大規模な安売りセールを2009年に始めたのが、中国のEC最大手アリババグループ(阿里巴巴集団)だ。アリババの動きにほかのEC事業者や小売事業者なども追随したことで、11月11日は中国最大のビッグセールが行われる日となり、「W11」と呼ばれるようになった。

W11は年々盛り上がりを増し、それに比例するように取扱高も伸びている。ビッグデータ分析などを手掛ける「星図数拠」の分析によれば、2014年に1兆2000億円規模だった取扱高は5年後の2019年には6兆4000億円規模まで膨らんだという。

この5年間、取扱高の伸び率は20〜50%台で推移しており、数年以内には10兆円規模になると考えられている。2014年から2019年までの金額の推移は以下のとおりだ。

<W11における取扱高の推移>

2019年:4101億元(約6兆4000億円)前年比30.5%増
2018年:3143億元(約4兆9000億円)前年比24.3%増
2017年:2529億元(約3兆9000億円)前年比42.9%増
2016年:1770億元(約2兆7000億円)前年比44.0%増
2015年:1229億元(約1兆9000億円)前年比52.7%増
2014年:805億元(約1兆2000億円)

※出典:星図数拠

中国最大のショッピングイベントとなったW11の発端

W11のビッグセールが始まったのは2009年。まだ10年ほどしか経っていないが、すでにW11は中国最大のショッピングイベントとなっている。なぜここまでの盛り上がりを見せているのだろうか。理由はいくつか考えられるが、主な要因となったのがEC市場の拡大とスマートフォンの普及だ。

中国国内ではEC事業者の増加とスマートフォンの普及がほぼ同時に進み、中国国民の多くがインターネットを使ってより手軽にショッピングができるようになった。こうした点がW11を盛り上げる要因の一つになったと言える。

また、当時からすでに勢いに乗っていたアリババグループがW11の火付け役であったことも大きい。W11は瞬く間に多くの人に知られるようになり、国民的なショッピングイベントとなっていった。

W11の傾向から見えてくる中国市場のいま

W11については毎年、さまざまな分析がなされる。先ほど紹介した取扱高のデータもその1つだが、どのようなジャンルの商品が売れたかも分析される。こうしたデータは中国市場を分析するうえで非常に役に立つ。多くの中国人が参加しているだけに、消費者の全体的な傾向を探りやすいのだ。

ちなみに星図数拠の集計によれば、2019年のW11でよく売れたジャンルは1位が「携帯電話・デジタル製品」、2位が「家電」、3位が「コスメ」となっている。2020年はどのような結果になるのか、見逃せない。

また、W11における販売者側の動きにも毎年注目が集まっている。2019年は「ライブコマース」での販売が多くの消費者をひき付けた。ライブコマースは、ユーチューバーやインフルエンサーがライブで商品を紹介する販売手法だ。ライブコマースの浸透は世界でも中国がいち早く進んでいることで知られている。

中国市場の有望性に注目を

日本国内のEC大手・楽天の2019年度分の国内EC流通総額は3兆9000億円だった。この楽天の「1年間」の流通規模を、W11の「1日」の取扱高は上回っている。いかにW11がすさまじい盛り上がりを見せているかが分かるだろう。このようなショッピングイベントの盛り上がりからは、中国市場の有望性を感じざるを得ない。

新型コロナウイルスの影響もあり、2020年のW11の取扱高がどのような規模になるかは予想がつきにくい面もあるが、この状況でも取扱高が前年比で増加するようなことがあれば、市場としての中国の有望性を改めて対外的にも示すことになりそうだ。

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