BMW・M8グランクーペ・コンペティション 価格:8SAT 2408万円 試乗記
至高のスポーツ性能を追求した世界最高のGTカー
M8のコンセプトは実に欲張りである。世界最良のGTカーを目指しつつ、至高のスポーツ性能を追求した。とくに性能面での開発陣の意気込みは、8シリーズの先陣を切ってM8GTをル・マン24時間レースで参戦させた実績からも伺える。
BMWがM8を、本格的なスポーツカーに仕立てたことは、国際試乗会(ポルトガルのサーキット)で経験済みだ。完全FRモードは試さなかったが、4WDのスポーツモードでも存分にサーキット走行が堪能できた。心地よい範囲で後輪を滑らせつつサーキットを攻める醍醐味は、最高。しかも圧倒的に速い。さすがに「M」の頂点に立つスーパーモデルである。
そんなM8のもうひとつの顔、GT性能をじっくり試そうと、M8グランクーペ・コンペティションで長距離ドライブに出掛けた。
グランクーペは4ドアモデル。ボディサイズは全長×全幅×全高5105×1945×1420mm。2ドアクーペとの違いはホイールベース長の差(+200mm)だけではない。車高も上がり、車幅も広がった。フロントスクリーンから後ろのセクションは、完全に「別モノ」である。
BMWロードカー史上最強の625psユニット搭載。硬質な走りが心地いい
グランクーペは、サルーン並みの後席居住性を備えた新世代車。だが、それを理解したうえでも、「大型化」はスポーツカーのM8に悪影響を与えはしないか、という危惧があった。M8にとって、スポーツ性能は生命線である。
結論からいうとM8の4ドアは、2ドアクーペと遜色ないパフォーマンスを始終提供してくれた。
フロントフードの下には、625psというBMWのロードカー史上、最もハイスペックな4.4リッターのV8ツインターボエンジンが搭載されている。M社謹製の8速ATと4WDシステムを組み合わたパワートレーンはクーペやコンバーチブルと共通。ブレーキは、M8専用のインテグレーテッドタイプ。極限走行におけるブレーキ性能を高めるとともに、制動に要する踏み込み量を任意で変更できる。穏やかに走りたいときには、ブレーキをゆったり利かせられるという優れものだ。
街中ではさすがにちょっと硬め、というか、全身が強ばっているかのようなガッチリとしたライド感に終始した。GTカーとしては、ちょっと扱いづらいかも?といった懸念を抱いた。けれども、比較的自由に前輪が動いてくれることを知って、当初の「ままにならない」感覚は次第に薄れていった。乗り手が慣れるのだ。
スーパーカー顔負けの魅惑のサウンド。BMWの本気を実感
高速道路に入ったころには、最新のBMWらしく、ドライバーの両腕と前輪がダイレクトに繋がり、腰とリアアクスルが一体となるようなドライブフィールに満足していた。そこから先はもう、BMW史上最高のエンジンパフォーマンスを、思う存分に味わえばいいだけである。
ドライブモード選択は基本、スポーツがいい。スポーツ+だと日本の公道ではトゥーマッチだ。
加速フィールは強力無比。大きくなったリアセクションの存在をことさら感じる場面はない。スーパーカー顔負けの魅惑のサウンドを響かせながら、豪快に加速する。
高いスタビリティと高性能ブレーキが、高速ドライブをいっそうイージーに、かつ楽しく演出する。実によくできたGTだ。
とにかく、意のままに動く感覚が如実に伝わってくる。だから、たまたま通りがかった山岳ワインディング路でその気になって右足に力を入れてしまうような状況でも、スポーツカーのドライビングファンが味わえる。クルマのサイズを、まるで感じさせない。
M8らしさは、4ドアでもまったく損なわれていなかった。それならば、グランクーペを購入したほうが何かと便利というもの。M8グランクーペ・コンペティションには、「BMWの本気」がみなぎっていた。
BMW・M8グランクーペ・コンペティション 主要諸元
価格=8SAT:2408万円
全長×全幅×全高=5105×1945×1420mm
ホイールベース=3025mm
トレッド=1625×1660mm
車重=2000kg
乗車定員=5名
エンジン=4394cc・V8DOHC32Vツインターボ
最高出力=460(625)/6000kW(ps)/rpm
最大トルク=750(76.5)/1800~5860rpm
WLTCモード燃費=8.8km/リッター(燃料タンク容量68リッター)
(市街地/郊外/高速道路:5.7/9.4/10.9km/リッター)
サスペンション=フロント・ダブルウィッシュボーン/リア・マルチリンク
ブレーキ=前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ=フロント275/35ZR20/リア285/35ZR20
駆動方式=4WD
最小回転半径=6.1m
(提供:CAR and DRIVER)