借金をすると相続税対策になるとお考えの方もいるかと思いますが、それは間違いです。借金をするだけは、一切、相続税対策になりません。
では、なぜ借金をしても相続税対策にならないのか、また借金はどういう場合にうまく活用できるのかを以下でご紹介します。
相続税対策における借金の正しい知識を身につけて、無意味な借金をしないように気を付けましょう。
1.借金しても相続税対策にならない理由
「1,000万円の借金をしたら、相続税が課税される財産からマイナス1,000万円できるので、その分節税ができる。」
このように誤解をされている方がいますが、1000万円の借金をすると言うことは、1000万円の債務ができると同時に、現預金が1000万円増えてしまいます。マイナスの財産1,000万円が増えると同時にプラスの財産が1,000万円増えますので、プラスマイナスゼロとなり相続税対策にはなりません。
また、借金をすると その借入金に関わる利息がかかります。つまり、借金をするだけですと、その利息分だけ損をしてしまいます。
ただ、借金をして借り入れた現預金を使って、有効な相続税対策をすることは可能です。
これについて詳しくは次項で解説していきます。
2.相続税対策で借金が有効な場合
借金をしただけでは何の相続税対策にもならないことは説明済ですが、この借金をしたことによって増えた現預金をうまく使って相続税対策を行うことは可能です。主なものとして、不動産を使った相続税対策と保険を使った相続税対策があります。
2-1.不動産を使った相続税対策
3000万円でマンションを1室購入したとします。
この場合、このマンションの相続税評価は約3割程度となります。相続税を計算するための金額としては、900万となり、2,100万円の評価圧縮効果が得られることになります。
そして、相続税の支払いが終わった後にこのマンションを購入時と同額の3,000万円で売却することができれば相続税対策完了となります。実際にはこんな単純な話ではありませんが、概略は以上の通りです。
なお、不動産を使った相続税対策は不動産を購入するということがポイントであり借入金をするということは関係ありません。ですので、キャッシュで不動産を購入されても全く同等の節税効果が期待できます。
ただ、キャッシュがなくても借入金をうまく活用することで相続税対策ができるということが、借金のメリットとなります。
2-2.保険を使った相続税対策
500万円×相続人の人数までの死亡保険については相続税が非課税になるという規程があります。
例えば、相続人が3名のケースでは1500万円までの死亡保険については非課税で受け取ることが可能です。
ですので、生命保険に現状で加入されていなければ、新たに生命保険に加入することで相続税対策が可能となります。
仮に、生命保険に加入するだけの現預金がなかったとしても借金をしてでも生命保険に加入することで相続税が大幅に節税できる可能性があります。これが、借入を相続税対策に活かす2つ目の方法です。
3.相続税対策のための借金での失敗例
よくある典型的な失敗例は、賃貸アパートの建築・購入でしょう。
土地を多く持っており、その土地に借入をして賃貸アパートを建築すれば相続税対策になると言われてやってはみたものの、実際は大損してしまったという人は少なくありません。
建築当初は、満室稼働でなんとかキャッシュフローも回っていたが、10年、20年と経過してくると修繕費がかさみ、賃貸の需要もなくなり、空室が目立ち…、家賃収入よりも修繕費や借入金の返済の方が多くなり結局資産を目減りさせてしまった。
資産が無くなれば、相続税は安くなりますが、これは相続税対策とは言えません。資産をできるだけ減らさないようにしつつ、相続税の支払いを抑えることが相続税対策です。
では、なぜこのような失敗が起こってしますのか。それは、賃貸アパートの建築に伴う投資リスクに起因します。賃貸需要のない地域に賃貸アパートを建築しても損をするのは目に見えています。
そういったことにならないように、建築会社の営業マンの言うことだけを鵜呑みにするのではなく中立的な立場から税理士等の専門家のアドバイスを必ず受けるようにしましょう。
4.まとめ
借金をするだけでは相続税対策にならないことはご理解いただけたかと思います。 ただ、借金をうまく活用して相続税対策をすることは可能です。しかし、相続税対策には様々なリスクが伴いますので、実行する際には相続税専門の税理士に必ず相談されることを強くお勧め致します。(提供:税理士が教える相続税の知識)