投資に関心はあるけど銘柄選びにあまり時間をかけられない。まとまったお金を1つに投じるのは勇気がいる。そんなときは積立型の投資信託を検討してみてはどうだろうか。プロが運用する投資信託を少額ずつ買う積立型なら、リスクを抑えつつ着実な資産形成が期待できる。

1.積立型の投資信託とは

投資信託,積立
(画像=Hanasaki/stock.adobe.com)

積立型の投資信託(以下、「積立投信」)とは、特定の頻度で一定額の投資信託を購入する投資方法だ。たとえば毎月5,000円分ずつAファンドを買える口数だけ買う。1年経つと6万円分のAファンド(元本ベース)を保有していることになる。

積立の頻度や金額は証券会社が提供する範囲で好きなように変更できる。「毎月」が一般的だが、「毎日」「毎週」「隔月(2か月に1回)」といった選択が可能な場合もある。最低金額も指定された範囲内なら任意で設定できるので、少額から始めたいなど、カスタマイズできるのも大きな魅力だ。

2.積立型投資信託の3つのメリット

一括で購入する方法と比べ、積立型投信にはどのようなメリットがあるのだろうか。

メリット1……自動買い付けなのでタイミングを考えなくてよい

できるだけ安いときに買って高いときに売るのが投資の定石であるが、そのタイミングは慣れていても難しい。ましてや投資初心者にはハードルが高いだろう。

日中働いている人にとっては、市場動向や基準価額の変動を見ながら売買のタイミングを決めるのは結構な負担である。しかし積立投資であればあらかじめ決めたスケジュールに沿って自動的に買い付けをするので、注文する手間やストレスがかからない。

メリット2……3つの分散投資が実現できる

投資信託のリスク分散には「時間的」「地域的」「資産的」の3原則がある。積立投資は時間的なリスク分散ができる。一括で購入せず、時間を少しずつずらして買い付けをおこなう積立投資は安定的な資産形成に有効である。これは金融庁のお墨付きだ。金融庁作成「実践的な投資教育(積立・分散投資の有効性)」によると、投資時期を分散できる積立投資は高値掴み等のリスクを低減できるとある。

また投資信託には投資地域を世界に分散させたもの、投資対象資産を株式だけでなく債券やREITに分散させたファンドが数多く存在する。それらの銘柄は「地域的」「資産的」リスク分散が可能なので、3原則を同時に満たすことができるのだ。

メリット3……少額ずつの買い付けが可能

株式投資も東証上場銘柄のうち10万円以下で買える銘柄は40%を超えるなど、意外と手軽に行える。一方で30万円を超える銘柄も15%ほどある。誰もが知る大企業であれば50万円を超えることも珍しくない。

高額な取引は銘柄選びが大変になり、分散投資が難しくなる。積立投信であれば毎月数千円や1万円ずつといったローンのような買いかたが可能だ。ネット証券のなかには銘柄によって「100円投信」ができるところもある。

3.積立型投資信託における3つのデメリット

リスク分散と少額投資が可能な積立投資だが、見逃せないデメリットもある。

デメリット1……短期間で大きなリターンは得にくい

積立投資はコツコツ時間をかけて、リスクを抑えつつ長期的な資産形成を目指す投資方法である。短期的に高い収益をあげることは難しい。また十分な元本が貯まらないうちに売却してしまうと、長期積立投資の最大のメリットである複利の効果が得られない。

デメリット2……「ドルコスト平均法」は万能ではない

積立投資でよく挙げられるメリットとして「ドルコスト平均法」がある。「一定額内で買えるだけ買う」積立投資は価格が安い時に多くの口数を、高い時には少ない口数を買うことになるため、平均購入単価が下がるという考え方だ。

しかしドルコスト平均法は周期的に上下動を繰り返す局面では有効だが、長期的に下落が続けば損失はまぬがれない。ドルコスト平均法によるリスク回避は限定的だと考えたほうが良い。

デメリット3……手数料や税金といったコストがかかる

投資信託の場合、株式投資とは異なり売買時だけでなく保有期間中にも手数料がかかる。これを「信託報酬」という。信託報酬はプロに運用を委託していることに対する手数料で、積立だけでなくどのような投資信託でも発生する。

信託報酬の水準は銘柄によってさまざまで、一般的にインデックス投信は低く、アクティブ投信は高いといわれている。また投資信託から得られる収益には売却益と分配金があるが、どちらにも20.315%の税金がかかる。

投資信託の目標は手数料と税金を差し引いても十分なリターンが得られるよう設定する必要がある。

4.非課税で積立投資信託を運用する方法

節税しながら積立投信をすれば、リターンが大きくなる。簡単に節税できる制度を紹介しよう。

つみたてNISA(積立NISA)による積立投信

少額投資非課税制度である「つみたてNISA」を使えば、最長20年間非課税で積立運用できる。つみたてNISAとは2018年1月からスタートした非課税制度で、投資対象の幅広い一般NISAとは異なり、長期・積立・分散投資に適した投資信託のみを対象としている。

SBI証券を例にとると、取扱投資信託数2,634件のうち、積立注文が可能なのは2,515件、NISA対象なのが2,565件、つみたてNISA対象なのが164件だ。選べる銘柄数は限定的だが、金融庁の基準を満たす安心の銘柄に厳選されているともいえる。

年間投資枠は40万円が上限になっているため月3万円程度の積立だが、積立投資信託を行うなら、ぜひ活用したい制度だ。

iDeCo(イデコ)による積立投信

iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)でも非課税で積立投資が可能だ。iDeCoは税制上の優遇措置が講じられている私的年金である。自分で証券会社に専用口座を開き、銘柄を選択して運用する。この運用益が非課税になる。

つみたてNISAとの大きな違いは掛け金が全額所得控除の対象となることだ。節税効果はNISAよりも高い。ただiDeCoは何かと制約が多く、拠出限度額は被保険者の種類によって月額1万2,000円から6万8,000円、払い出しは満60歳を過ぎてからなどと決まっている。

通常の積立投信やつみたてNISAのように、好きなときに口座から引き出せないので注意が必要だ。

一般NISA(ニーサ)でも積立投資は可能

一般NISAでも投資信託を積立方式で買い付けは可能だ。買いたい銘柄に積立注文を出し、預り区分を「NISA預り」とすれば、NISA口座で積立投信の運用ができる。

ただし、一般NISAの非課税期間は最長5年だ。長期間少額ずつ積み立てることによって効果を発揮する積立投資の期間としてはやや短い。長期保有を考えている場合は気をつけよう。

5.NISA(ニーサ)やiDeCo(イデコ)ではない通常の積立投信の活用法

NISAやiDeCoのように非課税で積立投資できる制度が整っているため、通常の積立投資は不要のように感じられるが、場合によっては有効に活用できる。たとえばつみたてNISAやiDeCoの限度額を超えて投資したい場合だ。

つみたてNISAは月3万円程度、iDeCoは企業年金のある会社員なら月1万2,000円しか投資できない。その上限を超えてさらに積立をしたい場合は、通常の積立投信を活用するのもひとつの方法だろう。

つみたてNISAやiDeCoでは対象銘柄が限られるという問題もある。一般NISAなら対象銘柄は豊富だが、非課税期間が5年と長期投資には向かないのが気がかりだ。そんな場合は一般(特定)口座での積立投資が視野に入ってくる。ライフスタイルや予算に合わせて活用するのがおすすめだ。

6.積立投資に適した銘柄を選ぶ方法

積立投資は長期間続けることが何よりも重要だ。商品選びには長期投資に適した銘柄を候補に挙げたい。

まずは信託報酬が低い銘柄を選ぼう。目安としてはつみたてNISAの法令上の上限である国内投資0.5%以下、国内外投資0.75%以下を最低限としたい。できるだけ投資対象地域が広いグローバル銘柄を選ぶことで地域的リスク分散をはかる。

両者を満たす例として、全世界や先進国の株式指標をベンチマークとするインデックス投資信託が挙げられる。または投資対象資産が国内外株式・国内外債券・国内外REITに分散しているバランス銘柄もよいだろう。

バランス型にも株式重視型・債券重視型・資産均等型などさまざまな種類がある。目論見書やホームページをチェックして自分に適したものを選ぼう。

社会情勢が不安定な今の時代、積立投資信託はひとつの安心材料になってくれる。非課税制度も活用し、賢く資産形成していこう。

執筆・篠田わかな(ファイナンシャルプランナー)
外資系経営コンサルティング会社にて製造・物流・小売部門のコンサルタントとして業務/システム改革プロジェクトに参画。退職後独学でFP技能士の資格を取得。開業して個人事業主となり、マネー・ビジネス分野の執筆、企業からの請負業務を手がける。

MONEY TIMES

【関連記事 MONEY TIMES】
つみたてNISA(積立NISA)の口座開設を比較 SBI、楽天など
つみたてNISA(積立NISA)の銘柄で最強な投資信託はどれ?
投資信託は長期投資で運用すべき4つの理由
投資信託における本当の「利回り」とは 儲かる度合いの正確な調べ方
投資信託の約定日とは?申込日・受渡日との違いや注意すべきケースを解説