新型コロナウイルスの影響により、東京ディズニーランドやシーを運営するオリエンタルランドが今期、上場以来初となる赤字に転落する見通しとなった。入園者数の落ち込みが、同社の業績に深刻なダメージを与えている。この窮地を乗り切る方法はあるのだろうか。
オリエンタルランドが初の赤字見通し
オリエンタルランドは2020年10月29日、2021年3月期第2四半期の連結業績(2020年4〜9月)を発表し、その中で通期の業績予想を記している。第2四半期の連結業績の数字から読み解いていこう。
新型コロナウイルスの感染拡大により、売上高や営業利益は大幅に落ち込んだ。
・売上高……591億4,900万円(前年同期比76.2%減)
・営業利益……241億7,800万円
・最終損益……300億9,500万円
通期の業績予想については、7月時点では「現時点で合理的な業績予想の算定が困難」という理由で未定としており、今回コロナ禍が本格化してから初めて業績予想を数字で示した。
・売上高……1,854億6,000万円(前期比60.1%減)
・営業利益……514億円のマイナス
・経常利益……538億9,000万円のマイナス
・最終損益……511億1,000万円のマイナス
オリエンタルランドは1996年に上場したが、通期赤字となるのは初めてだ。
「テーマパーク事業」の売上高は約4分の1に
オリエンタルランドの業績悪化の主な要因は、売上高の急速な落ち込みだ。同社の売上高の大半を占める「テーマパーク事業」の上半期の売上高は、前年同期比76.7%減の478億円まで減少、つまり約4分の1になったわけだ。
テーマパーク事業の売上高が落ち込んだ要因は、入園者数が大幅に減ったことだ。前年の上半期の入園者数は1,574万人だったが、今期は269万人にとどまっている。
入園者数が落ち込んだ主な要因は、新型コロナウイルスの感染防止の観点から、東京ディズニーランドと東京ディズニーシーを2月末から6月末にかけて休園したことだ。再開後も入場を制限しているため、入園者数・売上高が例年並に回復するのはしばらく先のことになるだろう。
売上規模はテーマパーク事業より小さいが、「ホテル事業」も厳しい状況だ。臨時休館によって宿泊収入が大きく減少し、売上高は前年同期比76.5%減の81億円まで落ち込んでいる。
株価は一時急落も、投資家からの期待感は低くない
オリエンタルランドの株価は、決算発表翌日の10月30日に急落し、645円安の1万4,585円となった。同社の株価は、コロナ禍が始まってから乱高下を繰り返している。しかし、ビフォーコロナと比べて株価が極端に落ち込んでいるわけではない。
投資家からのオリエンタルランドに対する期待感は、決して低くないと思われる。コロナ禍の収束とともに業績が自然に回復すれば、オリエンタルランドの株価は右肩上がりになる可能性が高い。
特に外出自粛の反動で起きると言われる「リベンジ消費」が本格化すれば、オリエンタルランドの株価は大幅に上昇するかもしれない。このような観点から、この状況においても多くの個人投資家がオリエンタルランド株に注目している。
この緊急事態をしのぐための打開策は!?
オリエンタルランド自身もコロナの収束をただ待っているわけにはいかないため、この緊急事態をしのぐための打開策を打ち出している。その一つが「キャッシュアウトの抑制」だ。具体的には、以下の施策を発表している。
・役員報酬の減額や冬季賞与の減額
・準社員の新規採用の停止
・スペシャルイベントやエンターテインメントプログラムの中止・縮小に伴うコストの削減
また、業務が少なくなっているダンサーには、早期退職や配置転換を提案するという。
今後は、新型コロナウイルス対策を万全にした上で、魅力ある施設づくりやソフト(人財力)の強化に取り組んでいくとしている。9月末から開業している新エリアなどでは、事前オンライン予約システムやアプリでのエントリーシステムなどを導入し、感染予防を図っている。
中長期的には、変動価格制チケットの導入や「体験」を新たな収益源にする施策の導入などによって、収益の最大化を目指していくという。
今後はコロナ禍を何とか生かす方策を考えることが求められる
現在、テーマパークビジネスを展開している企業はどこも厳しい。米ディズニーは2020年4〜6月期に赤字に転落し、9月末にアメリカ国内の従業員のうち約2万8,000人を解雇する計画を発表している。
このようなピンチの時は、事業体質などを根本から見直すチャンスでもある。現状を前向きにとらえ、コロナ禍をプラスのエネルギーに変える方策を考えることが経営陣に求められる。オリエンタルランド、そして米ディズニーの経営陣の今後の決断に注目したい。
執筆・岡本一道(政治経済系ジャーナリスト)
国内・海外の有名メディアでのジャーナリスト経験を経て、現在は国内外の政治・経済・社会などさまざまなジャンルで多数の解説記事やコラムを執筆。金融専門メディアへの寄稿やニュースメディアのコンサルティングも手掛ける。
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