ESG投資が国内の個人投資家の間で注目されています。ESG投資とは「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」に取り組む企業を重視した投資のことです。この記事の前半では、ESG投資の3つの選択肢とメリット、後半ではESG投資でリターンを得るためのコツについて解説していきます。
ESG投資の3つの選択肢とそれぞれのメリット
これまでの一般的な投資とESG投資には、決定的な違いがあります。一般的な投資は、財務情報を重視して行うのが常識でしたがESG投資は、財務情報と非財務情報の両面を見ながら投資を行うものです。ESG投資は、海外では当たり前ですが国内で本格化してきたのは2017年にGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が投資原則を改めたころからではないでしょうか。
GPIFのような機関投資家だけでなく個人投資家にも浸透しつつあります。個人投資家がESG投資を行いたい場合の選択肢は、主に以下の3つです。
- ESG関連のETF
- ESG関連の投資信託
- ESG関連の株式
自分に合ったESG投資の手法はどれでしょうか。それぞれの特徴とメリットをチェックしていきましょう。
ESG投資の選択1:ESG関連のETF
・ESG関連のETFはどんな投資方法?
ETF(上場投資信託)とは、日経平均株価やNYダウといった経済指数と連動する投資商品のことです。ESG関連のETFになるとESGで高評価の企業群で構成される指数と連動します。ちなみにESG指数は、以下のようにいくつかの種類があり「どの指数を選択するか」は対象のETFによって異なるのが特徴です。
[ESG関連の主な指数]
- PX/S&P設備・人材投資指数
- MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数
- MSCI日本株女性活躍指数
- 野村企業価値分配指数 など
・ESG関連のETFのメリットは?
ESG投資を手軽に行えるのがETFのメリットです。ESGの長期的かつ安定的なリターンをポートフォリオに組み込むことができます。一般的なETFと同様、指数を通して多岐にわたる企業に投資をしているため、分散投資の効果も期待できるでしょう。
・ETFに投資する際の注意点は?
ESG関連のETFといってもさまざまな銘柄があります。銘柄によって連動する指数や純資産総額、信託報酬などが異なるため、複数の銘柄を比較して投資するのが賢明です。
ESG関連ETFの一例
ファンド名 | 証券コード | 資産額 |
---|---|---|
One ETF ESG | 1498 | 35億2,900万円 |
ダイワESGセレクトリーダー | 1653 | 39億6,700万円 |
上場インデックスファンド 日本経済貢献株 | 1481 | 27億4,600万円 |
ESG投資の選択2:ESG関連の投資信託
・ESG関連の投資信託はどんな投資方法?
ESGへの関心の高さからESG関連の投資信託が増加傾向です。またESGという価値観が出てくる以前から運用されている環境重視の「エコファンド」や「SRI(社会的責任投資)ファンド」などもESG関連の投資信託と一般的に認知されています。
・ESG関連の投資信託のメリットは?
ESG関連の投資信託とETFの違いは、投資信託よりもETFのほうが投資対象として幅広いことです。ETFは、経済指数をもとに運用していますが、投資信託ではファンドマネージャーの方針に沿って個別企業をセグメントして投資を行っています。そのため投資をしている実感があるのは投資信託でしょう。投資対象が限定的なため、ETFよりもハイリターンが期待できる妙味もあります。(その分リスクもあります)
・投資信託に投資する際の注意点は?
一口にESG関連の投資信託といっても数多くのファンドがあり歴史や純資産額など背景は大きく異なります。例えば2000年9月28日が当初設定日の「朝日ライフ SRI社会貢献ファンド(愛称:あすのはね)」は、設定来の騰落率がなんと+92.6%、純資産総額は約40億円(2020年10月30日時点)という数字を誇る定評のあるファンドです。
一方で1999年9月30日が当初設定日の「損保ジャパン・グリーン・オープン(愛称:ぶなの森)」は、設定来の騰落率が+41.79%、純資産総額は約211億1,200万円(2020年10月30日時点)となっています。近年立ち上げられたESG関連の投資信託の中には、純資産額が10億円以下の銘柄も散見されます。今後の成長期待という楽しみもありますが、安定性を考えると一定の純資産額のあるファンドが安心かもしれません。
ESG投資の選択3:ESG関連の株式
・ESG関連の株式はどんな投資方法?
経営において「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」を重視する企業の個別銘柄を選んで投資をするものです。例えばESG関連の株式を銘柄発掘サイト「株探」で検索すると62の銘柄が表示されます。(2020年11月19日16時現在)近年は、ESGの注目度が高いため、関連銘柄が急増していく可能性が高いでしょう。
・ESG関連の株式のメリットは?
株式は、対象企業の注目度や業績が高まれば急騰することもあります。そのためハイリターンを期待する人にとってメリットがある選択肢の一つです。ただハイリターンの裏側には、ハイリスクもあることを忘れてはいけません。ESG関連銘柄といっても財務内容や業績が悪化すれば大幅に値下がりする可能性もあります。
・株式に投資する際の注意点は?
ESG関連銘柄が多いため「絞り込みがうまくできない」「銘柄選びで迷う」という人も多いのではないでしょうか。銘柄の絞り込みはさまざまです。例えば得意なジャンルのESG銘柄を対象にする方法があります。ESGに力を入れている消費財メーカーとしては、花王<4452>や資生堂<4911>、コーセー<4922>などが有名です。
「企業名 ESG」で検索すると公式サイトで各企業のESGの考え方や活動が公開されています。その内容を吟味しながら選んでいくと効率的です。
ESG投資でリターンを得るためのコツは?
ESG投資も投資である以上、最終的には「リターンをしっかりと得られるか」が重要です。ESG投資で成功するための3つのコツを紹介します。
ESG投資成功のコツ1.財務情報や業績も意識する
ESG関連の株式投資をするうえで意識したいのは、財務情報と非財務情報の両方を見ながら銘柄選定することです。ESGによる社会貢献度が高い企業でも財務内容や業績に問題があれば投資によるリターンは期待できません。ESG投資というとESGの活動に意識が向いてしまいがちですが、あくまでも財務情報と非財務情報のバランスで銘柄選定をすることが大切です。
ESG投資成功のコツ2.長期投資の視点を大事にする
ESG投資の根本的な考え方は「企業の長期的な成長にはESGの視点が重要」というものです。当然ながらESG投資を行う個人投資家にも長期投資の意識が求められます。短期的な値動きに一喜一憂するのではなく年単位あるいはそれ以上のスパンで企業活動を見守るスタンスが必要です。
ESG投資成功のコツ3.ESGが企業価値を高めているかチェックする
企業のESG活動にはコストがかかりますが、このコストを「将来の企業価値を高める無形資産」と見ることもできます。そのため「企業価値が本当に高まっているか」を投資家が評価することも大事です。一例としては「ESG活動を通して新たな市場を開拓できているか」「ESGを重視する企業イメージによって優秀な人材が集まっているか」などが挙げられます。
ESG投資のメリットは長期的に安定したリターン
ここでは、国内の個人投資家の間で広まりはじめたESG投資をクローズアップしました。いまだに「ESG投資は社会貢献を気にする意識が高い投資家のもの」という勘違いがあります。また「一過性のブームで終わるのでは」という見方をする人も少なくありません。しかし実際のESG投資には、将来の企業価値向上に力を入れる企業へ投資をして長期的に安定したリターンを得られるメリットがあります。
株価が右肩上がりで上がり続けるアベノミクスは終わりました。今後ESG投資にシフトすることで株式市場が低成長な時代が待っているとしても安定的なリターンを得られる環境を手に入れることが期待できます。(提供:Renergy Online)