本記事は、村松勝・吉田隆太氏の著書『年商10億円最速達成の3大ポイント』(セルバ出版) の中から一部を抜粋・編集しています

突破
(画像=PIXTA)

本当は、社長も「お客様」のことをよく知らない

「トンガリ」とは、人が見聞きして感じる印象です。ですから、見せ方の問題であることは十分に考えられます。しかし、その前に、「戦略」が欠如しているケースがほとんどです。

以前、当社に相談に来られた食品メーカーS社は、社運をかけてつくった商品が思うように売れずに悩んでいました。その会社のS社長のお話を2時間ほど聞きましたが、印象としてはやはり商品に「トンガリ」がありませんでした。

S社長は、競合する商品は市場にないと言っていましたが、インターネットで調べると、たくさん類似品が出てきました。「トンガリ」がない商品は、類似品が多いです。

あなたも、そのような経験はないでしょうか。例えば、「この化粧品は、お肌がツルツルになってすごい商品です」「このサプリメントは、元気ハツラツになってすごい商品です」「このお水はとても体によくてすごい商品です」と言われたところで、よく聞く話だなぁという印象です。

商品でなくても、例えば会社へ売り込みに来たセールスマンが、このサービスは他にはないサービスですと延々と話をしてみても、聞いている側からしてみれば、「こういう会社はよくあるよなぁ」という印象を持ちます。

最近は、電話だけでなく、メールでもたくさん売り込みが来ますが、ほとんどが同じような印象です。

もちろん、中には「トンガリ」があって、話に引き込まれてしまうような商品・サービスもあると思います。しかし、一般的に「トンガリ」がある商品・サービスは少なく、多くが類似商品・サービスに埋もれています。 

では、どうやって「トンガリ」を出していくかといえば、まずは、提供している商品・サービスのカテゴリーを一歩引いて見ることが大切です。そして、お客様の視点で自社商品をよく検証することです

うちの商品・サービスが売れないのは、もしかして、「埋もれている」のではないか? 「トンガリ」がないのではないか? そうやって謙虚に見ることができれば、大きな前進です。

なぜかと言えば、多くの会社は、自社の商品・サービスにほれ込んでいるからです。そうなると、謙虚にまわりを見ようとしない、自社の欠点を認めたくない、そういう心理が働いてしまいます

一般向けの商品・サービスだけでなく、法人向けの受託事業なども同じです。思うように売上が上がらないのであれば、まずは、一歩引いて、業界全体の視点から、自社を見る姿勢が大切です。そうやって、お客様の視点で冷静に見ていくことで、「埋もれている」ということがわかってくると思います。

さて、相談に来られた食品メーカーS社ですが、その後、当社の指導を受けることになりました。S社長からは、どうしても諦められない、絶対にもっと売れてよい商品だ、という強い自信が感じられました。

このように経営者が自信を持つ商品、「想い」が込められた商品は、かなり高い確率で成功します。理由は、自信を裏づける根拠があるケースが多いからです

S社の商品もしっかりと自信を裏づける根拠がありました。売上は低いものの、リピートされており、ファン顧客が付いていたのです。

売上が少なくても、しっかりと売れている事実があれば、まだまだチャンスがあります。特に中小企業は、自社が潤うだけの市場があればよいわけです。

この食品メーカーが提供している商品を改めて検証していきました。その際には、メーカーとして自慢できる特徴は何か、そして、実際にどんなところがお客様に喜ばれているかの両面から確認しました。

この両面を検証していく視点は大切です。メーカーが自慢できる特徴は、実はそれほど喜ばれていない、むしろ別の特徴が喜ばれていたということはよくあります

つくることに情熱を注いでいるメーカーがあまりお客様の意見を聞いていなかったり、深いニーズを把握していなかったりすることがよくあります。なぜかは、わかりませんが、おそらく「つくることが好きな人が、つくりたいモノをつくっている」ということだと思います。

この食品メーカーのS社も同様に、お客様の立場に立って、ニーズをよく把握できていませんでした。同社が持つ商品は、栄養成分が身体を温める効果があるということが売りでした。

そして、S社長は、この商品をお年寄りから子どもまで、幅広いお客様に買ってもらいたいという「想い」がありました。

しかし、実際に購入している人、喜ばれている人を分析していくと、若い女性が多いことが見えてきました。メーカーもあまり認識していなかったこの事実をもとに、「戦略」を組み立てていくことになりました。

売れる「仮説」をどうやってつくるか?

  この食品メーカーS社の商品は、食べると身体がぽかぽかと温かくなることが売りです。そこで、社長はこの商品を日ごろから食べてもらえば、「誰でも病気になりにくい、強い身体をつくることができる」と考えていました。ですから社長は、お年寄りから子どもまで、幅広いお客様に買ってほしいという願いがあったのです。しかし、前述のとおり、実際には若い女性が買っていたことがわかりました。

ここで考えてもらいたい点は、若い女性が、「病気になりにくい強い身体をつくりたい」と思って生活しているかということです。

もちろん、そのほうがよいに決まっています。しかし、商品を買うほどの理由としては、強さがないと感じます。

普通に考えてみれば、「病気になりにくい強い身体をつくりたい」と願うのは、どちらかといえば、若い女性ではなくお年寄りのほうでしょう。健康寿命を延ばしたいという願いは、顕在化した強いニーズです。

このあたりのズレが、「トンガリ」が出ない原因でもあります。結果として、ぼんやりとしたイメージの商品になり埋もれてしまいます。

売るために「戦略」を立てるということは、言い換えると、こうすれば売れるという「仮説」を立てることです。

ある会議の流れで、ある若い女性スタッフが言いました。

 「私は、毎年冬になると冷えに悩みます。足が冷えて、痛くて眠れないほどつら いこともあります。もし、この商品が冷えに効くなら、売れるんじゃないでしょうか」

 S社長は、驚いた顔をしていました。その女性スタッフは、週に何度かアルバイ トに来ている方でした。もの静かな方で、普段あまりS社長とも話をする機会がな かったのです。今回は、女性をターゲットにした会議でしたので、参加してもらっ たところ、このような貴重な意見を発言してくれたのです。

その後、商品の愛用者や、友人知人など、若い女性のお悩み事や、商品に対す る意見を色々と聞いていきました。

 そこで見えてきたことですが、この商品の愛用者の中に、冬の寒い時期に冷え対 策として購入している人が何人かいました。この商品は女性の冷え対策に有効であ ることがだんだんわかってきました。

 そして、実際に身体がどれだけ温まるか、専用の測定機械を使って実験を行いま した。そうすると、その食品を摂取すると、直後から身体の温度が明らかに上昇し社の場合は、今売れている事実をもとに、若い女性をメインターゲットとして、いくつかの仮説を立てていきました。

このとき設定した若い女性とは、20代、30代の女性です。まずは、その年代の女性が日ごろから悩んでいることや欲していることについて、徹底的に考えていきます。調査会社を使ったり、調査データを集めたりするのも大切ですが、考えられる範囲でまずは、社内で議論することが大切です。

様々な意見が出てきました。若い女性は、「美容に対する意識が高い」「ダイエットに関心が強い」「おしゃれなモノが好き」「美味しいものを食べたい」「おしゃべりが好き」「癒されたい」「自分の時間がほしい」「仲間とつながっていたい」…そして、会議の流れで、ある若い女性スタッフが言いました。

「私は、毎年冬になると冷えに悩みます。足が冷えて、痛くて眠れないほどつらいこともあります。もし、この商品が冷えに効くなら、売れるんじゃないでしょうか」

S社長は、驚いた顔をしていました。その女性スタッフは、週に何度かアルバイトに来ている方でした。もの静かな方で、普段あまりS社長とも話をする機会がなかったのです。今回は、女性をターゲットにした会議でしたので、参加してもらったところ、このような貴重な意見を発言してくれたのです。

その後、商品の愛用者や、友人知人など、若い女性のお悩み事や、商品に対する意見を色々と聞いていきました。

そこで見えてきたことですが、この商品の愛用者の中に、冬の寒い時期に冷え対策として購入している人が何人かいました。この商品は女性の冷え対策に有効であることがだんだんわかってきました。

そして、実際に身体がどれだけ温まるか、専用の測定機械を使って実験を行いました。そうすると、その食品を摂取すると、直後から身体の温度が明らかに上昇していくことがわかりました。データに、はっきりと示されていました。

実際に、冷えに悩んでいる方ほど、体がポカポカと温まるというのです。つまり、即効性が感じられる商品です。このとき、「あっ、この商品は売れる!」と強く感じました。   最初にS社長がイメージしていた、「病気になりにくい、強い身体をつくることができる商品」と、「若い女性が持つ、冷えのお悩みにこたえる商品」では、戦略が大きく変わります。理由は、そこに競合商品が関わってくるからであり、この点を慎重に検証する必要があります。

「うちの競合商品は、あの会社の商品だ」と思っていることが実際にはズレているということがよくあります。長年そうやって競合を決めつけて商売をしていれば、近視眼的になってしまい、本来競うべき相手を間違えてしまいます。

その原因は、やはり、お客様目線で商品を見ていないということです。競合は、あなたの会社が決めるのではなくて、まず、何よりも商品を選ぶお客様が決めるということです。要は、お客様からすれば、お悩みを解決してくれるモノであれば、何でもよいわけです。

もちろん、安くてよいモノが選ばれますが、あなたが思っている競合企業とはまったく違うジャンルの商品やサービスが競合になっているということは珍しくありません。その点を踏まえて、「仮説」を立てていく必要があります。

年商10億円最速達成の3大ポイント
村松勝
株式会社ミスターマーケティング代表取締役代表コンサルタント。電通グループ企業にて、大手企業各社のダイレクトマーケティングを経験後、2007年に株式会社ミスターマーケティングを創業
吉田隆太
株式会社ミスターマーケティング、取締役代表コンサルタント。株式会社ミスミにて新規事業開発、新商品開発などのマーケティングを手掛ける。退職後、株式会社ミスターマーケティングに創業メンバーとして参画。サンダーバードアメリカ国際経営大学院経営学修士(MBA)、経済産業省中小企業診断士(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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