cluster内に経済圏を作る

クラスター,加藤直人
(画像=THE21オンライン)

――起業をする際に、VRの事業をすることに決めた?

【加藤】VRをツールとして使って、インターネットに乗っていない体験をインターネットに乗せる会社を作ることにしました。もともとゲームを作るスキルがあったので、それを使って開発したのがclusterです。

――ご自身で開発した?

【加藤】僕と同様に大学を中退して働く気がなさそうにしていた1年後輩と2人で創業し、ベースの開発をしました。家が近くて、引きこもりの時期にも一緒にご飯を食べたりしていたんです。今のCTO(田中宏樹氏)です。

――ゲームを開発するスキルで作ったのですね。

【加藤】clusterのように、多人数が同時にプレイするゲームはMMOと呼ばれて、2000年前後に流行っていたのですが、その後、ゲームの中心がガラケーやスマホに移ったことで、10年ほど技術の進化が止まっていました。clusterで使っている技術のベースは、2010年以降にオープンになった、MQTTというIoT向けのものです。clusterではリアルタイムに多数のユーザーのモーションデータのやり取りをしていますが、これにMQTTはとても相性が良かった。MQTTは、実はMMOにも向いた技術だったのです。

――clusterを公開した当初、反応はどうでしたか?

【加藤】α版を出すと、まずはVRの開発者の間で話題になりました。VR開発者向けの勉強会を開催すると、そこにOculus創業者のパルマー・ラッキー氏がサンフランシスコから参加してくれたりもしました。

正式版を出してから半年ほどはユーザーが増えない暗黒時代だったのですが、その後、VTuberのブームが来たことでユーザーが増えました。2018年には、〔株〕ソニー・ミュージックエンタテインメントの主催で、人気VTuberの輝夜月による世界初の有料VRライブも行ない、さらにユーザーが増えていく中で、イベントの幅を広げ、スマホ版もリリースし、ゲームを作って投稿できるようにもしたりという、ちょうどそのタイミングでコロナ禍がやって来た、という感じです。

――ユーザーがゲームを作ってclusterに投稿できるようにしたのは、どういう意図ですか?

【加藤】イベント以外のエンターテインメントにもコンテンツを広げるというのは、もともと構想していたことでした。今あるサービスで当社が理想としているものに近いのが、『あつまれ どうぶつの森』や『フォートナイト』といったゲームなんです。これらはゲームなのですが、実質的にはソーシャルスペースになっています。ゲーム性はこれらの作品ほど高くなくても、ユーザーが自分たちで作ったゲームを投稿できるような場所こそが、世界で一番大きなソーシャルスペースになるだろうと考えていました。clusterにコンテンツを投稿するユーザーは日に日に増えていて、ワールド投稿機能のリリースから半年も経たずに数千人規模になっています。

――投稿するには、専門的なスキルがいるのでしょうか?

【加藤】Unityを扱う必要はありますが、プログラミングや3Dモデリングの知識がなくても、レゴのようにパーツを組み合わせる感覚でできますね。

――先ほど少し触れられたように、最近になって、バーチャルイベントを手がける会社が他にもいくつか出てきています。それらとの競合については、どのように考えていますか?

【加藤】今後、10年、20年、30年と、バーチャルイベントはアップトレンドであり続けるだろうという肌感覚があります。コロナ禍が終息すれば若干落ちるでしょうが、ベースは上がり続けるでしょう。そして、バーチャルイベントはコモディティ化すると思います。市場性、収益性がある以上、数多くの企業が参入するでしょうから、それは確実で、避けられません。その中で、ブランドがしっかりしている会社がある程度のシェアを占めることになると思います。

そうなったとき、イベントの主催者がどこでバーチャルイベントを開催するかといえば、やはり、多くの集客ができて、多くの利益が得られるプラットフォームでしょう。そのためには、常に多くのユーザーが集まるように、プラットフォーム内に経済圏を作る必要があります。

――バーチャル空間に経済圏を作るというと、Second Lifeのようなイメージでしょうか?

【加藤】Second Lifeはかなり研究したのですが、当社の目指すところとは違います。当社はイベントやゲームなどのコンテンツによって収益を上げるビジネスモデルです。ですから、イベントを運営するための様々な機能をゼロから整えてきましたし、ゲームを作るための機能も充実させているところです。一方、Second Lifeはバーチャル空間の土地を売り、流通から手数料を得るというビジネスモデル。人が移り住むための場所、つまりメタバースで、コンテンツを遊ぶための場所ではないんです。根本的な発想が違っている。

cluster内に作る経済圏は、ユーザーがコンテンツを投稿すると、それを他のユーザーたちが楽しみ、投稿したユーザーに収益が入る、というように、ユーザー同士が価値を交換するものです。将来的には、当社のシステムを使うイベント業者がいてもいいと思いますし、clusterにゲームを作って稼ぐ会社が出てきてほしいと考えています。

これを実現するには、時間も、組織力も、資金もたくさん必要で、簡単には真似できない。これが他社との大きな差別化要因になると思います。今は、法人向けのイベント事業で上げた利益を、そのための投資に使っています。

《写真撮影:まるやゆういち》

加藤直人(クラスター代表取締役CEO)
(『THE21オンライン』2020年11月07日 公開)

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