相続はいつ起こるかわかりません。しかし、親が病床にある場合は、ある程度死期を悟ることもあるでしょう。親を看取るタイミングが訪れたとき、相続に備えどのような準備をすればよいのでしょうか。相続直後に困らないための、事前の対策について考えます。

早めに相続の準備を始める

相続
(画像=taka/stock.adobe.com)

事故、災害などによる突然の死に、家族が途方に暮れることもあるでしょう。しかし、病気で入院している段階であれば、状況によっては死期が近いということを悟ることもできます。あるいは医師から余命を告げられる場合もあるでしょう。そのときには、早めに相続の準備を始めることが大事です。とくに以下に挙げる5つの作業は早めに行う必要があります。

財産目録と遺言書を作成する

親の死が近いと悟ったら、まずは相続に備え、どのような財産を持っているか、被相続人(親)に確認する必要があります。死後に不明な資産が発見されるとトラブルの元になるからです。死が近い親に財産の有無を確認するのは心が痛むかもしれません。
しかし、親族が相続直後に困らないようにするためには必要なことです。同時に遺言書も作成してもらえるとよりいいでしょう。もし親族から聞きにくければ、司法書士や弁護士に依頼して財産目録と遺言書の作成をしてもらうのもいいでしょう。

生前贈与の3年前ルールを確認する

生前贈与には「3年前ルール」があるので、親の死が近いからといって、あわてて贈与することは認められません。生前贈与をしてから3年以内に、贈与した人が死去した場合、贈与はなかったものとされます。仮に1億円の財産のうち1,000万円を3年以内に贈与していた場合、贈与は無効とされ、相続財産に組み戻されます。

この場合、すでに贈与した1,000万円が誰に贈ったものかを確認し、配偶者や子どもであれば、あらためて相続財産に加算する必要があります。その場合、すでに支払った贈与税は相続税から控除されますので、その点も確認が必要です。

ただし、3年前ルールの適用対象になるのは、相続人である配偶者と子どもであり、孫への贈与は対象外です。孫への贈与は死去する直前でも認められます。そこで、残りの財産のうち非課税枠の110万円以内で孫に贈与すれば、相続財産から贈与分を指し引くことができ、節税になります。なお、生前贈与をプロに任せる場合は、税理士に依頼するのが適当です。

戸籍を収集しておく

相続の手続きで手間がかかるのが戸籍の収集です。正式な法定相続人のほかに、隠し子などがいないか確認するために、親の誕生から死去するまでに変更したすべての「戸籍謄本」が必要となります。戸籍謄本は、戸籍に記載されている全員の身分事項を証明する書類です。この身分事項には出生や婚姻、認知、死亡など出生から死亡までの戸籍上の記録が記載されています。

このほかに、戸籍に記載されている一部の人の内容を記載した「戸籍抄本」もありますが、相続手続きにおいては戸籍謄本を用意すれば間違いありません。また、相続人全員の戸籍謄本も必要になるので、戸籍の収集はかなり手間がかかると思ったほうがよいでしょう。面倒であれば、司法書士に依頼することもできます。

不動産の名義を確認する

不動産の名義を確認しておく作業も必要です。土地建物などの不動産の名義が現在誰になっているかを調べるには、法務局で登記簿謄本(登記事項証明書)を取得する必要があります。どこの法務局でも、ほかの都道府県、市区町村の物件のものも取得することができます。

不動産所有者の住所や氏名が記載されている登記簿は一般公開されているので、取得するのに必要な書類はとくにありません。

預金を引きだしておく

万一親が死去すると、葬儀代や入院費用の支払いなどでまとまったお金が必要になります。その場合、故人名義の口座が凍結されると、預金を引き出すのにかなりの手間を要します。相続人全員が合意した「遺産分割協議書」と全員の印鑑証明が必要になるからです。

一定の条件によって遺産分割前でも相続人単独で払い戻せる「預貯金の仮払い制度」を利用することもできますが、引き出す金額は150万円までに限定されています。そのため、できれば親の生前に、ある程度の預金を引きだしておいたほうが無難でしょう。

ただし、注意しなければいけないのは、遺産の一部でも使うと「相続放棄」ができなくなる恐れがあることです。したがって、財産目録を先に作成するときに負債の有無を確認する必要があります。引き出す場合は、あとでトラブルにならないように、以下の3点を行うことが大事です。

▽預貯金の仮払い制度を利用する際の注意点
(1)財産管理委託契約書を作成する
(2)引き出したお金を使った使途を記帳しておく
(3)領収書を保管する

かなり煩雑な手続きになるので、司法書士や行政書士に依頼したほうが安心で確実といえます。

親な健在なうちに相続の準備を。専門家のアドバイスも視野に

もちろん、本来なら財産目録や遺言書は、親が元気なうちに話し合って用意しておくことが理想です。しかし、死期が近くなってからでも、プロの力を借りながら、少しでも有利に相続に備えることは可能です。まずはあわてずに、専門家に気軽に相談することが正しい相続への一番の近道かもしれません。(提供:相続MEMO


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