経営者の個人保証は、経営者と後継者のどちらにとってもデメリットを生む可能性があるため、事業承継自体を躊躇させる要因となり得ます。経営者の個人保証を解除できる制度「経営者保証に関するガイドライン」を活用し、事業承継を円滑に進めていきましょう。

事業承継における個人保証の問題とは

経営
(画像=PIXTA)

事業承継とは、会社に関する全てのものを、次の経営者に引き継ぐことです。

事業承継によって引き継がれるもの

具体的には、経営権や役職など「ヒト」の承継や、土地・建物・設備・資金・株式など「モノ」「カネ」の承継が行われます。経営ノウハウや経営理念などの知的資産も、引き継がれるものに当てはまるでしょう。

経営者の債務、保証も引き継がれることにより後継者の負の財産となる

中小企業においては、現経営者が会社から借り入れをしていたり、会社が金融機関から借り入れをしている場合に現経営者が保証人になっていたりするケースもあるでしょう。現経営者の債務や保証も事業承継により引き継がれるため、後継者にとって負の財産となり、大きな問題として扱われます。

個人保証が事業承継を阻んでいる

個人保証への対応としては、現経営者が引き続き保証人であり続けるか、後継者が保証人となるかのどちらかを考慮することになるでしょう。しかし、前者の場合は完全に引退することができず、家族から反対を受けることも考えられます。後者の場合も、金融機関など債権者からの同意が得られない可能性があるでしょう。

「経営者保証に関するガイドライン」の特則適用による経営者保証を解除

経営者保証なしで金融機関から新規融資を受けられたり、既存の経営者保証を解除できたりする制度が、「経営者保証ガイドライン」です。一定の要件を満たすことで、ガイドラインを適用できる可能性があります。

債務超過会社の経営者を救う

債務超過をしている会社においても、事業譲渡と特別清算を行った経営者は、経営者保証ガイドラインを利用することで、残った連帯保証を整理できる可能性があります。自己破産後に認められる自由財産に上乗せし、一定期間の生活費を認めてもらえる場合もあるでしょう。

ガイドラインに拘束力はない

経営者保証ガイドラインは、金融機関に対して法的拘束力を有するものではありません。しかし、「対象債権者により自発的に尊重・遵守されることが期待されるもの」と位置付けられているため、通常は、金融機関が誠実な対応を行うものと理解されています。

新たな信用保証制度「事業承継特別保証」により経営者保証は不要に

2020年4月1日よりスタートした新たな信用保証制度「事業承継特別保証」により、一定要件のもと、事業承継時に経営者保証が不要となる可能性があります。経営者保証コーディネーターの支援や確認を受けた場合に、保証料を軽減し、最大でゼロになることが特徴です。

経営者の個人保証を解除するポイント

経営者保証ガイドラインの特則適用を受けるためには、以下に挙げるポイントに注意する必要があります。

会社が良好な経営状態を保っている

経営成績や財務状況が健全な状態を保っており、十分な返済能力があると示すことは、ガイドラインの適用を受けやすくする大きなポイントです。

債務者が中小企業であること

金融機関など、対象債権者との間に結ばれた保証契約の主たる債務者は、中小企業でなければなりません。大企業や個人事業主であっても利用できますが、主たる債務者が事業者でない個人の場合は利用不可です。

保証人が「個人」であり、債務者である中小企業の経営者であること

対象債権者との間に締結された保証契約の保証人は個人である必要があり、主たる債務者である中小企業の経営者でなければなりません。ただし、実質的な経営権を持つ人や経営者の配偶者など、経営者以外でも認められる場合があります。

債務者および保証人が適切に情報を開示し、弁済に誠実であること

主たる債務者である中小企業と、経営者である保証人は、対象請求者の請求に応じ、それぞれの財産状況や負債状況を適切に開示していなければなりません。また、債務不履行や粉飾決済がないなど、それぞれが弁済について誠実であることを示す必要があります。

法人と個人をはっきりと分けている

「事業用資産を全て法人名義にする」「経理と家計を区別し管理する」「法人から役員への貸し付けをなくす」など、法人と経営者で明確な区分や分離を行う必要があります。

「経営者保証ガイドライン」で事業承継をスムーズに進めよう

経営者保証ガイドラインの特則適用を受けられると、経営者の個人保証をゼロにできる可能性があります。制度の内容や対策を理解し、経営者自身や後継者に余計な負担を残さないよう、スムーズに事業承継を進めていきましょう。(提供:企業オーナーonline


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