駐車場大手のパーク24はこのほど、2020年10月期の連結業績(2019年11月~2020年10月)を発表した。最終損益は400億円以上の大赤字という結果だ。なぜここまで巨額の赤字を計上してしまったのか。新型コロナウイルスの影響なのか。パーク24の直近の業績に迫る。

パーク24の2020年10月期の決算概要について

駐車場
(画像=photo-34/stock.adobe.com)

パーク24は2020年12月15日、2020年10月期の通期決算を発表した。売上高は前期比15.3%減の2,689億400万円で、営業利益と経常利益、最終損益はいずれも黒字から赤字に転落している。

具体的には、営業利益が223億2,200万円のプラスから146億9,800万円のマイナスに、経常利益は215億6,600万円のプラスから151億6,800万円のマイナスに、そして最終損益も123億4,800万円のプラスから466億5,200万円のマイナスに転じた。

2020年10月期の通期決算と同時に、2021年10月期の連結業績予想も発表している。その予想によれば、2021年10月期は第2四半期までは厳しい状況が続くが、通期においては、売上高が前期比増、営業利益と経常利益、最終利益は黒字となる見通しだという。

海外子会社ののれんの減損損失で巨額赤字に

パーク24は2020年10月期について、以前は約255億円の赤字になる見通しだと予想を発表していた。しかし、赤字額は466億円と想定以上に膨らんだ。その理由としては主に、海外子会社ののれんなどの減損損失がある。

のれんとは簡単に言えば「ブランド価値」を示すものだ。新型コロナウイルスの収束見通しが立たない状況や、パーク24のイギリスやオーストラリアでの将来計画の見直しなどにより、同社の海外子会社ののれんの減損損失が膨らみ、赤字額が予想より大きく増えてしまったわけだ。

2020年10月期の総額319億円の減損損失のうち、のれんの減損損失は実に193億円に上る。

セグメント別の売上高の状況はどうなっている?

では、パーク24のセグメント別の売上高はどのようになっているのか。同社の事業セグメントは、大きく「駐車場事業国内」「駐車場事業海外」「モビリティ事業」に分類される。それぞれ状況をみていこう。

「駐車場事業国内」の売上高は、2020年10月期は前期比9.3%減の1,502億4,400万円だった。一方の「駐車場事業海外」の売上高は同31.5%減の451億6,900万円だ。つまり駐車場事業では、新型コロナウイルスによるダメージは国内よりも海外の方が深刻なものとなっている。

モビリティ事業はどうか。パーク24はサービスとしてレンタカーとカーシェアを融合させた「タイムズカー」を展開しており、モビリティ事業の大半はこのタイムズカーで売上げを計上した。タイムズカーの売上高は前期比14.7%減の693億2,000万円だった。

全体の傾向としては、コロナ禍の影響を受けた今期は、第3四半期までは売上高が減少傾向にあったが、第4四半期で売上高は大きく改善した。第4四半期単独で黒字とまではいかなかったが、四半期単独では想定以上の結果を残せたと言える。

また、パーク24はコロナ禍の影響を受けつつ、コスト抑制もしっかり進めている。2020年10月期は、のれんの減損損失により巨額赤字となっているが、決して同社の今後を過度に悲観的に見る必要はないと言えそうだ。

「所有から利用へ」「MaaS」とパーク24の今後

最後に、少し違った観点からパーク24の今後を考えてみよう。

いま、自動車業界では「所有から利用へ」という流れが起きている。この流れは、「一家に一台」というように自家用車を持つことが当たり前である時代が変わりつつあり、レンタカーやカーシェアの利用が増えていくというものだ。

このような状況が進展するのであれば、パーク24の事業セグメントとしては今後、「モビリティ事業」が有望だと考えられる。現にパーク24のカーシェア車両が利用できる駐車場・ステーションは全国で続々と増えており、カーシェアの会員数もすでに100万人を大きく超えている。

またパーク24は最近、将来の有望市場とされる「MaaS」にも力を入れつつある。MaaSとは「Mobility as a Service」の略で、さまざまな移動手段を1つのサービスで検索・予約・決済できるというようにするという概念だ。このMaaSにおいてカーシェアは確実に重要な役割を果たす。

密を割けるには自動車は有効だが

新型コロナウイルスの感染拡大下においては、人々は密を避けるため公共交通よりも自動車での移動を好む。しかし、それでもパーク24の駐車場事業の売上高は前期比でマイナスとなっており、コロナ禍によるダメージを避け切れていない。

ただ、ワクチン開発に関する明るいニュースも最近は多く、パーク24にとっても一刻も早い収束が望まれる。(提供:THE OWNER

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)