平日の宿泊料金が下がるというホテルの課題も解決

外泊する日は宿泊用になるので、置いておける私物はどうしても限られる。それでもいいので、好立地に安く住みたい人にとって、確かにUnitoの物件は魅力的だろう。

では、部屋を提供するホテル側にとっては、どんなメリットがあるのだろうか。Unito代表取締役の近藤佑太朗氏に聞いた。

「ホテルの宿泊料は日によって大きく変わります。予約が入りにくい平日は、宿泊料を下げても、部屋が埋まらないことが多い。ですから、平日に住んでくれる人がいて、部屋が埋まることには、大きなメリットがあるのです」(近藤氏)

Unitoのユーザーには、藤岡氏のように、家が都心の職場から遠い人や、東京やその近郊に実家があって、「半一人暮らし」や恋人との「半同棲」のために部屋を借りている人が多い。そうした人たちは、週末や年末年始の宿泊予約が増える時期には、自宅や実家に帰ったり、旅行に行ったりして、部屋を空けるので、ちょうど需給のバランスが取れるという。都心のホテルでは、当日や前日に予約が入ることが多いため、72時間前に宿泊管理システムに載せられれば問題ないそうだ。

東京オリンピック・パラリンピックを見据えて都心ではホテルの部屋数が増えたが、コロナ禍によって空室率が高くなっている。Unitoのプラットフォームに物件を掲載するのは無料で、成果報酬を支払う形にしているので、ホテル側にも好評だという。

「コロナ禍が収まって、インバウンドの観光客が戻ってきたあとも、リモートワークが定着して、ビジネスの出張客は以前より少ない状態が続くでしょう。一方で、ホテルの部屋数は急に減りませんから、当社はアフターコロナの新たな市場を作っていると考えています」(近藤氏)

Unitoのビジネスを始める前、近藤氏は、各地で運営する自社の宿泊施設に泊まり放題のサブスクリプションサービスの事業を企画していた。仕事上、月の半分は出張で外泊だったという。

「これでは家賃を支払うのがもったいない。様々なサービスがパーソナライズされて提供されているのに、『暮らし』はそうなっていないということに気がついたのが、Unitoを始めたきっかけです。出張が多い方に使っていただけるだろうと思っていたので、2拠点生活に使うユーザーが多いのは予想外でしたね。確かに、月に何日かは職場の近くのホテルに泊まるという人は以前からいますが、潜在ニーズを顕在化させたのだと思います」(近藤氏)

今年2月にサービスをリリースし、10月の宿泊数は2700泊、流通金額は1500万円に達した。Unitoの物件に住んでいるユーザーは150人ほど、会員数は約2000人だ。

来年4月からは、外泊すると家賃を割り引くだけでなく、他の様々な商品やサービスが購入できるマイルが貯まるようにする予定だという。また、その先には、シンガポールやロンドンなど、海外の都市部への進出も考えている。

「フランスや中国にも、外泊したら家賃が割り引かれるサービスを展開しているスタートアップがあるのですが、既存の施設を利用しているのは当社が世界で唯一です」(近藤氏)

持ち込める私物が限られるという課題についても、現在は大きめの段ボール箱程度の大きさのボックスを自社開発して提供しているが、ロッカータイプを開発中だ。都心のホテルに、2拠点生活者が利用するロッカーが並ぶ風景が、近いうちに見られるようになるかもしれない。

THE21編集部
(『THE21オンライン』2020年11月18日 公開)

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