日本には、一般の投資家が購入できる公募投資信託だけで5,916本(2020年10月時点・投資信託協会)もの商品がある。どれを選ぶか迷ったときは、投資信託の分類方法やそれぞれの種類ごとの特徴を理解しておけば、自身の投資目的にあった商品を選べるはずだ。投資信託の制度上の分類方法と運用対象による分類方法に分けてみていこう。
1.投資信託の制度上の6つの分類方法
投資信託の制度上の分類方法としては、次の6つがある。
⑴設定された場所による分類 | 国内投資信託 | 外国投資信託 |
日本国内で日本の法令に 基づき設定されたもの |
海外で海外の法令に 基づき設定されたもの |
|
⑵募集形態による分類 | 公募 | 私募 |
不特定多数(50人以上) の投資家が対象 |
50人未満の投資家または 機関投資が対象 |
|
⑶運用形態(組成方法) による分類 |
契約型 | 会社型 |
運用会社と信託銀行が 信託契約を結び組成される |
投資を目的として設立 された投資法人により 組成される |
|
⑷株式に投資できるか による分類 |
公社債投資信託 | 株式投資信託 |
株式には一切投資できない | 株式へ投資できる | |
⑸購入できる時期による分類 | 単位型 | 追加型 |
ファンド設定前の 募集期間のみ購入可能 |
原則運用期間中は いつでも購入可能 |
|
⑹運用期間中の投資資金の 払い戻し可否による分類 |
オープンエンド型 | クローズドエンド型 |
原則運用期間中の途中解約 (資産の取り崩し)が可能 |
運用期間中の解約 (資産の取り崩し)は不可 (市場で売却することは可能) |
それぞれ詳しくみていこう。
(1)設定された場所による投資信託の分類……国内投資信託と外国投資信託
投資信託は、ファンドが設定された場所によって「国内投資信託」と「外国投資信託」に分類される。
国内投資信託とは、日本国内で日本の法令に基づいて設定される投資信託のことだ。国内で販売されている投資信託のほとんどは国内投資信託に分類される。
一方の外国投資信託は、海外で海外の法令に基づいて設定される投資信託のことをいう。日本での販売や勧誘は日本の法令に基づいて行われる。運用対象が全て日本の資産であっても、海外で海外の法令に基づいて設定される投資信託は外国投資信託に分類される。
外国投資信託の代表的な商品には、外貨建てMMFがある。外国投資信託は国内投資信託にはない商品性や税制面で有利な商品があるが、外貨建て商品の場合は為替リスクを伴うため、購入するときに留意したい。どこの国で設定されたファンドであるかは、販売資料に「〇〇(国名)籍」のように記載される。
(2)募集形態による投資信託の分類……公募投資信託と私募投資信託
投資信託は、募集形態によって「公募」と「私募」に分類される。
「公募」投資信託とは、不特定多数(50人以上)の投資家を対象に募集され、広く一般に購入可能な投資信託のことだ。金融機関で販売されている多くの投資信託は公募型である。
「私募」投資信託は、50人未満の投資家、あるいは適格機関投資家を対象に募集される投資信託のことをいう。購入できる投資家が限定されるため、明確な目的を持った商品設計やハイリスク商品への投資が可能だ。また公募投資信託と比べて解約の頻度が低いので、安定した運用がしやすいといわれている。
(3)運用形態(組成方法)による投資信託の分類……契約型投資信託と会社型投資信託
投資信託がどのように組成され、投資家から集めた資金がどのような形態で運用されるかによって、「契約型」と「会社型」に分類される。
契約型の投資信託とは、委託者(運用会社)、受託者(信託銀行)の信託契約によって組成される。これに受益者(投資家)をあわせた三者の契約に基づいて運用される形態の投資信託のことをいう。
契約型の投資信託では、まず委託者である運用会社(投信会社)と受託者である信託銀行が信託契約を結ぶ。この契約をもとに運用会社が発行する受益証券に投資家が投資するのである。投資家から集められた資金は、信託財産として信託銀行にプールされる。運用会社は信託会社に運用を指図する形で信託財産の運用を行い、運用により得られた利益は投資家に分配される。日本の投資信託はほとんどがこの形態をとっている。
会社型の投資信託とは、投資を目的とする株式会社(投資法人)があり、投資家が投資主(株主)となる形態の投資信託のことをいう。
会社型の投資信託は投資法人によって組成される。投資法人が発行した投資口(株式会社の株式にあたる)に投資した投資家が投資主(株主)になる。集めた資金は投資法人から委託された運用会社が運用を行う。投資家には保有する投資口数に応じてその収益が配当される。米国ではほとんどの投資信託が会社型だが、日本ではJ-REIT(不動産投資信託)など、一部の商品に限られている。
このほか、複数の投資信託に投資する「ファミリーファンド」や「ファンドオブファンズ」といった運用形態の商品もある。
ファミリーファンドとは、複数の投資信託(ファンド)の資金をまとめて、「マザーファンド」と呼ばれる投資信託に投資する運用形態のことをいう。投資家が直接購入するファンドは「ベビーファンド」と呼ばれる。資金をまとめて運用することで投資効率が上がり、運用コストを抑えられるなどのメリットが期待される。
ファンド・オブ・ファンズとは、複数の投資信託(ファンド)に投資する投資信託のことをいう。それぞれが分散投資を行う複数のファンドに投資するため、高い分散効果が期待可能である。いっぽうで、投資家が直接購入するファンド・オブ・ファンズの商品とファンド・オブ・ファンズが投資するファンドの両方で信託報酬がかかるので、運用コストが割高になりやすい。
(4)株式に投資できるかによる投資信託の分類…公社債投資信託と株式投資信託
投資信託は、株式に投資できるかによって「公社債投資信託」と「株式投資信託」に分類される。
債券やコマーシャル・ペーパー(CP)、譲渡性預金(CD)、コールローンなどの短期金融商品を投資対象とし、株式には一切投資しないと約款で定められている投資信託がある。これを「公社債投資信託」という。公社債投資信託の代表的な商品としてはMMFやMRF、中期国債ファンドなどだ。
株式投資信託は、その名の通り株式に投資できる投資信託のことだ。法令上の分類では、公社債投資信託以外の投資信託は、株式投資信託に分類される。実際に株式に投資可能かどうかであり、実際に株式に投資しているかは問われない。一般的な投資信託のほとんどは株式投資信託に分類される。
(5)購入可能時期による投資信託の分類…単位型投資信託と追加型投資信託
投資信託は、購入可能時期によって「単位型」と「追加型」に分類される。
設定前の募集期間のみ購入可能で、運用期間中は追加購入不可能なタイプの投資信託を「単位型」または「ユニット型」という。
単位型の投資信託のメリットは信託期間(運用期間)が定められているため、計画的な運用が行えることだ。いっぽうで運用期間中に解約が多く発生した場合には、運用資金が不足し、当初予定していた期間よりも繰り上げで償還され、運用が終了することもある。
運用期間中いつでも追加購入可能なタイプの投資信託を「追加型」または「オープン型」という。
追加型の投資信託は自分のタイミングに合わせて購入したり、定期的に積立をしたりといったメリットがある。信託期間(運用期間)が定められている商品と無期限の商品がある。
(6)運用期間中の投資資金の払い戻し可否による投資信託の分類…オープンエンド型投資信託とクローズドエンド型投資信託
投資信託は、運用期間中に投資資金の払い戻しに応じてもらえるかで、「オープンエンド型」と「クローズドエンド型」に分類される。
「オープンエンド型」は運用期間中に資産を取り崩すことができ、投資家が請求すれば投資資金の払い戻しを受けられるタイプの投資信託だ。オープンエンド型の投資信託では、一部解約(投資法人の場合、減資)により、いつでも投資した資金を換金できる。解約時にはペナルティとして、「信託財産留保額」が解約代金(売却代金)から差し引かれる場合もある。
運用期間中に資産を取り崩すことができないタイプの投資信託は「クローズドエンド型」という。クローズドエンド型の投資信託は、資産の取り崩しによる換金はできないが、市場に上場されており、投資家は市場で売却することで換金を行える。主な商品にはREIT(不動産投資法人)などがある。
2.投資信託の運用対象による6つの分類方法
運用対象による投資信託の分類方法としては、投資信託協会が定める「商品分類」が最も一般的だ。商品分類では、それぞれの投資信託がどの資産に主に投資し、収益源としているかによって分類される。商品分類は、投資信託の説明書である目論見書や運用報告書などに記載されており、基準が統一されているため、投資信託を選ぶ際の目安として利用しやすい。
<商品分類>
単位型・追加型 | 単位型/追加型 |
投資対象地域 | 国内/海外/内外 |
投資対象資産 (収益の源泉) |
株式/債券/不動産投信/その他資産/資産複合 |
独立分類 | MMF/MRF/ETF |
補足分類 | インデックス型/特殊型 |
投資信託協会では商品分類に加え、投資信託の特徴(属性)をより詳細に示す「属性区分」も定められている。
<属性区分>
投資対象資産 | 株式(一般/大型株/中小型株) |
債券(一般/公債/社債/その他債券/クレジット属性) | |
不動産投信 | |
その他資産 | |
資産複合(資産配分固定式/資産配分変更型) | |
決算頻度 | 年1回/年2回/年4回/年6回/年12回/日々/その他 |
投資対象地域 | グローバル/日本/北米/欧州/アジア/オセアニア/ 中南米/アフリカ/中近東(中東)/エマージング |
投資形態 | ファミリーファンド/ファンド・オブ・ファンズ |
為替ヘッジ | あり/なし |
対象インデックス | 日経225/TOPIX/その他 |
特殊型 | ブル・ベア型/条件付運用型/ロング・ショート型/ 絶対収益追求型/その他 |
商品分類や属性区分における投資対象による分類は、次のような基準で分類される。ここでは、制度上の分類で解説した「単位型・追加型」による分類、「投資形態(ファミリーファンド、ファンド・オブ・ファンズ)」による分類を除く6つの分類方法についてみていこう。
(1)投資対象地域による投資信託の商品分類と属性区分
商品分類では、主にどの地域の資産に投資して収益を得るかによって、「国内」「海外」「内外」の3つに分類される。属性区分ではさらに細かく、10の投資対象地域に分類される。
商品分類 | 主な収益源(投資対象地域) | 属性区分 |
国内 | 国内の資産 | 日本 |
海外 | 海外の資産 | グローバル/北米/欧州/アジア/ オセアニア/中南米/アフリカ/ 中近東(中東)/エマージング |
内外 | 国内および海外の資産 | グローバル |
世界中に投資する商品は「グローバル」、主に新興国に投資する商品は「エマージング」に分類される。
(2)投資対象資産による投資信託の商品分類と属性区分
商品分類では、主にどんな資産に投資して収益を得るかによって、「株式」「債券」「不動産投信」「その他資産」「資産複合」の5つに分類される。属性区分では、「株式」「債券」「資産複合」の商品分類がさらに細かく分類される。
商品分類 | 主な収益源(投資対象資産) | 属性区分 |
株式 | 株式 | 一般/大型株/中小型株(※1) |
債券 | 債券 | 一般/公債/社債/その他債券/ クレジット属性 |
不動産投信 | 不動産投資信託・不動産投資法人 | 不動産投信 |
その他資産 | 上記以外の資産(※2) | その他資産(※2) |
資産複合 | 上記の複数の資産(※3) | 資産配分固定型/資産配分変更型 (※3) |
資産複合に分類される商品のうち、約款に投資対象になる資産の組み入れ比率を固定する旨の記載がある商品は「資産配分固定型」という。また組み入れ比率の変更ができる旨の記載がある商品または、資産配分を固定する旨の記載がない商品は「資産配分変更型」に分類される。
資産配分変更型の投資信託のうち、運用期間の経過とともに積極的な運用から安定的(保守的)な運用に資産配分が変更されるものは、特に「ターゲット・イヤー型」に分類される。
実際には、投資対象地域と投資対象資産の組み合わせにより、例えば日本の株式を投資対象とする追加型の投資信託は、「追加型投信/国内/株式」のように分類される。
(3)独立区分(MMF・MRF・ETF)の商品分類
MMF(マネー・マネジメント・ファンド)、MRF(マネー・リザーブ・ファンド)、ETF(上場投資信託)に該当する商品は、それぞれ独立して分類される。
・MMF(Money Management Fund)……安全性の高い公社債や社債、CD(譲渡性預金)、CP(コマーシャルペーパー)などの短期金融商品で運用される公社債投資信託。リスクを抑え安定した運用を行うために利用される。
・MRF(Money Reserve Fund)……証券総合口座において、銀行の普通預金のような形で投資資金の保有や、投資商品の売買代金決済に利用される公社債投資信託。安全性の高い公社債などで運用される。
・ETF(Exchange Traded Fund・上場投資信託)……株式市場に上場し、株式と同じように、立会時間中はいつでも売買できる投資信託。株価指数などに連動する運用成果を目指すインデックス投資を、コストを抑えながら行うのに適している。
(4)補足分類(運用方針による分類)の商品分類と属性区分
商品分類では、特定の運用方針により運用される商品は、「インデックス型」と「特殊型」に分類されて表示される。属性区分では、それぞれの運用方針によってさらに細かく分類される。
商品分類 | 分類基準 | 属性区分 |
インデックス型 | 指数の変動と連動する 運用成果をめざすもの |
日経225/TOPIX/その他 |
特殊型 | 投資者に対して、注意喚起が 必要と思われる特殊な仕組み・ 運用手法を用いるもの |
ブル・ベア型/条件付運用型/ ロング・ショート型/ 絶対収益追求型/その他(※4) |
特殊な運用手法が用いられる投資信託については、高い収益や市況によらない収益が期待できる反面、リスクや運用コストが高くなりやすいため注意が必要だ。
(5)決算頻度(分配頻度)による投資信託の分類、属性区分
投資信託は決算頻度によって、「年1回(年1回決算型)」「年12回(毎月決算型)」のように分類できる。投資家に収益が分配(・配当)される投資信託の場合、決算ごとに分配が行われるのが一般的だ。
分配は運用資産を切り崩して行うため、頻繁に分配を行うほど投資効率は下がりやすい。長期的な資産形成をめざすのであれば、一般的に決算頻度(分配頻度)の少ない商品、分配を行わない「無分配型」の商品が有利といえる。
分配を行う商品であっても、分配金が自動的に再投資される「再投資型(累積投資型)」の商品であれば、複利運用の効果を得られるため、投資効率を上げられる。ただし、分配金が支払われるタイミングで利益部分に課税されるため、無分配型に比べ投資効率は下がる。
(6)為替ヘッジの有無による投資信託の分類、属性区分
外貨建ての資産に投資する投資信託は、為替ヘッジの有無によって「為替ヘッジあり」「為替ヘッジなし」のいずれかに分類できる。
外貨建て資産への投資では、為替の変動が収益に影響する。為替ヘッジとは、この為替変動リスクを為替先物や為替オプション取引によって回避することをいう。為替ヘッジには、通常日本と投資対象となる通貨を発行する国の金利差に相当するコストが必要になる。
為替ヘッジあり | 為替変動による収益(基準価額)への影響を抑えられる。 ただし、為替ヘッジにかかるコストは収益にマイナスとなる。 |
為替ヘッジなし | 為替変動が収益(基準価格)に直接影響する。 |
為替ヘッジには、円高になった場合の損失を回避できるメリットがある反面、ヘッジ取引にかかるコスト負担や、円安になった場合の利益を得られないというデメリットもある。外貨建て資産に投資して保有する通貨の分散効果を得たいのであれば、為替ヘッジなしの商品を選ぶ必要がある。
投資信託の商品分類・属性区分は目論見書で確認できる
商品分類と属性区分は、投資信託の説明書である「交付目論見書」で確認できる。
3.投資対象を絞り込むには商品検索機能(スクリーニング機能)を利用しよう
投資信託の種類を理解できても、すべての商品について目論見書や運用報告書を確認しながら投資対象を絞り込んでいくのは現実的ではない。このような場合は、各証券会社や投資情報会社の「モーニングスター」などが提供する、商品検索機能(スクリーニング機能)を利用すると便利だ。
商品検索(スクリーニング)を利用すれば、入力した条件を満たす商品を簡単に絞り込める。絞り込まれた商品について、目論見書や運用報告書などでより詳しく内容を比較していけば、投資する商品をより効率的に選ぶことができる。ツールと知識の両方を活用していくことが大切だ。
執筆・竹国弘城(ファイナンシャルプランナー)
証券会社、保険代理店での勤務を経て、ファイナンシャルプランナーとして独立。より多くの方がお金について自ら考え行動できるよう、お金に関するコンサルティング業務や執筆業務などを行う。RAPPORT Consulting Office 代表。1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP®︎
【関連記事 MONEY TIMES】
つみたてNISA(積立NISA)の口座開設を比較 SBI、楽天など
つみたてNISA(積立NISA)の銘柄で最強な投資信託はどれ?
投資信託は長期投資で運用すべき4つの理由
投資信託における本当の「利回り」とは 儲かる度合いの正確な調べ方
投資信託の約定日とは?申込日・受渡日との違いや注意すべきケースを解説