【厳選】オーナーズ倶楽部編集部 おすすめ書籍を紹介
不動産オーナー、そして将来オーナーになる方にとって、日々の賃貸経営について、そして次の不動産投資については、いつも情報を求め、学びを深めていることでしょう。そこで、オーナーズ編集部では、多くの書籍の中から、良質な1冊を厳選し、その抜粋を紹介してまいります。
著者 広瀬智也
キャッシュフローを良くする5つのポイント
キャッシュフローの公式を理解したら、次は、いかにキャッシュフローを良くするかを考えてみましょう。つまり、「税引き後の利益 返済元金+減価償却費」の結果、残るものを最大にするということです。
したがってキャッシュフローを良くするためのポイントは、次の5点です。
①売り上げを多くする
②経費を抑える
③所得税・法人税の納税額を抑える
④減価償却費を多く取る
⑤返済元本を少なくする
まず考えなければならないのは「売り上げを伸ばす」こと。これができれば一番手っ取り早いですが、とはいえ、何もしないで家賃だけを値上げしていたら空室が埋まらないのは目に見えています。リフォームなり何なりで物件の価値を上げる必要があります。その際は、かかったリフォーム費用が、一括で経費化できるのか、資産計上をして減価償却をしていかなければならないのか、よく税理士に確認しながら進めていく必要があります。
そのあたりが理解できていないと、
リフォーム代金を一括して経費で落とせなかった
↓
支出が増えて当然、キャッシュフローが悪くなる……
というリスクがあります。この経費化というのはキャッシュフローを良くしていく上で、一つのポイントとなります。
①②は、第5章の「入居率アップ」や第8章の「節税大作戦」などを参考にしていただくとして、ここでは③以降を見ていきましょう。
所得税・法人税の納税額を抑える
③については個人で収入の多い人は法人の活用を検討すべきです。具体的には、管理会社として法人を設立し、そこに家賃収入の一部を管理費(例えば %)として取らせ、節税を図っていく方法です。さらに新たに物件を取得する場合には法人で取得したほうがよいということになります。
この点を考えると、同じ物件を買うにしても、年収によって税率が異なるため、キャッシュフローが変わっていきます。
「累進課税」といって、所得が多ければ多いほど税率は上がりますよね。
例えば、課税所得が1800万円を超える人は、所得税と住民税を足して50%もの高い税率がかかります。そういう人が、年に300万円の不動産所得を得た場合は、やはり300万円のうちの半分が税金で持っていかれてしまうことになります。
一方、課税所得500万円の人が、同じように年に300万円の不動産所得を得た場合は、300万円のうちの3分の1(33%)の税金しかかかりません。つまり、不動産所得の300万円は同じでも、課税所得が1800万円の人は税率が50%のため、500万円の人よりも約1.5倍の税金がかかるというわけです。
ですから年収が高い人は、税金で支払う額が多くなるのでよく注意しましょうというこ とと、できれば法人を作ることをお勧めします。法人だと最高税率が約34%ですし、家族に給料を支払うことで所得の分散が図れますから、個人で持っているよりもお得なケースが多いのです。
▽「所得税+住民税」の速算表
税額=課税所得金額×税率=控除額
課税される所得金額 | 所得税率+住民税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 15% | - |
195万円を超え330万円以下 | 20% | 9万7,500円 |
330万円を超え695万円以下 | 30% | 42万7,500円 |
695万円を超え900万円以下 | 33% | 63万6,000円 |
900万円を超え1,800万円以下 | 43% | 153万6,000円 |
1,800万円を超え4,000万円以下 | 50% | 279万6,000円 |
4,000万円超 | 55% | 479万6,000円 |
※「住民税率」は全国一律で10%
経費として認められる「減価償却費」
減価償却費をいかに多く取るか。これも意外と重要視する人は少ないのですが、とても大事なポイントです。
なぜなら、実際には毎月払っているわけでもないのに経費として認められるお金なので、うまく経営戦略に組み込むことでキャッシュフローを高めることができるからです。また 銀行も確定申告書や決算書を見るときに注視するポイントの一つです。
以下、この減価償却費について詳しく説明しましょう。
減価償却費とは、「建物の代金を耐用年数 で割った金額をその経費として計上する制度」のことです。建物は、構造・用途によって「法定耐用年数」というものが決められていて、新築の居住用建物の場合、木造で22年、鉄骨造は34年、RC造では47年です。
中古の建物の耐用年数の計算は下の図の通りです。法定耐用年数を過ぎている物件の償却期間は、法定耐用年数に0.2を掛けて計算します。木造で22年が過ぎた物件を購入した場合は、「22×0.2=4.4」、つまり建物の代金を約4年間で償却できるのです。私自身、このような耐用年数を過ぎた木造物件も保有していますが、減価償却費が取れることで、そのキャッシュフローはかなり優秀です。
一方、RC造の場合は、新築の償却期間は47年ですから、薄まってしまって、1年あたりの減価償却費の点で見るとあまりうまみがありません。
しかし、木造物件はキャッシュフローで見ると得ですが、耐用年数が短いため中古の建物だと銀行の融資が受けづらかったり、融資期間が短くなったりするというデメリットがあります。そのため頭金が多く必要になってしまうというわけです。ローンにあまり頼らず、頭金を多く用意したりキャッシュで買ってしまえたりする人ならば、減価償却費を多く取れるような物件を 購入していくという戦略も考えられます。
▽建物の耐用年数の一覧
構造 | 法定耐用年数 | 価格 | 利回り | 銀行融資の受けやすさ |
---|---|---|---|---|
木造 | △22年 | ◎ | ◎ | △ |
重量鉄骨造 | ○34年 | ○ | ○ | ○ |
RC(鉄筋コンクリート)造 | ◎47年 | △ | △ | ◎ |
銀行からの借入額を多くすべきか
余談になりますが、銀行からの借入額を多くするかどうかは、キャッシュフロー以外にも、その人の戦略として、安定性をどれだけ追い求めるかどうかにもよります。頭金を多く入れれば毎月の返済が少なくなるので、キャッシュフローがマイナスになるリスクは少ないわけです。
また、資金不足になったら銀行がお金を貸してくれるかというとそうではありません。こうした後ろ向きの融資には消極的です。
一般に借りられるのは、物件を買うとき、建物を建てるとき、改装するときです。ですから、借りられるときには多めに借りておいて、キャッシュを別に置いておくというのも、立派な将来のリスク対策です。
さて、木造の物件は一般的に銀行の評価が低くて融資が受けづらいですが、キャッシュフローの面ではオイシイわけです。逆にRC造の物件は毎年の減価償却が木造と比べると取りにくく、キャッシュフローのうまみはありませんが、銀行の評価は高くて融資が受けやすい。こうした特性を把握した上で、自分の経営戦略にうまく組み込んでいくことが重要なのです。
新築の場合にも、このバランスをよく考えるといいでしょう。何でもRC造が良い、というものではないのです。
木造は、建築コストが安くて、減価償却費が取れてキャッシュフローが良い。でも銀行の評価が低く、居住用年数の 年を超える借入期間を設定するのは一般的に難しくなります(ただし、新築の場合などは耐用年数の22年を超えて、例えば30年で融資を受けられるケースもあります)。一方、RC造は銀行の評価が高く、25年とか30年といった長期の借入期間を設定しやすくなります。また木造より家賃も高く取れます。ただ、建築コストは割高に、減価償却費は取りにくくなります。以上のようなことを踏まえて、建築時の構造を決める必要があります。
返済元本を少なくする
返済期間も、毎年のキャッシュフローに影響を与える要因です。
例えば銀行から1億円を借りたとします。返済を元金均等方式として、借入期間を15年とすると、年間の返済元金は666万円(1億÷15年)、20年とすると年間の返済元金は500万円(1億÷20年)となり、返済期間を長くすれば、その分、毎年のキャッシュフローが良くなります。
また借入方法も元利均等と元金均等とで差が出てきます。元利均等は当初は、「元金の返済額が少ない=キャッシュフローが良い」のですが、あとあと「返済元金が増える=キャッシュフローが悪い」ということになります。
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(提供:オーナーズ倶楽部)
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