勝本竜二社長
勝本竜二社長

 店舗で複数の保険会社の保健商品を比較・検討することができる、いわゆる保険ショップを開業した草分け的存在が、アイリックコーポレーション(7325)だ。1999年に「生命保険情報ステーション」(現・保険クリニック)の営業を始め、現在は全国に、直営・FC併せて225店舗を展開する。独自開発のシステムが強みで、前期で7年連続増収と順調な成長を続けている。

勝本竜二社長
Profile◉勝本竜二(かつもと・りゅうじ)社長
石川県出身。1982年共栄信用金庫(現・のと共栄信用金庫)入庫。87年アメリカンライフインシュアランスカンパニー(現・メットライフ生命保険株式会社)入社。90年4月ファイナンシュアランス設立、取締役。95年7月アイリックコーポレーションを設立、取締役を経て代表取締役社長に就任(現任)。

保険販売事業が
売上の6割強

 2020年6月期の売上高は42億円、営業利益、経常利益は共に5億円、当期純利益は3億円だ。セグメントは、保険販売事業、ソリューション事業、システム事業で、保険販売事業が売上の60%強を占める。残りは、30%弱がソリューション事業、10%がシステム事業で構成される。

 主力の保険販売事業の売上のうち8割は保険ショップによるもので、消費者が保険に加入すると、保険会社から手数料が入る。他には、法人向け保険販売が1割強と、神奈川を中心とした法人向け損保の売上が1割弱ある。

99年保険ショップ
第一号店を開業

 1995年設立の同社は、2年後に生命保険媒介業並びに損害保険代理業として営業を開始。99年には文京区本郷に現・保険クリニックの前身となる店舗をオープンした。当時はまだ「保険を比べる」という概念がない時代。同社のショップは業界の常識を覆すものであり、厳しいバッシングも経験したという。

「現在保険ショップは全国に2500あると言われますが、チェーン第一号店ということでは、当社が一番早かったということになります。当時は、複数の保険会社の比較・提案は、法人企業や富裕層向けにしかやっていなかった時代です。それを一般の個人にも落とし込んでいこうというのが発想のスタートでしたが、『保険業法違反では?』という電話がかかってきたりしたこともありました」(勝本竜二社長)

 しかし、保険ショップの存在は消費者に受け入れられることとなり、その後同社では直営店を次々とオープンさせていった。現在は全国で44の直営店と181のFC店を展開している(※2020年6月時点)

アイリックコーポレーション,ック
▲同社ユーカリが丘店店舗

独自開発した各種保険の
比較・分析システム

 同社が同業他社に比べアドバンテージをもっているのは、システム部分だ。独自開発による保険分析・検索システム「保険IQシステム」は、保険証券からデータを入力すると、加入中の保険の保障内容に関する分析シートを即時作成できる。

 また、加入を検討したい保険商品のデータは、同社オリジナルの比較表を用いて提案プランを提示する。あらかじめ、利用者への提供・開示について承諾を得た上で全保険会社から情報を取得、システムに入力しておく。これにより、本来は形式や記載内容がバラバラな保険商品を、ひと目で比較可能な同一フォームに落としこむことが可能になる。

 なお、システム連携をしている保険会社の商品の場合、ワンストップでの申し込みも可能だ。

OCR技術でリード
非定型が得意分野

 同社が現在、成長ドライバーとして位置付けている事業は二つある。

 一つ目、ソリューション事業のAS部門では、金融機関や保険代理店向けに、保険ナビゲーションシステム「AS─BOX」と、生命保険の現状把握分析や検索提案が行える「ASシステム」を販売している。「ASシステム」は、前述の「保険IQシステム」の汎用版だ。

 また、同部門では、保険会社へのフィードバックをしている点も特徴的だ。消費者が長年同じ保険に入り続けていることはよくあるが、他社の保険商品のデータを蓄積し続けている保険会社は少ない。そのため同社は、数十年分にわたる保険商品のデータをビッグデータ化。保険会社の分析用に提供するケースはかなり増えているのだという。

 続いて二つ目、システム事業は、2020年6月期時点で前年比78%増と、最も伸びている部門だ。強みは、文字を読み取りPC利用可能なデジタル文字コードに変換するOCR技術。これにより、店舗でのデータ入力の際、保険証券をスマホ等で撮影するだけで、保険内容をビジュアル化した資料を作成できる。同社のOCR技術は、中でも「非定型帳票」、つまり、型式が決まっていない書類でもデータ化できる点が特長だ。

「非定型に強いという点については、かなり自信があります。各社どんどん技術アップをされてきていますが、先行してきた有利さはあると思っています」(同氏)

 当初は保険証券から始めたAI─OCRだが、その技術的優位性を活かし、他の非定型帳票、例えば健康診断書、診療明細といった帳票をソリューション化して展開を拡大している。さらに同社では、今後AI─OCRは保険・金融業界だけでなく他のあらゆる業界に発展していくソリューションになっていくと考えているという。

2023年6月期で売上高70億円へ

 同社では、2020年6月に発表した成長戦略において、直営集客4万人(※WEB相談8000人を含む)を掲げている。今後必須となるのが、デジタル化を中心とした事務効率を高めるための工夫だ。同社では既に「DXプロジェクト」をスタート。事務効率25%削減をテーマとし、サービスの質を落とすことなく相談時間だけを短縮するなど、OCRの技術の活用も含めた効率化の道を探っている。

 また、同年5月には、専任コンサルタントが対応する「オンライン保険相談」も開始した。

「保険販売事業に関しては、店舗数は3年後300超、『保険クリニック』の認知度は、現在の7%から3年後に26%にまで高めていきたいと考えています。全体では、2023年6月期に、売上高70億円、営業利益10億円を目指しています」(同氏)(提供=青潮出版株式会社