ウッドフレンズは、名古屋に本社を置く不動産の開発・販売を手掛ける住宅ディべロッパーだ。主力事業の戸建分譲住宅では、地元東海地区の国産材を活用した住宅で、名古屋を中心に愛知県でのシェアを拡大している。近年、名古屋圏の住宅市場は他地域からの大手住宅会社の参入があり競争が激化している。同社の戦略について2019年社長に就任した林知秀社長に聞いた。
地元の国産材を活かし
地域活性化に貢献
ウッドフレンズの2020年5月期の売上高は376億円。内訳は、戸建分譲住宅の開発・販売及び住宅建設資材の製造・販売を手がける住宅事業が334億円と売上の9割を占める。その他にゴルフ場、ホテル、公共施設の運営と施設管理を手がける余暇事業、収益型不動産の開発等を行う都市事業などの事業セグメントがある。
主力の戸建分譲住宅では、地域産の国産材を活かした木造住宅で他社と差別化を図っている。岐阜県養老郡に名古屋ドーム1個分の敷地面積の工場を構え、原木の買付から、集成材・プレカットの加工生産、販売まで自社で手掛ける製販一環型を整えている。18年には第2工場、20年に第3工場を取得し、稼働に向けて準備を進めている。
前期の戸建住宅の販売戸数は945戸。本社のある名古屋近郊をメインに愛知県に特化しシェアを拡大している。地元にこだわる理由を林社長は次のように話す。
「我々はSDGsの取り組みとして、循環型産業モデルを目指しています。住宅を作るだけでなく、林業や山を衰退しないようにするためにも、一定のボリュームで国産材を積極的に利用し、地域経済に還元してお客様に喜んでいただく。地元企業として、地域活性化の役割を果たすことも我々の方向性の一つです」(林知秀社長)
市場競争が激化、
建材開発で差別化
現在名古屋圏の住宅市場は、東京など他地域からの新規参入があり競争が激化している。年8000戸が適正とされる愛知県の分譲戸建のパイに対して、現在完成在庫が6000戸程あるという。
「完成在庫の適正戸数3300〜3400戸に対し6000戸もある中で戦っているわけですから、競争は非常に厳しいです」(同氏)
林社長は、2006年にウッドフレンズに入社。当時販売していた分譲住宅は、オートクチュールを謳い、アッパーミドル層をターゲットにしていた。価格帯も4300万円程だった。
「しかし住宅市場の寡占化が進む中、木造で考えた時、生き残りをかけるとしたらオートクチュールでうまくビジネスするのが難しい。8000戸の市場のうち1000戸を取りにいくとなった時、ターゲットも価格設定も変化しました」(同氏)
現在の戸建の販売価格は、土地40坪・建物32坪で平均3400万円。規格化・工業化を進め、品質やコストを追求している。
「例えば大手住宅ビルダーの飯田グループさんと同じ商品を作っても、戸数優位性により原価で比べたら負けてしまいます。そこで当社では、規格化・工業化による生産優位性と付加価値戦略として、自社オリジナルの内装材や外装材を提案しています」(同氏)
工場インフラを生かした
建材開発と規格型住宅
2021年5月期の連結業績予想は、売上高500億円、営業利益13億円を目指す。同社が成長戦略として注力している一つが、国産材を活用した建材の開発だ。19年自社で開発し販売を開始したのが、木製外壁材の「ウォールウッド」。従来外壁で木目調のものはプリントが多く使われているが、同社では地元の国産杉を活用。外壁に使用できる高耐久性塗料を選定し子会社のフォレストノート岐阜工場で製造をしている。また現在は、工場にも投資をし、新たに木製サッシの開発にも着手している。
今期の戸建販売の目標数は、前期を上回る1180戸。そのために進めているのが「stamps(smart technology of architectural mass production system)」の積極展開だ。「stamps」は、価格帯のグレードを3つに分けモデル化した規格型木造住宅。
「愛知県の戸建注文住宅の市場が2000戸あります。そこをstampsでシェア獲得を目指します。規格化して生産性を高め、且つ工場のインフラを活かした商品開発で明快に差別化をし、住宅事業で一定の量を押していきます」(同氏)
建材ECを強化、
3年後までに2000戸
林社長がもう一つ注力しているのが、建材ECだ。自社のECサイト「ビルナカ材木屋」では、国産材を使用した構造材や材木、プレカット、無垢の内装材、ウォールウッドなどの外装材や家具が販売されている。前期はプレカットを外販で180戸程販売している。
「ECでは、開発中のサッシも入れて、プレカットとセットにしたりと、規格型のモデルも外販していきたいです。中期的には大きな成長を見込んでいますが、当面は50億円程の売り上げを目指します」(同氏)
今後は3年後を目安に戸建住宅2000戸を目指す。目標戸数を達成し、ECや建材開発などを含めたそれぞれの事業でシェアを伸ばしていけば「売上高1000億円も視野に入ります」と林社長は先を見据えている。
「住宅事業で今期勝ち、まず売上高500億円を目指します。新型コロナの影響も今期出てきますが、それでもなんとかここまで持って行き、その資金を建材開発など他事業に投資をするという計画を立てています」(同氏)(提供=青潮出版株式会社)