経済,情勢
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強さ際立つドイツ経済、今年後半にはコロナ禍前まで回復も

SMBC日興証券 チーフマーケットエコノミスト / 丸山 義正
週刊金融財政事情 2021年1月25日号

 日本と同様、ユーロ圏も新型コロナウイルスの感染再拡大に苦しめられている。オックスフォード大学の取りまとめによると、ユーロ圏の新型コロナ新規感染者数は昨年11月をピークに減少しているものの、夏の低位には戻っていない。ワクチン接種は始まったばかりであり、ウィズコロナを前提とした経済活動が求められる。ドイツは感染抑制において優等生だったが、11月以降は人口100万人当たりの新規感染者数が200人を超える。フランスやイタリアと大きく変わらない水準だ。

 ただし、経済活動に関してはドイツの相対的な強さが際立つ。2020年12月時点で、感染再拡大を映じ、ドイツ以外のユーロ圏3大国の企業景況感は「中立」の50を下回った。IHSマークイット算出のコンポジットPMI(購買担当者景況感指数総合)はフランスが49.5、イタリアは43.0、スペインは48.7だった。対して、ドイツは52.0と中立超を確保する。

 ドイツの強さの背景として次の四つを指摘できる。第一に製造業の強さだ。感染再拡大に反して、自動車セクターや半導体セクターを中心に、世界的に製造業が好調だ。製造業の強さは、ユーロ圏で随一の製造業大国であるドイツに大きな恩恵をもたらしている。

 第二に中国経済の強さだ。中国経済はコロナ禍からいち早く持ち直し、文字どおりのV字回復を果たした。中国は製造業という点でドイツと同様に恩恵を受け、20年終盤そして21年初めも堅調だ。そうした中国向け輸出が、設備投資向けの資本財を中心にドイツで伸び、景気を下支えしている。

 第三に観光依存度の低さだ。コロナ禍は各国の観光産業に壊滅的な悪影響をもたらした。ドイツも例外ではない。しかし、ドイツの名目GDPに占める観光業のシェアはユーロ圏の中で相対的に低く、悪影響が抑制されている。19年時点で観光産業のシェアはスペインで14.3%、イタリアで13.0%に達したが、ドイツは9.1%にとどまっている。

 第四に財政余力が挙げられる。ドイツは緊縮財政の印象が強いが、コロナ禍を受けて大胆な財政拡張に踏み切った。国際通貨基金(IMF)の取りまとめによると、ドイツが20年第3四半期までに講じた歳出拡大および歳入先送りの規模は名目GDP比で8.3%に上り、フランスの5.2%、イタリアの4.9%、スペインの3.5%を大きく上回った(図表)。相対的に健全な財政状況により、感染再拡大への備えも整っている。

 以上を踏まえ、筆者はドイツ経済が21年10~12月期に、ユーロ圏内でもいち早くコロナ禍前の水準に回復すると予想する。フランスは22年、イタリアは23年、スペインは24年以降に回復する見通しだ。

ドイツ経済,コロナ禍
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(提供:きんざいOnlineより)