ソフトウェアのテスト専門会社として、虎視眈々とシェア拡大を狙うバルテス。前編では、同社の田中社長に事業の詳細や業界の状況、独自の強みなどについて、金融アナリストの三井智映子さんがお話を伺いました。後編でも引き続き三井さんによる田中社長のインタビューをお伝えします(※インタビューでは、撮影時以外のマスク装着やソーシャルディスタンスの確保など新型コロナウイルスの感染防止に対する配慮を行っています)。

what’s next#5〜バルテス
(画像=松正義、ZUU online)

識者プロフィール

田中真史 SHINJI TANAKA
バルテス代表取締役社長
1962年、大阪府生まれ。高校卒業後、中小ソフトハウスに就職して4年間システムエンジニア・プログラマ―として従事する。退職後、フリーエンジニアとして活動。1990年にソフト開発会社を設立し、代表取締役に就任。約15年間の経営の末、後進に事業を譲渡。ソフトウェアテストのプロ集団の必要性を実感し、2004年にバルテスを設立、代表取締役社長に就任した。2019年5月、令和第一号となる東証マザー上場を達成し、順調に事業を拡大させている。
三井智映子 CHIEKO MITSUI

金融アナリスト
北海道小樽市出身。NHK教育「イタリア語会話」でデビュー。2011年東京にはモーターショーにてMCデビューを果たす。2014年1月に「五木ひろし特別公演」で八重次役を務めたほか、数々の番組に出演。2012年10月からフィスコリサーチレポーターとしてYahoo!ファイナンスで株価予想などを行うほか、テレビ、雑誌、Webなど活動の場を広げた。2013年に『最強アナリスト軍団に学ぶ ゼロからはじめる株式投資入門 』(講談社)を出版。2020年に独立し、解説投資の記事執筆やセミナー講師、動画配信( https://www.youtube.com/c/EventsIR/videos )などに従事。わかりやすい初心者向けの投資解説が武器。ツイッター@chiekomitsui、ブログ https://ameblo.jp/mitsui-chieko/

フルオンライン採用で内定承諾率167パーセントを達成

三井 現在はやはり新型コロナウイルスの影響について触れざるを得ません。御社はどのような影響を受けましたか?

田中 新規のプロジェクトが一時的にストップしたり、こちらも一時的ですがビジネスパートナーが減ったりするなど、やはり影響は少なからずありました。決してプラスに働いてはいませんが、マイナスは最小限に抑えられていると思います。昨年4月の緊急事態宣言後、すぐに在宅ワークの体制を整えましたが、在宅でも生産性をあまり落とさずにできることが実証されました。営業活動もオンラインでうまくやっていると思います。

三井 転んでもただでは起きないといいますか、コロナ禍における人材確保に向けて「フルオンライン採用」、つまりオンラインで採用が全て完結する方法を採ったそうですね。

田中 数年前から、関西や九州では二次面接までオンラインを試してはいたのですが、最後の部分まで全てオンラインというのは初めての試みだったので、うまくいくか不安はありました。ただ、上々の結果を得ることができたと思います。

三井 フルオンラインにした結果、新卒採用の内定承諾率は前年比で167パーセントだったとか。フルオンラインのほうが承諾率が高いというのは驚きです。

田中 フルオンライン採用のメリットは、何と言っても全国から広く人材を集められる点です。学生としても、移動のコストや時間がかからないのはメリットでしょう。もちろん、オンラインと対面ではどうしても多少の印象のズレは出てきますが、そうした部分もこのやり方が浸透すれば慣れてくると思います。

三井 フルオンラインにした理由はなんですか?

田中 ソフトウェア業界はエンジニア不足が顕著で、人材の確保が最優先課題のひとつになっています。コロナ禍では、地方の学生が東京に出てきて面接を受けるのは困難がともなうので思い切ってやってみようと。人材の確保は企業の成長の源泉ですしね。おかげさまで、計画を上回る人材が確保できました。

コロナ以前から、独自の実践型カリキュラムを作り、約2カ月で即戦力として現場に出せるような体制を整えていました。それをコロナ禍でオンラインで実施可能にして、いまでは未経験の社員から中途採用に至るまで社員教育は全てオンラインでやっています。この体制ができたのも非常に大きいと思います。

三井 コロナ禍では思うような人材確保が非常に難しいと思いますが、思い切った手法で成功されたのは素晴らしいですね。もうひとつ、制度面でどうしても伺いたいことがあったのですが、御社は男性の育休取得が増えていると聞いています。

田中 以前から育休制度の設計はしていましたが、やはり日本の企業文化と言いますか、そもそも制度を活用する社員が少なかったんです。次第に女性社員による利用が増え、それに男性社員も続いた感じですね。最初は1週間や2週間など短い期間の利用が多かったのですが、こちらも徐々に1カ月、2カ月と伸びています。育休制度だけでなく、私としては新しいことへのチャレンジに反対する理由は何もありません。何事もチャレンジして、問題点があればそこを修正していけばいいんです。社員にはこれからも新しいことにドンドンチャレンジしてもらえればいいと思いますね。

三井 育休制度が充実しているのは、女性の立場からするとすごく魅力的です。トップである社長がそう明言していれば、社員側のやる気も出ますね!

what’s next#5〜バルテス
(撮影=末松正義)

「バルテス標準」の確立に向けた施策を展開

三井 前期(2020年3月期)の業績は、その前の期と比べて売上高が48.7%増、経常利益は72.6%増、純利益は51.5%増と好調でしたが、今期の進捗などはいかがでしょうか。