米国では株主還元意識が強く、日本に比べて株式配当利回りが高い傾向にある。そのため配当を目的に米国株に投資する投資家も少なくない。ここでは米国株の高配当銘柄の配当支払回数や利回り、該当企業概要など紹介。今まで投資対象は日本株のみという人も、これを機に米国株投資を検討してみてほしい。

1,米国株の配当の3つの特徴――配当回数、連続増配、配当利回りの高さ

米国では「株式会社は株主のもの」という意識が強く、利益の株主還元策として配当を重視している企業が多く見られる。こうした米国株の特徴でも特に際立った3つの特徴を挙げていきたい。

特徴1,配当が年4回配の企業が多い

米国企業には日本企業のような株主優待制度はないものの、四半期配当、つまり配当金の支払いが年4回ある企業が圧倒的に多い。

例)世界的に有名な米国企業の配当
アップル ……例年2月、5月、8月、11月の年4回
マクドナルド … …3月、6月、9月、12月の年4回
ペプシコ ……1月、3月、6月、9月の年4回

日本では配当は年2回あるいは年1回の企業が大半です。

特徴2,日本ではあまりない長期連続増配銘柄が存在

米国は何十年も増配を継続している企業も多い。

例)米国の連続増配企業
プロクター・アンド・ギャンブル ……63年連続増配
スリーエム ……63年連続増配
コカ・コーラ ……57年連続増配
ジョンソン&ジョンソン ……57年連続増配

連続増配企業は、概して経営基盤が安定しており、成長性も期待できる優良企業であるため、配当を得るだけでなく投資対象としても魅力があります。

米国の取引所に上場している企業で流動性のある大型株から選ばれたS&P500の構成銘柄のうち、25年以上連続増配している銘柄で構成される株価指数は「S&P 500 Dividend Aristocrats Index」(S&P500配当貴族指数)と呼ばれる。その構成銘柄はインカムゲインを目的とした投資銘柄選定に大いに役立つ。

「S&P 500 Dividend Aristocrats Index」の構成銘柄の上位には、AT&Tやシスコ、プロクター・アンド・ギャンブルなどがあります。

特徴3,日経平均株価よりNYダウの配当利回りのほうが高め

個別銘柄の配当利回りだけでなく、日米の代表的な株価指数であるNYダウ工業平均株価と日経平均株価においても、NYダウの配当利回りのほうが高い。

例)2019年10月21日時点の指数ベースの配当利回り
NYダウ……2.39%(ブルームバーグ公表)
日経平均……1.96%(日経平均プロフィル公表)

相場によって多少の変動はあるものの、長期的に見ると、NYダウ配当利回りが日経平均配当利回りを上回る傾向が見られます。

2,世界的有名企業の配当利回りは?アップル、マイクロソフト、マクドナルドなど

米国企業の配当利回りがどれほどなのか、確認してみよう。

サンプルは、米国を代表する有名企業である以下5社だ。

  • アップル
  • マイクロソフト
  • マクドナルド
  • ジョンソン&ジョンソン
  • エクソン・モービル

上記5社の2021年4月20日終値ベースの予想配当利回りと、2021年12月期の1株当たり年間配当金総額(予想)も併せて紹介する。

ティッカー 会社名 配当利回り
(予想)
2021年12月期の
予想1株あたり
年間配当金総額
基準株価
(2021年5月24日終値)
APPL アップル 0.68% 0.865米ドル 127.10米ドル
MSFT マイクロソフト 0.9% 2.24米ドル 250.78米ドル
MCD マクドナルド 2.27% 5.16米ドル 231.91米ドル
JNJ ジョンソン&ジョンソン 2.45% 4.24米ドル 170.55米ドル
XOM エクソン・モービル 5.91% 3.48米ドル 59.61米ドル

米国を代表するアルファベット(グーグル)やアップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コムのような持続的成長企業は、株主還元に積極的ではないところが多い。 配当を実施している企業も配当性向は低く、配当利回りも低めだ。

事実、アルファベット、フェイスブック、アマゾン・ドット・コムは配当を実施しておらず、利益を自社の成長のために使っています。

米国の典型的な重厚長大企業であるエクソン・モービルは、株主還元を重視しているが株価が安いため、配当利回りが相対的に高いです。

3,米国株の高配当利回り銘柄ランキングTOP10!利回り7%以上も

米国株の中で、ダウ平均やナスダック100、S&P500を構成する中型株と大型株を対象に、高配当銘柄上位10社のランキングを見てみよう。予想配当利回りは、「2021年12月期の予想1株当たり年間配当金総額÷現地時間2021年5月24日終値」で算出した。

米国株の中大型優良銘柄高配当ランキング

順位 会社名
(ティッカー)
市場 予想配当
利回り(%)
2021年12月期の
予想1株当たり
配当金総額
(米ドル)
2021年5月24日
終値
1 アルトリア・グループ<MO> NYSE 7.10 3.44 50.32
2 ワンオーク<OKE> NYSE 7.02 3.74 54.14
3 AT&T<T> NYSE 6.95 2.08 29.75
4 ザ・ウィリアムズ・
カンパニーズ<WMB>
NYSE 6.22 1.64 26.51
5 エクソン・モービル <XOM> NYSE 5.91 3.48 59.61
6 キンダー・モルガン <KMI> NYSE 5.77 1.08 18.83
7 シェブロン<CVX> NYSE 5.09 5.36 105.60
8 バレロ・エナジー<VLO> NYSE 5.08 3.92 78.31
9 フィリップ・モリス・
インターナショナル <PM>
NYSE 5.01 4.80 98.16
10 インターナショナル・
ビジネス・マシーンズ<IBM>
NYSE 4.60 6.56 144.72
(※筆者作成)


配当利回りは1株当たりの配当金だけでなく、株価によっても変わります。

「米国株の中大型優良銘柄高配当ランキング」の上位には、2020年12月期の決算や財務状態、あるいは2021年12月期の業績不振による株価下落によって、予想配当利回りが高くなっている企業がある。

このような企業は、2021年12月期以降の配当の中止・減額が予想されるので、株式の購入を見送るか、業績に十分注意した上で購入しましょう。

長期的かつ安定的な配当の実施を前提にすると、米国株の高配当利回りの目安は7~8%程度と考えるべきでしょう。

第1位,アルトリア・グループ――連続増配する米国最大のたばこ製造・販売会社

アルトリア・グループ
米国最大のたばこを中心とした企業グループの持株会社。世界的に有名な「フィリップモリス」など、多数のブランドたばこを製造・販売する。

有煙たばこと無煙たばこのほか機械製葉巻なども取り扱っており、ワイン製造も手掛けている。

米国内で40%ものシェアを誇る世界有数のたばこブランド「マールボロ(Marlboro)」も同社が提供しています。米国では、たばこおよび無煙たばこで業界首位です。

2021年4月、バイデン政権がニコチン含有量規制強化へ踏み出しているとの報道があり、同社の株価は下落。今後の政策を注視しながら投資したい。

連続増配企業である同社は、2020年第3・第4四半期ともに増配しており、2020年12月期の年間配当実績も増配となりました。2021年12月期第1四半期の配当金も、2020年12月期の第3・4四半期と同額になることが決定しており、2021年12月期年間配当金は、前年を上回る3.44米ドルとなる見込みです。

第2位,ワンオーク――天然ガスを手掛ける米国エネルギー事業

ワンオーク

米国で天然ガスや液体ガスを扱うエネルギー事業を営む企業。子会社を通じ、収集から管理や保管、輸送まで一貫して行っている。

天然ガスや石油などのコモディティ関連銘柄は、需給バランスの変化によって株価が変動することが多く、2021年2月は天然ガスの在庫不足により天然ガスの価格が急騰した。

エネルギーセクターである同社の株を購入する際は、情勢をよく確認しましょう。

2021年12月期第1四半期はEPSが前年を上回り、天然ガスの需要も増加する見込みです。
2021年12月期年間配当金は、前年と同額の3.74米ドルになる予定です。

第3位,エー・ティー・アンド・ティー――米国無線通信業界で第2位

エー・ティー・アンド・ティ
通信関係の持株会社。通信やメディア、テクノロジー・サービスなどを提供する総合通信事業であり、最大の事業は売上高の約40%を占める無線通信。同社は、米国第2位の携帯電話会社としても知られている。

2021年4月は好調な動画配信サービスによって、株価が急騰した。

2021年5月には一部事業をディスカバリー社と統合することが報じられ、投資家の間で話題になりました。事実上、メディア事業からの撤退になります。

連続増配銘柄であったが、2021年12月期年間配当金は前年と同額を予想しています。

第4位,ザ・ウィリアムズ・カンパニーズ――米国を中心にエネルギーの中流事業を展開

ザ・ウィリアムズ・カンパニーズ
米国のエネルギー・インフラストラクチャー企業である。主な事業は天然ガスで、探鉱から輸送まで一貫して行っており、パイプラインにおけるインフラの所有・運営も手掛ける。

2021年12月期第1四半期は当期純利益とともに、財務キャッシュフローも増加しています。

2021年12月期は、1株当たりの利益やEBITDAが増加する見込みです。2021年12月期の年間配当金は、前年を上回る1.64米ドルを予定しています。

第5位,エクソン・モービル―世界中で事業を展開する大手総合石油・ガス会社

エクソン・モービル
世界各地で原油や天然ガスを探査・生産し、石油製品の精製まで行う石油最大手。世界各地で事業を展開している。

2020年12月期はすべての四半期で赤字となったが、2021年12月期第1四半期は黒字に転換。原油高騰が追い風となっているようだ。

1961年から運転しているノルウェーの製油所を閉鎖するとの報道もありました。

2020年12月期は総収益が伸び悩み通年で赤字決算となりましたが、年間配当実績は前年をキープ。2021年12月期の年間配当金も同額を予想しています。

第6位,キンダー・モルガン――北米最大の中流エネルギー会社の一角

キンダー・モルガン
エネルギーの中流サービス提供会社として天然ガスや原油、精製物、天然ガス液、二酸化炭素の輸送・加工・貯蔵を行っている。輸送に伴うパイプラインインフラや、保管用ターミナルも所有。

2020年2月に感染が拡大した新型コロナウイルスの影響で、工場や店舗は休業した。エネルギー需要が縮小したことで一時株価は大きく下げたが、現在は緩やかに回復している。

2020年12月期第1・第2四半期はともに赤字となりましたが、第3・第4四半期は黒字に転換。第4四半期の営業キャッシュフローは、第3四半期から約8億米ドル増加しています。2021年12月期第1四半期は営業利益、純利益ともに前年同期を大きく上回りました。

2021年12月期の年間配当金は前年より増え、1.08米ドルの予定です。

第7位,シェブロン――石油やガスを扱う米国大手エネルギー会社

米国を中心に世界各国で石油や天然ガスのエネルギー事業を展開。生産や製造のほか、独自のパイプラインを通じて販売も行っている。

2021年4月、同社が北海道ガスに液化天然ガスを納入することが決定し、2022年の運用開始に向けて動いている。

同月ミャンマーにおけるエネルギー権の保護を求めて米議員にロビー活動を行い、ミャンマーでのシェアを守る姿勢を見せました。

2020年12月期は売上高が伸び悩み赤字決算となったが、2021年12月期第1四半期は営業利益を伸ばし、黒字となりました。2021年12月期年間配当金は、前年より増配となる見込みです。

第8位,バレロ・エナジー――米国最大級の独立系石油・エタノール精製会社

バレロ・エナジー
米国最大級の石油およびエタノールを扱う独立系石油精製会社。米国やカナダなど計14ヵ所の石油精製所を運営しており、原油パイプラインや精製石油製品パイプライン、ターミナル、タンクなどの物流資産も所有している。

2021年5月には、さらにシェアを拡大するために工場の設営などを進めることを発表しました。

2021年12月期第1四半期は、売上高は増加したものの当期純利益は赤字が拡大。2021年年間配当金は、前年と同額の予想しています。

第9位,フィリップ・モリス・インターナショナル――アルトリアが運営するたばこメーカー

フィリップ・モリス・インターナショナル
日本でもなじみのある「パーラメント」や「ラーク」などのたばこを製造・販売する持株会社で、世界180ヵ国で事業を展開している。ランキング1位のアルトリアの傘下でもある。

「2050年までに紙巻きたばこの喫煙者が大幅に減る」という報道があったが、同社はいち早く代替品に切り替えてアイコス市場を拡大し、リードしている。

アルトリアと同じく、政府がニコチン含有量規制を検討しているとの報道の影響を受けました。今後の政策動向に注意しながら投資しましょう。

2021年12月期第1四半期は、当期純利益が前期を上回りました。2021年12月期年間配当金は、前年と同額となる見込みです。

第10位,インターナショナル・ビジネス・マシーンズ――米国大手のIT企業

インターナショナル・ビジネス・マシーンズ
世界でコンピューターソリューションを提供するIT企業。主に製品やソリューション、サービス、コンサルティングを提供している。

同社は2021年3月、特許権侵害で楽天を提訴。同社のライセンスを楽天が無断で使用していると主張し、大きな話題を呼びました。

4月に公表された2021年12月期第1四半期決算では、過去11四半期の中で最大の増収となったことがわかった。クラウド収益が順調に伸びている。

2021年12月期年間配当金は、前年を上回る6.56米ドルとなる見込みです

4,米国株投資の有名な戦略「ダウの犬」とは?

Q.米国株の特徴やランキングを見てきたが、どのようなポートフォリオを組めばよいのだろうか?
A.「Dogs of the Dow」(ダウの犬)と呼ばれる投資戦略を参考にしよう。

「Dogs of the Dow」(ダウの犬)どのような戦略か、簡単にそのフローを示そう。

・NYダウ工業株30種平均株価を構成する30銘柄の中から、高配当の10銘柄に投資する
・1年間購入した10銘柄を保有する
・1年後にその時点で配当利回りが高い10銘柄と入れ替える

ダウの犬を構成する銘柄はいずれも、世界でも指折りの優良な超大型株である上に、比較的株価が割安であることが多い。

最も注目すべきは、ダウの犬の平均配当利回りがNYダウの平均配当利回りを上回っていることです。

例)ダウの犬の平均配当利回り(「Dogs of the Dow」公式サイトの発表による)
2019年12月31日時点……3.90%、2020年5月5日時点……4.95%

NYダウの全構成銘柄の平均利回り
2019年12月31日時点……2.60%、2020年5月5日時点……3.17%

どちらの基準日においても、ダウの犬の配当利回りのほうが高いことがわかります。ダウの犬への投資は、効率的にリターンを得る手段だと考えていいでしょう。

2019年12月31日を基準とした「2020年ダウの犬」は、以下の10銘柄である。

「2020年ダウの犬」10銘柄

ティッカー 会社名 実績配当
利回り1
株価1
(2019/12/31)
実績配当
利回り2
株価2
(2020/5/5)
DOW ダウ 5.12% 54.73米ドル 8.39% 33.37米ドル
XOM エクソン・
モービル
4.99% 69.78米ドル 7.65% 44.83米ドル
IBM IBM 4.83% 134.04米ドル 5.25% 122.58米ドル
VZ ベライゾン 4.01% 61.40米ドル 4.29% 56.51米ドル
CVX シェブロン 3.95% 120.51米ドル 5.12% 92.89米ドル
PFE ファイザー 3.88% 39.18米ドル 3.74% 38.51米ドル
MMM 3M 3.26% 176.42米ドル 3.91% 147.43米ドル
WBA ウォルグリーン・
ブーツ・
アライアンス
3.10% 58.96米ドル 4.27% 42.02米ドル
CSCO シスコ 2.94% 47.61米ドル 3.33% 41.46米ドル
KO コカ・コーラ 2.89% 55.35米ドル 3.52% 45.40米ドル
2020年ダウの犬10社平均 3.90%   4.95%  
ダウ平均 2.60%   3.17%  
※実績配当利回り算出のための1株あたり配当金総額は、2019年の配当金合計額


5,米国株は長期保有でリターンに期待できる

「株式会社は株主のもの」という意識が強い米国では、日本に比べて高配当利回り銘柄や連続増配銘柄が多く、年4回配当が主流だ。

経営基盤が安定し、安定的あるいは継続的な増配も見込める優良銘柄を、さまざまな基準で選りすぐって長期的に投資する。そうすることで、10年後、20年後には配当金暮らしが実現するかもしれない。

執筆・近藤真理
証券会社の引受業務やビジネス系翻訳携わったのち、個人投資家として活動。現在は総合証券、ネット証券の両方を使いこなし、経済、金融、HR領域で多数の媒体で執筆中。2019年にフィナンシャルプランナーの資格取得。

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