国際ブランド付きのプリペイドカード「Kyash」はポイント2重取り・3重取りが可能な決済手段として注目を集めてきた。ここでは2021年2月10日の還元率変更後もお得に使えるのかを検証。チャージに適したおすすめのクレジットカードについても解説しよう。

1,Kyashとはどんなサービスか?

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(画像=Nattakorn/stock.adobe.com)

「Kyash」(キャッシュ)を一言で言うならポイントサービス付きのプリペイドカードとなる。まずはその仕組みと特徴から紹介しよう。

Kyashの審査

登録条件・審査などは特になく、保護者の同意があれば未成年でも作ることができる。

Kyashはどこで使えるか?

・VISA加盟店
「Kyash」はVISA加盟店であればクレジットカードとほぼ同様の形で支払いに使える。ただし、VISA加盟店であっても、ガソリンスタンドや一部の航空会社・ホテルなどでは使えず、また、公共料金や各種の月額・継続料金、各種の電子マネーやプリペイドカードへのチャージにも使えない。

・QUICPay+加盟店
Apple PayやGoogle Payにも登録可能で、その場合はQUICPay+(クイックペイプラス)加盟店でのタッチ決済が可能となる。「Kyash」が使えないVISA加盟店であってもQUICPay+が使えることがあるため、これにより利用できる店舗の幅は広がる。

たとえば、「Kyash」そのものはガソリンスタンドでは使えないが、Apple PayやGoogle Payに登録した上でQUICPay+決済を行う場合はENEOSや昭和シェル石油のスタンドで支払いに利用できる。

Kyashへのチャージ方法

「Kyash」へのチャージ(入金)方法は主に次の3つ。チャージされた残高には決済のほかに送金と出金も可能な「kyashマネー」と、決済のみに利用できる「kyashバリュー」の2種があり、入金方法によりどちらになるか決まる。

・銀行口座からのチャージ
登録できる銀行はあまり多くないので、この方法を利用したい場合は「Kyash」を作る前に公式サイトで対応銀行を確認したほうがいいだろう。2021年2月現在、対応銀行は13行(うちイオン銀行は一時停止中)。この方法でチャージした残高は「Kyashマネー」となる。

・クレジットカード/デビットカードからのチャージ
VISAブランドかMasterCardブランドの付いたクレジットカードやデビットカードでチャージが可能。この方法でチャージした残高は「Kyashバリュー」となる。

・コンビニ/ペイジーによるチャージ
コンビニATM、セブン銀行ATM、銀行ATM(ペイジー)でチャージできる。この方法でチャージした残高は「Kyashマネー」となる(本人確認をしていない場合は「kyashバリュー」)。

このうち、ここではチャージ自体でもポイントを獲得できるクレジットカードによるチャージをおすすめしたい。

Kyashのカード3種の比較

「Kyash」のカードは3種あり、リアルカード(カードの実物)の有無、発行手数料、申し込み時の本人確認書類の要不要、決済上限額、ポイント還元率などが異なる。要点をまとめたものが以下の表となる。なお、いずれも年会費は無料。

  Kyash Card Kyash Card Lite Kyash Card Virtual
リアルカードの有無 ×
発行手数料 900円 300円 無料
本人確認書類 必須 不要(任意)
ポイント還元率 0.2%~1% 0.2%~0.5%
決済上限(1回) 30万円 5万円
本人確認済の場合:10万円
5,000円
3Dセキュア認証確認済の場合:3万円
本人確認済の場合:10万円
決済上限(1ヵ月) 100万円 12万円
本人確認済の場合:15万円
2万円
3Dセキュア認証確認済の場合:12万円
本人確認済の場合:15万円
国内決済 オンライン決済のみ
海外利用 オンライン決済のみ

・発行手数料の違い
カード3種のうち年会費・発行手数料ともに無料となるのが、メールアドレスと携帯電話番号のみの入力でアプリから1分で発行できる「Kyash Card Virtual」だ。これはカードの実物がないバーチャルカードとなるため、実店舗でそのまま使うことはできないが、Apple PayかGoogle Payに登録すればQUICPay+加盟店で支払い可能となる。

・決済上限の違い
いずれも決済上限が設定されており、申し込み時に本人確認書類の提出が必要な「Kyash Card」が最も高い上限となる。ただし、「Kyash Card Lite」と「Kyash Card Virtual」でも本人確認書類を提出すればある程度まで決済上限を上げられる。

カードの有効期限はいずれも5年で、期限がきたら再発行の必要がある。また、「Kyash Card Lite」と「Kyash Card Virtual」に関しては5年の有効期限内に合計100万円までしか決済できないので、それを超えて利用したい場合にも再発行が必要となる。

ポイント還元率は0.2%~1%

カード3種の比較表で分かるようにポイント還元率は「Kyash Card」で0.2%〜1%、「Kyash Card Lite」と「Kyash Card Virtual」で0.2%〜0.5%となる。いずれも付与されるポイントは「Kyashポイント」。

ポイント還元率に関しては2021年2月10日に「改悪」といってもよい変更が実施されている。カード別に変更前と変更後の還元率を紹介しよう。

旧還元率

  Kyash Card Kyash Card Lite Kyash Card Virtual
Kyashマネー 1.0% 0.5%(※)
kyashバリュー 1.0% 0.5%
※本人確認をしていない場合は「Kyashバリュー」のみ利用できる

2021年2月10日以降の還元率

  Kyash Card Kyash Card Lite Kyash Card Virtual
Kyashマネー 1.0% 0.5%(※)
kyashバリュー 0.2%
※本人確認をしていない場合は「Kyashバリュー」のみ利用できる

なお、ポイントにはカード別に月あたりの付与上限があり、またチャージ方法の違いによって上限が異なってくる。それを表にまとめると次のようになる(2021年2月10日以降)。

  Kyash Card Kyash Card Lite Kyash Card Virtual
Kyashマネーの
ポイント付与上限
1,200P 600P
Kyashバリューの
ポイント付与上限
100P 100P

「Kyash Card」にクレジットカードでチャージする場合で考えると、「Kyashバリュー」決済に伴うポイントは毎月100ポイントが付与上限となり、5万円を超える決済にはポイントは付与されないことになる。

貯めたポイントは1ポイント→1円のレートで「Kyashバリュー」としてカードにチャージ可能。ポイントの有効期限はカードによる最終利用日から180日となっており、定期的に使っていれば失効することはまずない。

なお、カードにチャージされている残高の有効期限は無期限で、カードを再発行した場合はポイントや残高、アカウント情報は再発行後のカードに引き継がれる。

送金・出金機能もある

先に触れたとおり、銀行口座、ペイジー、コンビニATM、セブン銀行ATMからチャージした残高については、Kyashアカウント間での送金や銀行口座への出金も可能だ。ただし、「Kyash Card Lite」と「Kyash Card Virtual」では本人確認が済んでいることが条件となる。また、アプリの請求機能を使えばKyashアカウント間で容易に割り勘できる。

2,Kyashでポイント2重取りする方法

「Kyash」をうまく利用すればポイントを2重に獲得できる。ここでは2つの方法を紹介しよう。

方法1,Kyashポイント+クレジット利用ポイント

クレジットカードでチャージする場合、クレジット利用ポイントと「Kyashバリュー」決済によるポイントを2重に獲得できる。たとえば、還元率1%のクレジットカードで「Kyash Card」にチャージして決済した場合、その分は合計1.2%還元となる。

方法2,Kyashポイント+共通ポイント

Tポイントやdポイント、Pontaポイントなど共通ポイントの提携店ではカード提示によりポイントが付与されるので、「Kyashバリュー」決済との併用によりポイントを2重に獲得できる。たとえば、ファミリーマートで「Kyashバリュー」決済を行い、Tポイントカードを提示した場合、0.2%分のKyashポイントと0.5%分のTポイントが付与され合計0.7%還元となる。

3,Kyashでポイント3重取りする方法

ポイント2重取りの2つの方法を合わせれば3重取りも可能だ。つまり、クレジットカードでチャージした「Kyashバリュー」で決済を行い、そのときに共通ポイントカードを提示すれば、《Kyashポイント+クレジット利用ポイント+共通ポイント》の3重取りとなる。

1%還元のクレジットカードでチャージしファミリーマートで利用するケースで考えると、《クレジット利用ポイント1%+Kyashポイント0.2%+Tポイント0.5%》となり合計1.7%もの高還元率となる。

4,Kyashでポイント4重取りする方法

QRコード決済「d払い」の利用により4重取りも可能となっている。たとえば、「dカード」から「Kyash Card」にチャージし、その「Kyash Card」を「d払い」アプリに紐づけすれば、dポイント加盟店での「d払い」決済により《Kyashポイント0.2%+クレジット利用ポイント1%+d払い利用ポイント0.5%(実店舗の場合)+dカード提示ポイント(店舗により異なる)》のポイント4重取りとなる。

ファミリーマートでの利用を例にとると、《Kyashポイント0.2%+クレジット利用ポイント1%+d払い利用ポイント0.5%+dカード提示ポイント0.5%》の合計2.2%還元となる。

以前はほかのQRコード決済でもこうした4重取りが可能だったが、現在では「d払い」でのみ可能となっている。

・洋服の青山では6重取りも可能
なお、洋服の青山ではdポイント、Tポイント、AOYAMAポイントが同時に貯まることから、ポイント6重取りも可能だ。その場合、《Kyashポイント0.2%+クレジット利用ポイント1%+d払い利用ポイント0.5%+dカード提示ポイント0.5%+Tカード提示ポイント0.5%+AOYAMAポイント0.5%》で合計3.2%還元となる。

5,ポイント還元率変更後もKyashはまだお得?

これまで「Kyash Card」はクレジットカードによるチャージ時のポイントと、決済時のポイントの2重取りができるカードとして注目されてきたが、繰り返し触れてきた2021年2月10日の大幅な還元率引き下げにより事情が変わってきた。

そこで次に、ポイント還元率変更後も引き続き「Kyash Card」はお得に使えるのかどうかという点を検証したい。

・カードのランニングコスト
「Kyash Card」の発行手数料は900円。5年ごとの更新時にも同じ金額が必要となるので、年間のランニングコストは180円となる。

・獲得可能ポイント
月間100ポイント(100円相当)が上限となるため、年間では1,200ポイント(1,200円相当)が獲得可能な最大値となる。

・年間の実質的獲得額
獲得可能ポイントの価値からランニングコストを差し引きすると、年間最大で1,020円相当のプラスとなる。

還元率変更前は月間500ポイントが上限だったため、年間最大で実質5,820円相当のプラスであったことを考えるとメリットがかなり薄くなった印象だ。とはいえ、少しはプラスとなるので、ポイント獲得手段としてはいまなお有効ではある。

6,Kyashにおすすめのクレジットカードは?

では、「Kyash Card」のチャージにおすすめのクレジットカードを3つ紹介しよう。ここでは高還元率であることを大前提とし、「Kyash Card」の発行に900円の手数料がかかることも考慮して年会費無料のものをチョイスした。

6-1,おすすめカード1,dカード……dポイントをまとめやすい高還元率カード

dポイント加盟店でのポイント4重取りを狙う場合にポイントをまとめやすいのが、年会費無料でポイント還元率1%の「dカード」だ。国際ブランドはVISAかMasterCardから選べる。

《Kyashポイント+クレジット利用ポイント+d払い利用ポイント+dカード提示ポイント》という形での4重取りの場合、「dカード」でチャージするとKyashポイント以外のポイントがすべてdポイントとなるため使い勝手が非常に良い。

なお、ドコモ携帯電話のトラブルによる再購入時に費用の一部を補償するdカードケータイ補償や、年間100万円を上限とするお買い物あんしん保険(ショッピング保険)もこのカードの大きなメリットとなっている。

6-2,おすすめカード2,リクルートカード……1.2%の超高還元率カード

ポイント還元率1.2%という屈指の超高還元率カードが「リクルートカード」だ。年会費は無料で国際ブランドはVISA、MasterCard、JCBから選べるが、JCBブランドは「Kyash」へのチャージができないので注意したい。

クレジット利用で貯まるポイントはリクルートポイントで、これは共通ポイントのPontaポイントに交換することで使い勝手がよくなる。Pontaポイントはローソン、KFC、ピザハット、AOKI、シェルなどのほか、じゃらんやホットペッパーなどリクルート系のネットサービスなどで貯まったり使えたりするので、これらの加盟店を普段から利用しているならポイントをまとめやすく、また利用しやすいだろう。

「リクルートカード」には海外最高2,000万円、国内最高1,000万円の旅行傷害保険のほか、年間200万円までのショッピング保険が付帯しており、これも大きなメリットとなっている。

6-3,おすすめカード3,ヤフーカード……Tポイントを貯めているなら

クレジット利用により1%分のTポイントが貯まり、Tカードとしても使える「ヤフーカード(Yahoo! JAPANカード)」もポイントのまとめやすさという点でおすすめのカードといえる。

年会費は無料で国際ブランドはVISA、MasterCard、JCBから選べるが、JCBブランドは「Kyash」へのチャージができない点は留意したい。

このカードには最高100万円のショッピング保険が付帯しており、これも大きな魅力となっている。

7,ケースバイケースで使い分けを

クレジットカードで「Kyash Card」にチャージしての2重~4重取りは高還元率を実現する手段として非常に有益だが、先に説明したとおり月あたりのポイント付与上限があるため、月5万円を超える利用分に関しては別の決済方法を検討したほうがよい。

また、「dカード」はdカード特約店で、「リクルートカード」はリクルート系のネットサービスで、「ヤフーカード」はYahoo!ショッピングでポイントアップが適用されお得に使えるので、「Kyash Card」との組み合わせのみにこだわらず、ケースバイケースで使い分けを図りたい。

執筆・モリソウイチロウ(ライター)
「ZUU online」をはじめ、さまざまな金融・経済専門サイトに寄稿。特にクレジットカード分野では専門サイトでの執筆経験もあり。雑誌、書籍、テレビ、ラジオ、企業広報サイトなどに編集・ライターとして関わってきた経験を持つ。

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