住宅ローン「フラット35」を扱う住宅金融支援機構は、2021年1月以降の物件検査申請分について、「フラット35リノベ」の適用条件の変更を実施しました。「フラット35リノベ」は、中古住宅を購入してリフォーム工事を実施する際に利用できる金利の低い商品ですが、結論から言うと、このリフォーム工事の要件が緩和されたのです。

コロナ禍で住宅のあり方を見直す人が増える中、新築と比べて売買契約から短期間で入居できる中古住宅に対する人気は高く、成約価格も上昇が続いています。ただ、中古だと水回りを中心にリフォームしておきたいという人も多いでしょう。今回、どう改正されたのか解説します。

目次

  1. フラット35とは何か?
  2. フラット35リノベは金利が-0.5%
  3. フラット35リノベの要件変更
  4. フラット35リノベ金利Aプランなら3,000万円の返済で約143万円もお得!
  5. リフォーム住宅マーケット 拡大中

フラット35とは何か?

中古住宅
(画像はイメージです)

「フラット35」とは、全国300以上の民間金融機関と住宅金融支援機構が提携して提供する、最長35年の全期間固定金利住宅ローンのことです。主な特徴は以下の4つで、幅広い層に利用されています。

・全期間、固定金利
・質の高い住宅を応援、地方公共団体と連携、子育て支援型、地域活性型などのメニューを設定
・保証人が不要、繰り上げ返済手数料不要
・新機構団信や新3大疾病付機構団信により契約者の病気や死亡にも安心サポート

少し前に、フラット35を不動産投資に利用している人が問題となったように、使い道は実需に限られます。

フラット35リノベは金利が-0.5%

同機構は同様に「フラット35リノベ」も提供しています。中古住宅の購入資金とリフォームの工事費用が対象となり、リフォーム工事が一定の基準をクリアしていれば、当初の5年もしくは10年の期間が通常の「フラット35」よりマイナス0.5%の金利が適用される、というお得な住宅ローンです。

「フラット35リノベ」は、中古住宅を購入してリフォームを行う「リフォーム一体タイプ」と、リフォーム済み中古住宅を購入する「買い取り再販タイプ」の両方で融資が可能です。しかし、申し込みや住宅の適合検査などの手続きのタイミングが多少違ってきますので、住宅事業者や金融機関に、具体的に確認する必要があります。

融資金額は100万~8,000万円、借入期間は15~35年が基本ですが、年齢などによって考慮されます。

フラット35リノベの要件変更

フラット35リノベは、リフォーム工事の内容によって金利Aプランと金利Bプランに分けられています。金利の引き下げ幅は0.5%と変わりませんが、金利Aプランでは、金利引き下げ期間が当初10年間、金利Bプランでは、それが当初5年間となっています。

今回の改正では、2021年1月以降の申請分について、要件が以下のとおり変更されました。

・リフォーム工事費の最低金額を設定→金利Aプランは300万円以上、金利Bプランは200万円以上
・リフォーム工事の要件緩和→金利Bプランの条件緩和、金利Aプランのリフォーム工事前の条件適合も認める

フラット35リノベ(適合要件)

リフォーム工事の住宅要件は、どれか一つ以上の基準に適合する性能向上リフォームを実施することが必要となります。金利Bプランの場合は、工事の実施によって改善されることが必要ですが、金利Aプランの場合にはリフォーム工事前にすでに条件が適合していた場合も融資が認められることとなりました。

フラット35リノベ金利Aプランなら3,000万円の返済で約143万円もお得!

フラット35リノベがフラット35よりどのくらいお得かシミュレーションしてみました。借入額3,000万円、返済期間35年、元利均等払い、ボーナス払いなしで設定し、金利水準は2021年1月時点のレベルです。

結果は以下のとおり、フラット35リノベ金利Aプランでは、なんと約143万円も総額でお得になりました。

借入額3000万円、借入期間35年 試算

実際に適用になる金利は、時期や、自己資金と借入金の割合や、借入期間、加入する団体信用生命保険や取り扱う金融機関によっても異なるので、注意しましょう。

リフォーム住宅マーケット 拡大中

公益財団法人東日本レインズが2021年1月15日に発表した首都圏の中古住宅取引の2020年12月月例速報では、中古マンションの成約件数は前年比9.9%マイナスと3カ月ぶりに前年を下回りましたが、中古戸建て住宅の成約件数は、このコロナ禍という環境で、9.3%プラスで6カ月連続で前年を上回っています。また成約価格はマンションがプラス5.3%、戸建てがプラス10.7%と、共に前年を大きく上回りました。中古住宅市場はまだまだ活況を示しています。

ただ、中古住宅には劣化が進んだものもあり、部分的なリフォームを求める人も多いでしょう。不動産流通システム(REDS)では「REDSリフォーム」として、中古住宅の販売とリフォーム工事をパッケージ化し、物件探しから住宅性能の向上までをワンストップで提供するサービスを商品化しています。

金融機関によっては、リフォーム工事費用を一般の住宅ローンよりも金利の高いリフォームローンの使用しか認めないケースもあります。「REDSリフォーム」ではそうしたローン付けに関する相談も承っていますので、ご検討ください。

プロフィール


早坂 龍太(宅地建物取引士)
龍翔プランニング代表取締役。北海道大学法学部卒業。石油元売会社勤務を経て、北海道で不動産の賃貸管理、売買・賃貸仲介、プランニング・コンサルティングを行う。


半沢隆太郎(宅地建物取引士)
中央大学法学部法律学科卒。実家が建設・不動産会社を経営。新卒で大手機械メーカー、その後コンサル会社を経て、現在は不動産業種の上場会社の経営企画部門に勤務。