中国,景気,株
(画像=PIXTA)

消費刺激策と投資抑制策の併用で中国は緩やかな成長を維持

日本総合研究所 主任研究員 / 関 辰一
週刊金融財政事情 2021年3月15日号

 世界経済が停滞するなか、中国経済は総じて順調に回復を続けている。分野別に見ると、固定資産投資は積極的な経済対策を受けて急回復している。特に、国有企業の設備投資や不動産開発投資では過熱感が見られる。国有企業は、2020年1~3月期のマイナス成長から早期回復を目指すという政府の意向を受けて、設備投資を急ピッチで拡大。財政出動や金融緩和が追い風となり、ハイテク分野のほか、鉄鋼など過剰設備・過剰債務を抱える分野でも大きく投資が伸びている。輸出も世界の情報通信機器の需要拡大を主因にハイペースで増加している。一方で、個人消費は新型コロナウイルス感染拡大を受けた活動制限により回復が遅れている。

 今後を展望すると、目先は活動制限の強化が景気の下押し圧力になる公算が大きい。21年入り後、政府は省・市・自治区をまたぐ移動を中心に活動制限を再び強化した。その結果、足元で成長ペースが鈍化しているとみられる。

 ただし、政府による消費刺激策がこうした景気下押し圧力をある程度相殺する見込みである。実際、地方政府が商品券や観光地の入場券を広く配布したこと、各省・市・自治区内の活動制限は限定的であったことなどから、今年2月の春節(旧正月)休暇の小売売上高は大幅減少を回避した。

 雇用環境の改善も勘案すると、先行き個人消費は底堅く回復しよう(図表)。政府がコロナ禍からの早期回復を目指すなか、20年3月ごろから各地で操業再開競争が起こった結果、失業率は早くも同月から低下に転じ、同年12月にはコロナ前と同等の水準となった。

 他方、国有企業の設備投資は、政府の抑制姿勢を反映して過剰設備・過剰債務が問題となっている分野を中心にスローダウンするとみられる。政府が国有企業の社債デフォルトを一部容認したことで、国有企業の社債発行を通じた資金調達の急拡大にはすでにブレーキがかかった。

 また、不動産市場についても、投資の拡大ペースが減速するだろう。政府は20年末から住宅ローンの総量規制を開始した。上海や深圳では融資額が上限に達し、住宅ローン業務を停止する銀行が見られる。21年3月に開幕した全国人民代表大会では、21年の成長率目標を「6%以上」と達成しやすい水準に設定したほか、不動産市場の過熱抑制を指示した。

 このように、消費刺激策が活動制限による景気下押し圧力を和らげる一方、投資抑制策は過熱感が見られる分野の経済活動を徐々に鎮静化させるだろう。消費と投資のバランスを考慮した政策誘導により、今後の中国経済はマイルドなペースで成長を続けると考えられる。21年通年では、前年の水準が低いため、その反動でやや上振れ、前年比8%増の成長率になると見込まれる。

中国は緩やかな成長を維持、消費刺激策と投資抑制策の併用で
(画像=きんざいOnline)

(提供:きんざいOnlineより)