株,積み立て,株式投資
(画像=PIXTA)

制度拡充とともに利用が進む確定拠出年金

(厚労省「確定拠出年金の施行状況」)

大和総研 政策調査部 / 佐川 あぐり
週刊金融財政事情 2021年3月15日号

 公的年金の給付水準の低下が見込まれることに加え、高齢者の医療・介護費用の自己負担が増加することから、高齢期に向けて個人が自助努力で備える重要性が高まっている。近年の政策はそうした自助を後押しする要素を強めており、その一つが確定拠出年金(DC=Defined Contribution)に関する制度の拡充である。

 DCには、企業が掛け金を拠出する企業型DCと、個人が任意で加入し掛け金を拠出する個人型DC(iDeCo=イデコ)がある(図表)。企業型DCは企業の退職給付制度の一形態として普及し、導入企業や加入者が着実に増加している。一方、個人型DCは2002年の制度開始当初、対象者が自営業者や企業年金のない会社員に限定されていたため、加入者数が伸び悩んでいたが、17年1月に対象者がほぼすべての成人国民に拡大されて以降は急増している。

 自助を促す観点から、DCはさまざまな制度改正が行われてきた。12年1月には企業型DCにおいて、企業拠出に追加的に従業員が拠出できるマッチング拠出制度が開始された。他方、iDeCoは、対象者の拡大を機に、それまで加入できなかった人々の利用が進んでいる。また、企業年金の導入が困難な中小企業を対象に18年5月に開始された「中小事業主掛金納付制度(iDeCo+=イデコプラス)」は、iDeCoに加入する従業員の掛け金に、企業が追加的に掛け金を拠出する仕組みだ。企業が自社の福利厚生の一環として導入すれば、従業員の資産形成を支援できる。

 22年5月からは加入可能年齢の上限が引き上げられ、60歳以上でも国民年金の被保険者であればiDeCoに加入可能となる。また、同年10月からは企業型DC加入者のiDeCo加入要件が緩和され、規約の定めや事業主掛け金の上限の引き下げがなくてもiDeCoに原則加入できる。さらに、企業年金加入者間の公平を図るため、確定給付型年金加入者の企業型DCとiDeCoの拠出限度額の計算がきめ細かく見直される予定だ(施行時期未定)。より多くの掛け金をより長い期間運用できれば、将来の年金資産を増やせる期待が高まる。

 個人がDCを利用し、自助による資産形成を実践できる環境は整備されてきたが、課題は残っている。加入者は増えているとはいえ、個人のiDeCoへの加入や企業のiDeCo+導入を促すなどの取り組みを一層強化する必要がある。また、どのようなケースでも拠出限度額(非課税枠)をフル活用できるよう制度を見直す余地も大きい。具体的には、企業拠出額を超えない範囲でしかマッチング拠出ができないという規制の撤廃を望む声などが上がっている。人々の自助を最大限に引き出す観点からの検討を期待したい。

制度拡充とともに利用が進む確定拠出年金
(画像=きんざいOnline)

(提供:きんざいOnlineより)