新型コロナの影響で実体経済が悪化している中、世界規模で金融緩和や財政出動が行われ、行き場を失ったマネーが株式市場に流れ込んでいる。一方で失業や収入減となった人も多く、「国民全員に10万円を再給付してほしい」という声がSNSを中心に高まっているが、麻生太郎財務大臣は12月、「(給付金は)国の借金でやっている。後世の人たちにさらに借金を増やすのか」と再支給に否定的な考えを示した。そのような状況の中、「一度ではなく毎月10万円配ればいい」と主張するのは、日本経済復活の会会長で日本ベーシックインカム学会理事も務める小野盛司氏だ。

ベーシックインカム
(画像=masa/PIXTA、ZUU online)
毎年120万円を配れば日本が幸せになる
小野盛司氏
日本経済復活の会会長、日本ベーシックインカム学会理事。1974年東大大学院博士課程卒、理学博士。カリフォルニア大学、パリ大学、CERN等にて素粒子論の研究と教育を行う。1984年に帰国し、東大理学部に属しながら東大英数理教室を設立、2018年まで代表取締役。著書に『毎年120万円を配れば日本が幸せになる』(共著、井内智洋)など多数。

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毎月10万円を全国民に配り続ければ
日本経済は必ずよくなる

「最近、景気のいい話を聞きませんよね。コロナでボーナスが下がった、失業者は200万人、女性の自殺者は前年比80%も増えている。先が見えない不安を抱えている方も多いでしょう。でも、みんなが幸せになる単純な方法が、国民全員にお金を配ることです。コロナ対策として全国民一律に10万円を給付しましたが、この特別定額給付金は1回だけでは足りません。毎月10万円、1年間に120万円をすべての国民に配り続ければいいのです。そうすれば、企業の利益が上がり、みなさんも豊かになります」(小野氏)

政府がすべての国民に対して、就労や資産の有無にかかわらず、生活に最低限必要な所得を無条件に直接給付する政策、いわゆる「ベーシックインカム」だ。

ベーシックインカムは、竹中平蔵氏や堀江貴文氏なども導入を主張しており、政財界や実業界からも期待されている政策の一つだ。海外を見渡せばFacebook創業者のマーク・ザッカーバーグやテスラ創業者のイーロン・マスク、政治家のヒラリー・クリントンらもベーシックインカムに前向きな姿勢を取っている。

「景気を回復させるには、減税、公共投資、国民にお金を配る、といった財政支出を行うしかありません。痛みに耐えて倹約すればするほど、お金は社会を循環しなくなり、さらに経済状況が悪化していく。そうすると、さらに大きな痛みが襲ってくる。今回のコロナ不況対策で10万円を全国民に配りました。それはよかったと思いますが、10万円1回だけでは足りません。もっとやる必要があります。

名目GDP550兆円がコロナ前の状況だとすると、配る金額によって、その後の経済が回復するスピードが変わります。たとえば、毎月10万円ずつ全国民に配ると仮定してシミュレーションしたところ、2020年10~12月期から配ると、名目GDPが伸びていって、2022年にはもう640兆円になります。年間40万円を配った場合は、1年ほどでコロナ以前の水準に戻ります。2021年10~12月期あたりに戻るでしょう。もし年間80万円を配ったら、もっと早い。2021年4~6月期か7~9月期には回復します。つまり、配る額が増えるほど早くコロナ禍から回復するんです。

それに対し、現金を配らなかったら、3年経って2023年になっても、コロナ前の経済規模には戻りません。つまりコロナ禍でみんな貧乏になってしまったのだけど、その貧乏なままでずっと続くということです」(小野氏)

GDP
(画像=毎年120万円を配れば日本が幸せになるより)

小野氏は、日本経済新聞社が提供する「日経NEEDS」を使ってシミュレーションしている。日経NEEDSはGDP項目や生産、物価など相互依存関係を約270本の方程式で表現する四半期ベースの計量経済マクロモデルで、向こう2~3年間の景気を予測することを狙いとし、さまざまなシナリオに基づくシミュレーションができる。

お金を配ってもハイパーインフレにはならない理由