2014年8月24日、ジャクソンホール(米ワイオミング州)での講演で、利上げの示唆を否定しなかったジャネット・イエレンFRB議長だが、もはや長期金利への弊害感を感じる金融筋の動向に、密かにほくそ笑んでいるようだ。非農業生産人口の就業者割合も、月次報告では連続で20万人を上回っている。住宅販売も底堅いこと、また一時中国へシフトしていた米国企業の生産工場も、チャイナリスクへの関心から、米国帰還の動きが見られる。
ここにきて、欧州は各国でユーロ安による輸出で、デフレ対策の盾としようと試みている。日銀の黒田総裁は依然として、円安誘導を継続するとG20で発言した。だからといって、米国が列強の通貨安競争を否定しなかったことから、強いドル政策を維持しようとするのは、内需拡大にシフトしているオバマ政権の経済政策所以と考えられている。
なぜ、イエレン氏はこの場で「労働市場情勢指数」を発表したのだろう?金融筋では、「月次雇用統計」の10項目で十分だ、という読みが大半である。それもそのはず、雇用統計は全産業からのサンプルではないにせよ、雇用増減数がタイムレスで公開される。だがより「労働の質感」にこだわってきた過去がある。「労働市場情勢指数(LMCI)」は失業率をはじめ、労働参加率やフルタイムでの職を望みながらもパートタイムで働く労働者の人数、採用状況などの19の指標で構成される。
つまり、従来よりも9つ指標が増えているのだ。「非農業部門就業者数」と「失業率」の2項目が特に注目されており、FOMC(連邦公開市場委員会)の金融政策の決定にも大きな影響を与える、との見方もある。アメリカの雇用統計には「非正規労働者」「正規労働者」の厳密な区分けがない。
イエレン氏は、この新しい指標・LMCIを、10月6日に初めて発表した際に、毎月第1金曜に発表される雇用統計の不完全さを確認した。そこには、雇用統計や失業率といった指標は、あくまで雇用の一面しか表していないものだという指摘があったからだ。そこで米FRBはLMCIは、19もの労働・雇用関係の指標を材料とした。その19指標とは、失業率や平均時給といった一般的な指標、人口の中で労働市場に参加している人の割合を示す労働参加率を含めたのだ。このように多くの雇用関連指標をもとにして計算し、より広範囲な労働市場の実態を表わすことを目的としたのだ。
結論から言えば、イエレン氏の考え方では金融政策でドル高一辺倒に振れる相場が絶対に好ましいとは言えない。ただ、安定した相場には、参考されるべく指標の公開が必要だ。今はまだ影響力のないLMCIだが、雇用統計よりも重要視されるような基準作りに尽力を傾けるのは間違いないだろう。
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