毎月、新たに発売されるビジネス書は約500冊。いったいどの本を読めばいいのか、迷ってしまう方も多くいるかと思われます。

本稿では、読書家が集まる本の要約サイト「flier(フライヤー)」にてアクセスの多かった書籍を、金融業界のユーザーに絞って毎月ランキング形式でご紹介しております。皆様の書籍選びの参考になれば幸いです。

上司と部下
(画像=goodluz/stock.adobe.com)

目次

  1. 金融業界ランキング
  2. 「上司」の悩みは、海のごとく深い
  3. 「言えば、伝わる」のは間違い
  4. 「自分で学べる」人間になる方法
  5. 「自分の頭で考える力」は具体化と抽象化で磨かれる
  6. 「経営の神様」松下幸之助から学ぶべきもの
  7. 「マインドフルネス」から「ハートフルネス」へ
  8. 編集後記

金融業界ランキング

第1位:『できる上司は会話が9割』(林健太郎著、三笠書房)
第2位:『世界最高の話し方』(岡本純子著、東洋経済新報社)
第3位:『自宅学習の強化書』(葉一著、フォレスト出版)
第4位:『「具体⇄抽象」トレーニング』(細谷功著、PHP研究所)
第5位:『対比思考』(小柴大輔著、ダイヤモンド社)
第6位:『道をひらく』(松下幸之助著、PHP研究所)
第7位:『モンテッソーリ教育が教えてくれた「信じる」子育て』(モンテッソーリ教師あきえ著、すばる舎)
第8位:『トヨタの描く未来』(桑原晃弥著、リベラル社)
第9位:『ハートフルネス』(スティーヴン・マーフィ重松著、島田啓介訳、大和書房)
第10位:『「文章術のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。』(藤吉豊 / 小川真理子著、日経BP)

※本の要約サイト「flier(フライヤー)」の有料会員のうち、金融業界に所属するユーザーを対象にした、2021年3月の閲覧数ランキング

「上司」の悩みは、海のごとく深い

2021年3月、金融関連企業にお勤めのユーザーから最も読まれたのは『できる上司は会話が9割』でした。新しい生活様式が普及しつつあるなか、テレワークが中心になった企業も増えています、対面での会話が難しくなってきた今だからこそ、意識的にコミュニケーションをうまくとっていかなければ、業務効率はもちろんのこと、居心地のいい職場を築くのは困難です。本書が最も読まれたのも、ビジネスパーソンたちのそうした意識を反映した結果と言えます。

なかでも難儀なのが、新しい部下たちとのやり取りでしょう。人材の多様化が進む今、上司は部下一人ひとりに合わせた内容を求められます。一方で、同時に会社からの要望にも応えていかなければなりません。

本書は「部下の能力の引き出し方」を、コーチングのプロが解説したものです。ケース別に解説されており、どういう関わり方をすれば部下をうまく育てられるか、わかりやすく述べられています。

本書のテーマは「会話」ですが、ときにはあえて話さないことも重要です。部下に悩むすべての上司にお読みいただきたいです。

できる上司は会話が9割
できる上司は会話が9割
林健太郎
出版社:三笠書房
発売日:2021年02月26日
ジャンル:リーダーシップ・マネジメント

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「言えば、伝わる」のは間違い

第2位は『世界最高の話し方』で、同じくコミュニケーションに関する本がランクインしました。コロナ禍の今、対面で仕事をしていたときのような「雰囲気で伝える」「表情から推し量ってもらう」といった手法が通用しなくなり、言葉で伝えることの重要性はますます高まっています。

とはいえ「プレゼンが得意!」と心から言える人は、どちらかというと少数派ではないでしょうか。「失敗したら恥ずかしい」と感じて必要以上に気張ってしまったり、伝えたいことがなかなかうまく伝わらなかったりして、悩んでいる人は多いはずです。

本書が強調するのは、相手の感情を動かすことの重要性。一方的に話すのではなく、聞き手と話し手の間でなんらかの「化学反応」が起きたとき、はじめて人に伝わるのだといいます。「言えば、伝わる」というのは大きな間違いなのです。

結局のところ、うまい話し方を身に着けたいのならば、練習は不可欠ですが、コツを意識しているかどうかで、上達スピードは大きく異なります。プロジェクトの関係者を説得するうえでも必須スキルとも言える「話し方」。これを機に磨いてみてはいかがでしょうか。

世界最高の話し方
世界最高の話し方
岡本純子
出版社:東洋経済新報社
発売日:2020年11月12日
ジャンル:リーダーシップ・マネジメント

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「自分で学べる」人間になる方法

第3位は『自宅学習の強化書』でした。新型コロナウイルスの影響を受けたのは、当然ながらコミュニケーションだけではありません。教育・学習もそのひとつ。学生・社会人問わず、リアルの場で学ぶことにさまざまな制限が設けられました。自ら学ぶ「自宅学習」に注目が集まったのも当然のことだと言えます。

本書は教育系YouTuberである葉一氏が、主に中学生とその保護者に向けて「成果を上げる自宅学習」のポイントをまとめたものです。もちろん、社会人が読んでもさまざまな学びが得られます。特に「自宅で勉強できる」だけでなく、「成果を上げる」ことを目的としているのならば、ぜひ本書を読んでみてください。その価値は十分にあります。

どのような勉強にせよ、受け身の状態では大きなレベルアップは見込めません。自分の長所・短所やライフスタイルに合わせて、自分なりの勉強法を編みだす必要があります。本書に書かれていることを土台に、「自分で学べる」体質をつくりあげていけば、さらなるスキルアップやキャリアチェンジも望めるでしょう。

自宅学習の強化書
自宅学習の強化書
葉一
出版社:フォレスト出版
発売日:2021年01月02日
ジャンル:スキルアップ・キャリア、自己啓発・マインド

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「自分の頭で考える力」は具体化と抽象化で磨かれる

ここからは、第4位以下から注目の書籍をピックアップしていきたいと思います。

まず、保険業界でとりわけ読まれたのが、第4位の『「具体⇄抽象」トレーニング』です。著名YouTuberのマコなり社長が推薦していたことでも話題を集めました。

「具体⇄抽象」とは言葉の通り、具体化と抽象化を行き来する思考法のこと。とりわけ「問題解決」と「コミュニケーション」領域において、「具体⇄抽象」は有効なスキルです。問題解決の場合、最も重要なのは具体的な事象を抽象化し、問題の本質を捕捉すること。一度問題を発見すれば、あとは具体化することによって解決していくだけです。また、コミュニケーションにおいても、具体と抽象を整理しながら「いまどの領域の話をしているのか」を共有していくことで、不毛な議論や軋轢を避けられます。 本書には29問の演習問題がついているので、ぜひ問題を解きながら「具体⇄抽象」の思考法をトレーニングしてみてください。この思考法が身につけば、「自分の頭で考える力」が大幅に上がることでしょう。そしてそれは普段の業務においても、日々の生活においても、大きく役立つはずです。

「具体⇄抽象」トレーニング
「具体⇄抽象」トレーニング
細谷功
出版社:PHP研究所
発売日:2020年03月31日
ジャンル:スキルアップ・キャリア、自己啓発・マインド

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「経営の神様」松下幸之助から学ぶべきもの

第6位『道をひらく』は言わずと知れた名著であり、幅広い業界のユーザーに読まれていましたが、なかでも銀行業界のユーザーから多くの注目を集めました。銀行が「変化」を求めていることの表れと言えるかも知れません。

ご存知のように、著者の松下幸之助氏は、明治に生まれ、平成元年に没した実業家です。一代にしてパナソニックを築きあげたその手腕から、「経営の神様」と称えられています。また、23歳で起業してから94歳でこの世を去るまで、単に実業家として利益をあげただけではなく、PHP研究所や松下政経塾を設立し、多数の人材を輩出したことでも知られています。

本書は、松下幸之助氏の哲学をまとめたもので、その考え方やものの見方は、現代においてますます輝きを放っています。本書を読んだことがある人もない人も、ぜひこの機会にお手にとっていただければと思います。

道をひらく
道をひらく
松下幸之助
出版社:PHP研究所
発売日:1968年05月01日
ジャンル:自己啓発・マインド、リーダーシップ・マネジメント

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「マインドフルネス」から「ハートフルネス」へ

最後にご紹介したいのが、第9位の『ハートフルネス』です。こちらは特に証券業界のユーザーに読まれていました。 近年、特に欧米で瞑想の効果が科学的に語られるようになり、「マインドフルネス」のような言葉もすっかり一般的になってきています。とはいえビジネスの文脈におけるマインドフルネスは、ともするとストレスの解消や自己実現などのように、個人の視点だけで語られがちです。

著者の提案する「ハートフルネス」とは、いわば「集合的マインドフルネス」とも言うべきもの。いわば個人の成長を、コミュニティや社会の成長につなげるための試みです。

スタンフォード大学の心理学の授業がベースとなっているということで、最新のエビデンスにしっかり裏付けされつつ、日本とアイルランドのバイレイシャル(混血)として幾多の困難を乗り越えてきた著者自身も経験が語られています。ひとつの物語としても非常に興味深いので、ぜひご一読いただければと思います。

ハートフルネス
ハートフルネス
スティーヴン・マーフィ重松、島田啓介(訳)
出版社:大和書房
発売日:2020年10月31日
ジャンル:自己啓発・マインド

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編集後記

今月のトップ10は、すべて先月の書籍と入れ替わる結果となりました。先月から引き続き、コミュニケーション関係の書籍が上位を占めています。5月以降、どのような傾向が見いだせるのか、いまから注目していきたいと思います。

本の要約サイト「flier(フライヤー)」は、「書店に並ぶ本の数が多すぎて、何を読めば良いか分からない」「立ち読みをしたり、書評を読んだりしただけでは、どんな内容の本なのか十分につかめない」というビジネスパーソンの悩みに答え、ビジネス書の新刊や話題のベストセラー、名著の要約を1冊10分で読める形で提供しているサービスです。通勤時や休憩時間といったスキマ時間を有効活用し、効率良くビジネスのヒントやスキル、教養を身につけたいビジネスパーソンに利用されているほか、社員教育の一環として法人契約する企業も増えています。

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