コンビニと他業態とで異なるプチ贅沢指標の動向とは
(画像=PIXTA)

データサイエンティスト 博士(経済学) / 久永 忠
週刊金融財政事情 2021年4月13日号

 コロナ禍による消費者心理の冷え込みについて、経済産業省のMETI×NOMURAコンシューマーセンチメント・インデックス(消費者心理指標)から見てみよう。同インデックスは、①POS-プレミアム志向インデックス(プチ贅沢指標)、②POS-コンビニエンス志向インデックス(利便性指標)、③POS-生活体感物価インデックス、④CPIナウキャスト(消費者物価予測指標)──の四つから構成される。

 このうち今回注目する指標は、プチ贅沢指標である。この指標は同一品目内の高価格帯商品(プレミアム品)と低価格帯商品(買い得品)の売上指数の比を指標化している。例えば、「ビール」に注目すると、プレミアムビールに属する商品群と第三のビールに属する商品群から指標を計算する。プチ贅沢指標が1以上であればプレミアム品への志向性が強く、1未満であれば買い得品への志向性が強いことを示している。

 図表のとおり、全業態の指標は、1回目の緊急事態宣言下においては0.97(5月3日の週)で底を打った後、宣言明けの5月31日の週には1.02とプレミアム志向に転じ、8月2日の週まで漸増傾向を示した。これを牽引したのが、7月から8月にかけてプレミアム志向が非常に強くなったコンビニエンスストアである。コンビニでは5月31日の週に1.03だった指標が、8月2日の週には1.26に達した。

 これとは対照的に、11月1日の週には、ホームセンター(1.26)、スーパーマーケット(1.13)およびドラッグストア(1.18)におけるプレミアム志向が急速に強まった。一方、コンビニ(1.02)においては買い得品志向が強まっている。9月から10月は全国の新型コロナの新規感染者数が3,000~4,000人で安定していた時期であり、消費者心理が一時的に改善したとみられるが、コンビニでは他業態のようなプレミアム志向の強まりがなかったようだ。

 直近1カ月ほどの指標の動きを見ると、ホームセンターなどにおいてプレミアム志向が強くなる傾向にある。しかし、生活必需品が主となるスーパーにおいて買い得品志向が強い状況は、景気停滞の一端を表している。

コンビニと他業態とで異なるプチ贅沢指標の動向とは
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(提供:きんざいOnlineより)