確定申告をする前に引っ越しをした場合、どこで申告をすればいいのか悩む人もいるだろう。また引っ越し代が経費になるかも気になる点だ。この記事では確定申告と引っ越しについて詳しく解説する。
確定申告と引っ越しに関するQ&A
最初に、確定申告と引っ越しに関するよくある3つの質問に答えていこう。
引っ越しをしたらどこで確定申告すればいい?
確定申告前に引っ越しをした場合、原則として引っ越し先の住所を管轄している税務署で確定申告をする。住民票を異動しているかどうかにかかわらず、手続きをする時点で住んでいる場所で申告すると覚えておこう。
確定申告前に引っ越しをした場合、原則として引っ越し先の住所を管轄している税務署で確定申告をする。住民票を異動しているかどうかにかかわらず、手続きをする時点で住んでいる場所で申告すると覚えておこう。
個人事業主で引っ越しした場合、引っ越し代は必要経費になる?
事務所の引っ越しの場合、引っ越し代は経費として計上することができる。個人事業主で、住居と事務所を兼用している場合は、住居面積の使用割合に応じて引っ越し代を案分する。
事務所の引っ越しの場合、引っ越し代は経費として計上することができる。個人事業主で、住居と事務所を兼用している場合は、住居面積の使用割合に応じて引っ越し代を案分する。
ふるさと納税後に引っ越しをした場合の所得税控除はどうなる?
ふるさと納税時と翌年1月1日の住民票内容が異なる場合は、確定申告の際に寄付金受領証明書の再発行を依頼せずに、申告書に新しい住所を記入する。ワンストップ特例を利用している場合は、ふるさと納税をしている自治体に住所変更を届け出る。
ふるさと納税時と翌年1月1日の住民票内容が異なる場合は、確定申告の際に寄付金受領証明書の再発行を依頼せずに、申告書に新しい住所を記入する。ワンストップ特例を利用している場合は、ふるさと納税をしている自治体に住所変更を届け出る。
引っ越しをした場合の確定申告先について
確定申告が必要な人は、法人や個人事業主だけではない。ここでは、どのような人が確定申告をしなければならないか、また確定申告をしたほうがよい人や、確定申告をする人が引っ越した場合の申告先について解説する。
そもそも確定申告が必要な人とは?
本来確定申告とは、所得があるすべての人が行うものである。しかし給与所得を得ている人の大部分は、会社などの給与支払先が給与から源泉徴収をして所得税を納めている。年末調整で精算をしているため、通常は確定申告の必要はない。
しかし、次のような人は確定申告をする必要がある。
• 自営業で、収入から経費を差し引いた所得が1年間で38万円を超える人
• 給与所得とは別に、投資や不動産所得、副業などの収入が1年間で20万円を超える人
• 不動産の譲渡所得(売却益など)があった人
• 年末調整してもらえない年収2000万円以上の人
• 転職をして、前職の年末調整をしていない人
• 年金から所得控除額を差し引いて、残額がある人
確定申告をしたほうが得になることがあるのは、次のような人だ。
• ふるさと納税をしていて、ワンストップ特例制度を利用していない人
• 医療控除の対象となる人(1年間の家族の医療費が10万円を超えるなど)
• 住宅ローンを組んでおり、住宅ローン控除を受ける人
• 寄付をした人
• 投資や不動産譲渡で損益を出した人
• 退職してから再就職をしていない人
これらに当てはまる人は、確定申告をしなかったからといって問題があるわけではない。しかし、本来なら受けられる控除や税金の還付などを受けられなくなる場合があるので、確定申告を忘れないように注意しよう。
引っ越しした場合、確定申告先はどこになる?
確定申告をする場所は、原則として1月1日に住民票のある場所を管轄している税務署になる。引っ越しをした場合は、引っ越し先の住所の管轄税務署で確定申告をするのが基本だ。
給与所得者で源泉徴収票を受け取っている人が、確定申告期限内に引っ越しなどをした場合、源泉徴収票に記載されている住所と現住所が違う場合もあるだろう。そのような場合でも、前の住所、すなわち源泉徴収票に記載されている住所ではなく、現住所の管轄税務署で確定申告をする。
何らかの事情で引っ越しをしたのに住民票を移していない場合も、住民票を移しているかどうかにかかわらず、確定申告は今住んでいるところで行う。
確定申告は、「今居住している場所で行う」という原則を覚えておこう。
e-Taxを利用していて引っ越しした場合の手続きは?
e-Taxを利用して確定申告や納税をしている人が引っ越しをした場合は、電子証明書の内容変更が必要だ。新しい住所で電子証明書を取得してから、e-Taxの登録内容を変更しよう。
納税を振替納税(口座引き落とし)にしていて引っ越しをした場合は、引っ越し先の税務署で改めて「預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書」を提出して振替納税の手続きをしないと税金の引き落としが行われない。口座引き落としができないと、延滞税が課されることもあるので注意しよう。
個人事業主が引っ越しをした場合の確定申告について
個人事業を立ち上げて初めての確定申告を迎える前に、住居や事務所の引っ越しをする人もいるだろう。自宅と事務所を兼ねた住居にしていたが、新たに事務所だけを移転させるといったケースもあるかもしれない。
ここでは、個人事業主が引っ越しをした場合の確定申告について解説する。
個人事業主が引っ越しする場合に必要な手続きは?
個人事業主で、住んでいる住所と事務所の住所が違う場合、あらかじめ申告をしておけば、居住地ではなく事務所の所在地を管轄している税務署に申告することができる。自宅か事務所のいずれかで、申告に行きやすいほうを選ぶとよいだろう。
引っ越しをして事務所の住所が変わる場合は、自宅兼事務所でも事務所だけでも、届け出をしている事務所の住所に変更があれば、「個人事業の開業・廃業等届出書」の提出が必要となる。
引っ越しをして今まで申告や納税をしていた税務署が変わる場合は、引っ越し前に「所得税・消費税の納税地の異動に関する届出書」を提出して申告しておく必要がある。
引っ越しで住所と事業所の住所が異なるようになった場合
引っ越しで居住地は変わるが、事務所は変わらない場合、住民票を異動するだけになる。事務所として届け出をしている住所は変更する必要がないからだ。
しかし自宅兼事務所だった住居を分けて、新たに事務所を開設する場合は、先ほど事務所の引っ越しで説明したのと同じように、届け出をしている事務所の住所が変更になるので、開業時に提出した「個人事業の開業・廃業等届出書」を再度提出しなければならない。この届け出は、同じオフィスビル内で所在階を変更するだけのような引っ越しでも必要だ。
新しく事務所を開設することで管轄の税務署が変わる場合も、引っ越しのときと同様に「所得税・消費税の納税地の変更に関する届出書」の提出が必要だ。
引っ越し代は必要経費として申告できる?
個人事業主として届け出をしていても、法人と同じように独立している事務所を引っ越しする場合の費用は必要費用として申告できる。自宅兼事務所にしていた住居から、事務所だけを新設して引っ越す場合の費用も、必要経費として上げることが可能だ。
しかし自宅兼事務所のまま新しい場所に引っ越す場合は、引っ越し費用すべてを必要経費として申告することはできず、自宅と事務所との使用割合に応じて引っ越し費用も案分する必要がある。たとえ事務所としての使用割合が大部分を占めていても、通常は引っ越し費用の半分程度までしか認められない場合が多いことを覚えておこう。
引っ越し費用を必要経費として申告する場合は、勘定科目を「雑費」として経費計上し、ダンボール箱などは「荷造運賃」として計上する。
事務所の移転に伴い、従業員の引っ越しも必要になる場合、従業員の引っ越し費用を経費計上する際の勘定科目は「福利厚生費」や「旅費交通費」などになる。
ふるさと納税の確定申告と引っ越しについて
ふるさと納税とは、「納税」という言葉がついているが、実質は各自治体への寄付になる。ふるさとや応援したい自治体に「ふるさと納税」として寄付する金額が控除の上限額内であれば、2000円を超えた額が全額戻ってくる。さらに寄付を受けた自治体から返礼品などが贈られてくることから、ふるさと納税の人気は近年上昇してきている。
しかし確定申告をしなければ控除された金額が還付されず、節税のメリットを得ることができないので注意が必要である。
ふるさと納税後に必要な確定申告とは?
ふるさと納税とは、自治体に対して「ふるさと納税」という形で寄付をすると、寄付金のうち2000円を超える全額について、所得税の還付や住民税の控除が受けられるというものだ。
つまり寄付した額から2000円を引いた額と自分が支払うべき他の税金とが相殺される。さらに寄付を受けた自治体から返礼品が贈られるなどの特典もあるため、ふるさと納税をする人が増えている。
ふるさと納税で寄付した額分の税金の還付や控除を受け取るためには、ふるさと納税をした翌年の確定申告が必要だ。確定申告をしないと、税金の還付や控除が受けられないため、忘れないように注意しよう。
確定申告の手続きを忘れそうな場合や手続きをするのが大変な場合は「ワンストップ特例制度」の利用がおすすめだ。
「ワンストップ特例制度」とは、寄付の都度、あらかじめ各自治体に申請をしておくことで、確定申告をせずにふるさと納税で住民税の控除を受けられる仕組みである。1年間で寄付できるのは5自治体まで、所得税の還付ではなく住民税からの控除だけになるなど、確定申告による手続きとは異なるが、メリットは申告忘れの心配がないことだ。
ふるさと納税後に引っ越しした場合の手続きは?
ふるさと納税時とふるさと納税をした翌年1月1日以降の住所が異なる場合、現住所のままで確定申告を行っても問題はない。
ふるさと納税後に引っ越しをした場合、ふるさと納税をした先の自治体から送付されてくる「寄付金受領証明書」と現在の住所が異なるが、確定申告時にそのまま提出することが可能なので、改めて寄付金受領証明書の再発行の依頼をしなくてもよい。
返礼品や各種書類が届く前に引っ越しをした場合は、新しい住所に送ってもらえるように寄付先の自治体に住所変更の連絡を直接する必要がある。ふるさと納税ホームページのマイページの住所変更手続きだけでは、各自治体へ通知されないので注意しよう。
ワンストップ特例制度を利用中に引っ越ししたら?
ワンストップ特例制度を利用中に引っ越しをした場合は、ふるさと納税をした各自治体に住所変更の届け出をしよう。届け出の用紙は各自治体から取り寄せられるほか、ふるさと納税のサイトからダウンロードすることもできる。
引っ越し前に確定申告先の確認をしておこう
確定申告は、原則として引っ越し先で行うことになる。引っ越しをする前に、新しい確定申告先となる税務署の確認をしておくようにしよう。
税務署に出向かなくても、国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」で確定申告書を作成したり、e-Taxで申請したりすることも可能だ。引っ越しをきっかけに、電子申請での確定申告を取り入れてみてはいかがだろうか。