払い過ぎた税金を確定申告で取り戻したい人にとって、「還付金」がいつ振り込まれるかは気になるポイントだ。一方、所得や税額から控除できる項目は多く、計算も煩雑なことから、間違えやすいことも事実だ。この記事では、確定申告で還付金を受け取る方法や手続き、必要な書類、間違いやすいポイントのほか、還付金受け取りまでのスケジュールなどについて解説する。
還付申告に関するQ&A
最初に、還付申告によくある3つの質問に答えよう。
税金が戻る還付申告とは?
「還付申告」とは、「所得税」について払いすぎた税金を還付金として戻るように申告する制度のことだ。確定申告書を作成して収支計算した結果、「申告納税額」がマイナスであれば還付金が戻り、プラスなら税金を納める。
「還付申告」とは、「所得税」について払いすぎた税金を還付金として戻るように申告する制度のことだ。確定申告書を作成して収支計算した結果、「申告納税額」がマイナスであれば還付金が戻り、プラスなら税金を納める。
確定申告と還付申告の関係性とは?
サラリーマンの多くは勤務先で年末調整をしてもらうため、確定申告は不要だと思われがちだ。しかし書類に不備があり、所得控除が適用漏れしていた場合や、医療費控除や寄付金控除等の年末調整の処理範囲外の控除を受ける場合は還付申告をすることもある。
つまり確定申告や年末調整を行ったあとに申告するのが「還付申告」だ。
サラリーマンの多くは勤務先で年末調整をしてもらうため、確定申告は不要だと思われがちだ。しかし書類に不備があり、所得控除が適用漏れしていた場合や、医療費控除や寄付金控除等の年末調整の処理範囲外の控除を受ける場合は還付申告をすることもある。
つまり確定申告や年末調整を行ったあとに申告するのが「還付申告」だ。
還付申告となる前提条件は?
医療費や寄付金などを支払った場合、確定申告をすれば必ず還付金が戻ると誤解している人も多い。実際は給与や年金、退職金などには原則、所得税の源泉徴収が義務付けられている。
扶養親族の控除や基礎控除などの各種控除額を収入から引いた結果、源泉徴収される税額が「0円」となる場合もある。その後の確定申告で控除額を増やしたとしても所得税が引かれることはなく、還付される所得税はない。還付申告の前提条件には、「所得税が引かれていること」が挙げられる。
医療費や寄付金などを支払った場合、確定申告をすれば必ず還付金が戻ると誤解している人も多い。実際は給与や年金、退職金などには原則、所得税の源泉徴収が義務付けられている。
扶養親族の控除や基礎控除などの各種控除額を収入から引いた結果、源泉徴収される税額が「0円」となる場合もある。その後の確定申告で控除額を増やしたとしても所得税が引かれることはなく、還付される所得税はない。還付申告の前提条件には、「所得税が引かれていること」が挙げられる。
還付申告の対象となるケース
サラリーマンの場合、収入が給与のみであることから、確定申告の必要がないと思う人も多い。しかし実際は、還付金を受け取れる場合もある。
なぜなら給与から差し引かれる源泉徴収税の計算方法は、認められる控除が適用されていない場合があるからだ。通常年末調整を行う際に控除内容を会社に申請することで、過不足額が精算される。
収入が給与のみの場合でも、確定申告で還付金を受け取れるケースは次のとおりだ。
・年末調整で会社への控除書類を提出し忘れていた
・年末調整では受けられない控除を使いたい
特に「年末調整では受けられない控除を使いたい」に当てはまる場合は、還付金を受け取れるかどうかを事前に確認しよう。
還付時期は確定申告の提出方法により異なる
確定申告をした人にとって還付時期は気になるところだろう。還付時期は確定申告の提出方法によって異なる。以下、提出方法ごとの還付時期を紹介する。
税務署なら約1~2ヵ月後
確定申告書を税務署で直接手続きした場合は、約1~2ヵ月後に還付される。申告書類を税務署が確認し、書類内容に不備や漏れなどがなければ還付が確定する。還付金額と振込日は、「はがき」に記載されて送られてくるので注意が必要だ。
郵送も約1~2ヵ月後
確定申告書を税務署に郵送した場合も、約1~2ヵ月後に還付される。郵送の場合、投函日ではなく、消印の日付が提出日となる。
郵送の際は、「信書」を送れない宅配便などでは提出できない。ポスト投函の場合、回収時間よっては翌日の回収となることもあるため、余裕を持った投函をおすすめする。控えが必要な人は、切手を貼った返信用封筒を同封することで返送してもらえる。
e-Taxなら3週間程度
e-Taxで電子申告を行った場合は、持参や郵送よりも還付時期が早く、約3週間後に還付されるケースが多い。e-Taxにログインすれば、還付予定日や金額、処理状況も確認できる。
また、確定申告の還付時期は提出時期によっても変わる場合がある。税務署が混雑する時期では特にその影響が大きくなる。状況にもよるが、確定申告の期限ぎりぎりに提出した場合は、時間がかかることが多いようだ。
還付申告は確定申告書を使用
還付申告の際は、「確定申告書」を使用する。所得の種類が以下の場合、「確定申告書A」を使う。
・給与所得
・雑所得(公的年金等、その他)
・配当所得
・一時所得
一方、「確定申告書B」を使うのは以下のとおりだ。
・事業所得
・不動産所得
・利子所得
・譲渡所得
一般的には、還付申告の対象は「源泉徴収される給与所得者」や「年金受給者」などとなるため、「確定申告書A」を使うことが多い。業務委託などで報酬を得ている場合、依頼主から送付される「支払調書」に源泉徴収額が記載されている。
還付申告では支払調書を税務署に対して提出する義務はない。発行に対して法的義務もない。ただし、源泉徴収額を正確に集計するために重要な資料なので、可能な限り発行してもらうほうが無難だろう。
還付申告で必要な添付書類
還付申告で必要な添付書類は以下のとおりだ。
・源泉徴収票
・生命保険、医療保険、地震保険などの控除証明書
・退職後に自分で支払った国民年金や国民健康保険、任意継続健康保険の納付書
国民健康保険と任意継続健康保険以外は、コピーなどの写しではなく、原本を提出する。後々必要になるかもしれない源泉徴収票などは、コピーを取って手元に保存しておこう。
サラリーマンでも還付金がもらえる場合も
一般的に、サラリーマンは自分で所得税や住民税を納付することはない。勤務先が給料から所得税を源泉徴収し、年末調整で所得税の納税手続きを行っているからだ。
ただし、サラリーマンでも確定申告が必要な場合もある。確定申告が必要でありながら所得税を納めなかった場合は、ペナルティがあるので注意したい。
年末調整で還付金をもらえるケースは次のような場合だ。
・扶養家族が増えた
・社会保険料控除
・離婚や死別によりシングルマザー、シングルファザーとなった
・本人が障害者、または家族が障害者になった
これらの場合、年末調整で税金が還付されることがある。給料で天引きされない、家族の国民健康保険料や国民年金保険料を払っている人は、年末調整で社会保険料控除の適用を受けることができる。
一定の要件を満たすことで、「寡婦控除」「寡夫控除」「障害者控除」などの適用を受けることも可能だ。
還付の金額はどのように計算される?
還付されるのは、納めた源泉徴収税額や予定納税額より年間の所得税額を超えた部分の金額のみだ。
年間の所得税額を計算するには、まず10種類に分類した収入から所得ごとに定められている必要経費や一定の控除額など控除する。それぞれの合計金額から医療費控除や扶養控除などの所得控除を控除した金額に税率をかけて計算する。
一般的なサラリーマンが受ける年末調整は、勤務先の給料をもとに同様の計算をし、適正な年間の所得税額を算出して納税する。ただし年末調整では以下の控除は考慮されない。
・雑損控除
・医療費控除
・寄付金控除
・住宅ローン控除(税額控除)
これらは確定申告をすれば控除されるので、忘れないようにしよう。
還付申告で注意すべきポイント
還付申告で注意すべきポイントがいくつかある。それぞれ確認しておこう。
扶養親族の付け替え
扶養親族の付け替えで間違えやすいポイントは、「どちらか一方が確定申告書を提出して後では認められない」ということだ。
例えば、年末調整で源泉徴収されている夫婦が、扶養親族を付け替えることで税額が安くなることから、ともに扶養親族を付け替えて確定申告書を提出した場合は付け替えが認められる。
一方、夫は扶養親族を付けて年末調整、妻は確定申告書を提出した後、夫に付けた扶養親族を妻に付け替えることで税額が安くなることに気づき、妻に扶養親族を付けた確定申告書を再提出したとなると、これは認められない。
扶養親族の付け替えにはどちらも確定申告が必要だが、一方がすでに確定申告書を提出している状態で再提出はできない。確定申告書を再度提出することで「修正申告」はできるが、扶養親族の付け替えは修正申告の要件外である。
年末調整で付けた扶養親族を確定申告で付け替えること自体は可能だ。
医療費控除の上限への認識
医療費控除の上限への認識も間違えやすいポイントの一つだ。「10万円を超えた医療費しか控除できない」という誤解もよくある。医療費控除の計算式は次のとおりだ。
医療費控除額=支払った医療費-保険金(給付補填金)-「総所得金額×5%」(10万円を上限)
よく勘違いされている「10万円」とは、支払った医療費から差し引く金額の「上限額」を指している。総所得を300万円とした場合、差し引きする金額は300万円×5%=15万円だ。
もし総所得金額が300万円未満なら、差し引く金額も15万円未満となるため、医療費控除額が増える。医療費が10万円を超えなかったとしても、確定申告書から総所得金額を求め、医療費控除額の計算をしてみることをおすすめする。
ふるさと納税制度の対象範囲
対象となる都道府県・市区町村に寄付をする「ふるさと納税」は、寄付した自治体からの返礼品をもらえるうえ、確定申告では寄付金控除も受けられるお得な制度だ。
ふるさと納税制度は寄付金額に応じた一定の計算によって、所得税と翌年の住民税が安くなる。しかし、ふるさと納税による控除は原則として確定申告が必要だ。
年末調整を行うサラリーマンは対象範囲外と考えがちだが、そんな人におすすめするのが「ふるさと納税ワンストップ特例制度」だ。確定申告の必要がないサラリーマンでもふるさと納税を利用しやすくするための制度だが、次の要件を満たす必要がある。
・確定申告の必要がない給与所得者等である
・寄付した自治体が5カ所以内
・ワンストップ特例申請書の提出が完了している
これらの条件を満たし、ふるさと納税制度を利用した人は「ふるさと納税ワンストップ特例制度」を利用してみてはどうだろうか。
ふるさと納税の返礼品は一時所得
ふるさと納税で受け取った「返礼品」は一時所得に該当する。よって、所得税および住民税の課税対象となる。お金ではなく、品物なので時価が適用される。「○円相当」などの記載がある書類が同封されていれば、その金額を一時所得とする。
一時所得には50万円の控除がある。課税される場合、「50万円相当以上の返礼品を受け取った」「返礼品以外の一時所得が多額にあった」といったケースに限られるので覚えておこう。
申告を間違えたら更正の請求をしよう
確定申告の期限を過ぎ、計算を間違えて税金を多く支払っていることに気づいた場合は「更正の請求」で税金を取り戻すことが可能だ。確定申告の期限内に気づいた場合は、更正の請求ではなく「訂正申告書」の提出で問題ない。
更正の請求は「確定申告の期限から5年間」という期限がある。今年の確定申告に対して更正の請求ができるのは、5年後の3月15日までとなる。「過払い」に気づいたら、できる限り早めに手続きしておこう。
まずは還付要件に該当するかをチェック
還付申告の要件や手続きはどこか難しく感じる人も多いだろう。しかし具体的な状況を把握し、要件に該当するかどうかの判断さえできれば、それほど難しいものではない。
サラリーマンの場合は年末調整を受けていることから、還付される可能性にさえ気づかないケースも多い。過去の分も含めて5年分が対象となるので、計算してみると意外と大きな金額となることもある。
まずは自身が還付要件に該当するかを確認し、過去の申告分をチェックしてみることをおすすめする。