ワクチン接種による経済回復への期待感が高まる中、日本の一部の大学では今春、新型コロナによる「1年遅れの入学式」を実施しています。一方、海外ではオンライン授業が長期化しており、「大学生活を満喫できていない」「新しい友人を作る機会が減った」という不満の声が学生の間で上がっています。現在、失われた大学生活を埋め合わせるかのように、在学時代から個人投資家として投資を始める学生が急増しています。
学生時代から投資を始めるメリットと注意点を、学生向きの投資3選とともにご紹介しましょう。
若い層で高まる投資熱 大学生はコロナ現金支給の4割を投資に
3回にわたりコロナ給付金が支給されている米国では、大学生を含む若年層の間で消費意欲より投資意欲が高まっています。
ドイツ銀行が430人の米個人投資家を対象に実施した調査によると、現金支給のうち株式に投資する割合が最も高かったのは25~34歳の層で、「平均50%を株式に投資する」と回答しました。次に割合が高かったのは大学生を含む18〜24歳の層の40%で、35~54歳(37%)や55歳以上の層(16%)を上回りました。
また、全回答者の半数以上が「過去1年間に株式への投資を増やした」と答えましたが、45%が「初めて投資した」ことから、コロナが投資を始めるきっかけとなった人が多いことがわかります。
この傾向は他国でも見られます。英金融商品比較サイト「Finder.com」が英消費者2,000人を対象に実施した調査では、「1年以内に投資する予定」と答えたベビーブーマー世代(1945~1955年生まれ)は60%に留まったのに対し、ミレニアル世代(1981~1996年生まれ)とZ世代(1997年~2015年生まれ)は75%でした。
若年層が投資を始める理由を上の層と比較
コロナ禍でお金に関する価値観が変化したことが、若年層で投資への関心が高まっている理由の一つです。アルバイト先の閉店や休業で収入が減少した、あるいは失業した学生も多く、就職難や不景気が懸念されている現在、投資を「重要な収入源」と考える若者が増えているのです。
「銀行の金利が低い」「不労所得を得たい」といった理由とともに、アプリなどを利用して投資しやすい環境が整ったことも、若年層の投資を後押ししています。
中高齢層の主な投資目的が「老後資金」「いざという時に備えて」「生活水準を向上したい」といった生活に関わることであるのに対し、若い層は起業や留学、車の購入など、「自分の夢を叶えるための資金を獲得する手段」と考えています。そのため、ハイリスク・ハイリターンの投資を好む傾向が見られます。以下は、参考計算例であって実際の金額と異なります。
大学生が投資を始めるメリット
超低金利の現在、銀行に貯金しておくだけでは、お金は思うように増えません。例えば、30万円を金利0.150%の定期預金に1年間預け入れた場合、利息はわずか450円(単利・税引前)です。一方、3%の利回りで投資した場合は9000円、5%では1万5,000円と、短期間で大きな差が出ます。さらに30年間運用した場合は、3%で62万8,000円、5%で99万7,000円、8%で271万9,000円と、投資を始めるのが早いほど、利益を増やせる可能性が高くなります。
また、資産運用の知識や経験を得ると同時に、投資で得た利益を再投資することで、お金を効率的に増やす仕組みを作ることができます。養う家族がいないため、投資に使えるお金が比較的多いことも、学生や独身者の特徴です。若いうちから投資を始めるということは、お金では買えない「時間」を味方につけるということなのです。
大学生が始めやすい投資3選
投資の知識や経験があまりなく、資金も少ない大学生でもチャレンジしやすい投資は以下の3つです。比較的手間がかからないため、本業である勉強に支障が出ることもないでしょう。
1 投資信託
資産運用の専門家に運用を任せられる投資信託は、投資初心者にも人気の運用法です。分散投資でリスクを抑えることができ、近年は1ヵ月100円から始められるものもあるため、気軽にチャレンジできるでしょう。
2 ロボットアドバイザー
AI(人口知能)が投資に関するアドバイスやポートフォリオの提案、さらには運用まで代行してくれる便利な投資サービスです。「一任型」のロボアドを利用すると、自分の投資スタイルやリスク許容度、目標に合わせて適切な投資信託やETF(上場投資信託)を選択して購入し、必要に応じて自動的にリバランスなども行ってくれます。
3 ポイント投資
保有しているポイントを使って投資するという、新しいスタイルの投資です。楽天ポイントやdポイント、Tポイントなどを商品や現金に換金する感覚で、提携先の証券会社が提供する投資商品の購入に利用できます。ショッピングなどで貯まったポイントを投資に利用できるため、元本ゼロで投資を始められます。
大学生が投資する時の注意点
若いうちに投資を始めることは、資産形成について考える機会となります。しかし、年齢に関わらず、リスクや投資の仕組みを理解しないまま投資を行うのは危険です。米国では大学生が投資で大きな損失を出したことが原因で、自ら命を絶ったことが報告されるなど、若年投資家の鬱病や不安障害といったメンタルヘルスへの影響を懸念する声も上がっています。
若いうちは、時間を味方につけて「攻めの投資」でハイリターンを狙うこともできますが、投資のリスクや仕組みだけでなく、株式や企業について学び、正しい知識や情報を得ることが重要です。
学生の間で投資がさらに広がれば、「学生専用の投資商品」が登場するなど、新しい投資ブームが起こるかもしれません。
※本記事は投資に関わる基礎知識を解説することを目的としており、投資を推奨するものではありません。(提供:Wealth Road)