資産運用をスタートしようと証券会社で口座を開設したものの、投資初心者はそこからどう始めたらよいのか、途方に暮れてしまうものです。その悩みに応えるように、初心者も安心して少額から始められる投資信託が多く売り出されています。しかし投資初心者には、投資信託も難解な金融商品に映るかもしれません。資産運用で投資信託を活用するために、まずは投資信託の理解を深めていく必要があります。
 

目次

  1. 投資信託を学ぶためにまず理解すべきこと
    1. 主な投資対象1:株式
    2. 主な投資対象2:債券
    3. 主な投資対象3:不動産
    4. 主な投資対象4:コモディティ
  2. 投資信託のメリット・デメリット
    1. 投資信託のメリット:「少額」「分散投資」「プロに運用一任」の三拍子
    2. 投資信託のデメリット:元本割れ、手数料、取引のタイムラグには要注意
  3. 投資信託で知っておきたい用語
    1. インデックスファンド・アクティブファンド
    2. ノーロードファンド
    3. 為替ヘッジ
    4. 基準価額
    5. 分配金
  4. 投資信託での運用の流れ
    1. 銘柄を選ぶ
    2. 投資のスタイル、リスクを確認する
    3. いつ購入するのか、いつ売却するのか
    4. 投資信託の説明書「目論見書」、そして「運用報告書」を確認する
  5. 投資信託を運用する口座の種類と特徴を確認しよう
    1. NISA口座
    2. 金融機関の証券口座
    3. iDeCo口座

投資信託を学ぶためにまず理解すべきこと

投資信託には対象とする運用先によって、さまざまな種類が存在します。しかし、どの投資信託も仕組みは基本的に同じです。ですからまずは、その仕組みを理解することが重要になります。
 
投資信託は、投資家が拠出した資金を投資信託としてまとめ、運用するものです。資金の投資先は株や債券、不動産などで運用による利益が上がれば、資金を拠出した投資家に分配金として還元されます。つまり投資家は、投資信託というプラットフォームにお金を預けてプロに運用を任せる、というのが投資信託の仕組みです。
 
実際の手続きの面からみると、投資家が投資信託を購入するのは証券会社や銀行、郵便局といった金融機関です。金融機関は投資家から集めた資金を、株や債券の売買、お金の管理などを行う信託銀行に預けます。信託銀行は運用会社からの指示のもと、投資取引を行います。なお、指示がないときに資産は動くことはなく、資金も法律やルールにのっとって守られています。
 
利益が発生した際の分配金、投資信託を解約する際の資金の返還は金融機関を通して行われます。投資家は、販売の窓口となる金融機関とやり取りをするだけで、投資信託の運用会社と関わることはありません。文字通り、運用に関してはプロの手に任せることになるため、投資経験が浅い初心者にとって投資信託は強い味方ともなり得るのです。
 
では投資家から集められた資金で、投資信託はどのように運用されているのでしょうか。主な投資対象となるのは次の4つです。
 
▽投資信託の主な投資対象
(1)株式
(2)債券
(3)不動産
(4)コモディティ
 

主な投資対象1:株式

株式を対象とした投資信託は、さまざまな企業の株式を組み込み、1つのパッケージのような商品になっています。一例として、日本株を対象とした投資信託では、日経平均株価を構成する225の企業の株式を組み入れ、各銘柄の割合をプロの運用者が決定するタイプのものがあります。
 
実際に株式投資を始めようとする場合、銘柄によっては数百万円の購入費用が必要です。しかし投資信託を活用すれば、少額の資金で幅広い企業の株に投資できるだけでなく、分散投資のメリットも享受できます。幅広い銘柄全体を対象とする投資信託のほか、より高い成長が期待できる産業に絞ったり、医療など特定の業種のみを対象とする投資信託もあり、ラインアップが充実しています。
 
投資信託には日本株以外でも、米国、中国など各国における株式を対象とするものもあります。投資初心者にとっては、海外への投資はハードルが高いですが、投資信託を活用すれば海外株式への投資も手軽にできるようになります。
 
また先進国、新興国といったように国をグループに分けたり、あるいは世界全体の株式を含めている投資信託もあります。新興国の場合、高成長が期待できる反面、政変や不測の事態によって、株価が下落するリスクは先進国よりも高い傾向です。さまざまな国の株式に分散投資している投資信託を選択すれば、リスクをコントロールしながら高成長を取り込むことが可能です。

主な投資対象2:債券

2つめの債券に関しては、主に国や地方自治体が発行する公債、企業が発行する社債を投資対象とします。一般的に債券は株と比較するとリスクが低いとされ、安定的な運用を目指す投資家にとっては選択肢の1つとなります。
 
株と同様、日本国内の債券を投資対象とするものから、米国債、米国内の州政府が発行する地方債、世界銀行やアジア開発銀行、米州開発銀行などの国債機関が発行する債券を対象とする投資信託まで揃っています。

主な投資対象3:不動産

3つめは不動産を対象とするREITです。Real Estate Investment Trustの頭文字を取ってREIT(リート)と表記され、日本国内ではJapanの「J」を取って、J-REITと呼ばれています。
 
個人で不動産投資というと、アパート経営などをイメージし、手間とリスクがかかるように感じられるかもしれません。しかし、投資信託では投資家から集める資金の規模を生かして、オフィスビルやホテル、商業施設や物流倉庫、病院など大型で多様な不動産への投資が実現可能となります。一投資家としては手が届かないような大型不動産への投資も、REITを活用すれば少額から行えます。
 
投資対象となる物件の選定はプロが実施するため、REITを利用した不動産投資には物件の目利きが不要となる点も魅力といえます。不動産投資は流動性が低く、物件を売却したい場合は買い手を見つける必要がありますが、REITは流動性の高さから、ほかの投資信託と同様に投資家が売却したいタイミングでの換金が可能です。

主な投資対象4:コモディティ

最後のコモディティについては、これから投資を始める人にはイメージしにくいかもしれませんが、原油や金、プラチナからトウモロコシに大豆といった商品を対象とする投資信託です。金の積み立ては投資家にとっても馴染み深い一方、エネルギーや穀物類への投資にあまり馴染みがない場合にはハードルが高く感じられるでしょう。
 
ところが投資信託を活用することで、資産のポートフォリオ(構成、組み合わせ)にコモディティを組み入れられるようになるのです。直近では、金価格が市場最高値を更新したニュースが伝えられており、コモディティを対象とした投資信託にも注目が集まっています。
 
このように投資信託は主に4つのカテゴリーで運用されます。国内だけを対象とする投資信託、海外を対象とする投資信託と明確に分類される場合と、国内外さらには4つのカテゴリーを組み合わせた投資信託も存在します。投資信託を学ぶにあたっては、まずはどの国・地域が対象で、何に投資をしているのかを把握することが重要となります。

投資信託のメリット・デメリット

資産運用に投資信託を活用する場合、そのメリットとデメリットについても学ぶ必要があります。

投資信託のメリット:「少額」「分散投資」「プロに運用一任」の三拍子

まずメリットについては、投資信託の種類のなかでも言及したように、少額からスタートできる点が挙げられます。投資初心者の場合、十分な知識や経験もないまま、まとまった投資資金を一気につぎ込むことは、ギャンブルに身を投じるようなものです。
 
しかし少額から投資を始められれば、たとえ損失を被ったとしても比較的傷は浅くてすみます。株式の場合、企業によっては投資に何百万円、不動産ならオフィスビルに何千万円、何億円という資金が必要となることもあります。しかし、株式や不動産を対象とした投資信託を活用すれば、まとまった投資資金を準備しなくても、気軽に運用が始められるのです。
 
日本株を対象とする投資信託を例に挙げると、1つの企業の株だけに投資するのではなく、幅広い企業の株に投資するため、投資信託を活用すれば分散投資も実現できます。投資初心者は、どれだけ利益を上げられるかという観点に着目する傾向がありますが、投資にはリスクをどのようにコントロールできるか、という観点も不可欠です。
 
特定の企業の株価が急騰した場合、その株だけに投資していたらより高いリターンを得られたと悔しい思いに駆られるかもしれません。しかし、その企業が後に倒産して株式が紙切れになってしまう可能性もあります。そうしたリスクをコントロールするには、幅広い企業に分散投資をすることが対策の1つとなります。
 
投資信託の仕組みや内容について勉強をしても、いざ投資先を絞り込むのは大変かもしれませんが、投資信託ではその作業をプロに一任できることもメリットとして挙げられるでしょう。資産形成の過程でプロを活用するのは、賢明な選択です。運用を任せている間に、投資信託に関する知識を深め、運用パフォーマンスが資産運用の目標に沿っているかをチェックできる判断力を身につけていきましょう。

投資信託のデメリット:元本割れ、手数料、取引のタイムラグには要注意

投資信託も金融商品の一種であり、必ずしも万能というわけではなくデメリットも存在します。投資信託はプロが運用しますが、利益が確約されているというわけではなく、元本割れするリスクがあることを念頭に置かなければなりません。知識と経験が豊富なプロが運用しても、予期せぬ事態が発生した場合などは相場が下落して、損失となることもあります。
 
投資家が投資信託を購入する際、保有期間中、売却するそれぞれのタイミングで手数料を負担する必要があります。長期的な運用を視野に投資信託を活用する場合、手数料負担も相応になるため、運用の際にはしっかりチェックしておきましょう。手数料を抑えるためには、購入時の手数料が無料のノーロード型の投資信託を活用する方法もあります。
 
投資信託の売買は販売会社を介して実施され、販売会社が申し込みや解約の手続きを運用会社と行います。このため、投資信託の売買には数日要することが一般的です。この数日の間にマーケットが変動し、購入および売却をしたいと考えていた価格より乖離してしまうことがリスクとして挙げられます。このリスクを回避するには、上場型の投資信託であるETFを活用することが有効です。ETFは株式のように証券所に上場している投資信託のため、売買の発注を出せば取引が成立するのでタイムラグが発生しません。

投資信託で知っておきたい用語

投資信託の仕組みや種類を通して大まかなイメージが掴めたところで、個別の投資信託について勉強しようとすると、難解そうな専門用語がいくつも登場します。最初からすべてを理解するのは大変ですが、まずはポイントとなりそうな専門用語から学習して理解を深めていくことが大切です。使用頻度の高い用語をいくつかピックアップして、簡単にその説明をします。

インデックスファンド・アクティブファンド

インデックスファンドとは、日経平均株価などあらかじめ指定した指標に連動することを目指す投資信託です。アクティブファンドはその指定された指標を上回る運用益を目指すことを運用方針に掲げられた投資信託です。

ノーロードファンド

投資信託は購入時、保有時、売却時とそれぞれ手数料がかかります。ノーロードファンドと呼ばれる投資信託では、このうち購入時の手数料が無料となります。現在では多くのノーロードファンドが登場しているため、この用語を目にする機会も多いでしょう。

為替ヘッジ

米国株など外貨建て資産を対象とする投資信託の場合、円安あるいは円高が進行することで為替のリスクが発生します。例えば1ドル=100円の為替ヘッジをしておくと、たとえその後に1ドル=90円の円高が進行してもあらかじめ設定された100円で取引が可能となります。特に円高となった場合に、円建てで資産が目減りするのを回避するために為替ヘッジが有効です。外貨建て資産を対象とした投資信託は、為替ヘッジをしているかどうかのチェックをしておく必要があります。

基準価額

基準価額は投資信託の値段と理解できます。投資信託には株や債券など日々値動きをしている金融商品が組み込まれているほか、配当金なども入ってきます。総資産から手数料を差し引いて算出されるのが基準価額で、その数値は変動するため、取引の際は値動きの推移を確認することも重要です。

分配金

投資信託が株や債券、不動産などに投資をして利益が上がった際、投資家に分配されるお金です。株式運用による配当や債券からの金利収入をイメージするとよいでしょう。しかし、分配金の支払いが保証されているわけではなく、運用成績によっては分配金が未払いとなるケースもあります。
 
ここでは基本となる用語を紹介しましたが、投資信託の専門用語は数多くあります。すべてを暗記する必要はなく、知らない用語は投資信託協会の用語集や各証券会社のホームページでも説明されていますので、その都度、チェックをしながら知識を深めていきましょう。

投資信託での運用の流れ

どこまで勉強すれば投資信託での運用をスタートできるかという明確なラインはありません。知識不足で不安に駆られていては、いつまで経っても投資を実践できなくなってしまいます。投資信託についてある程度の理解が得られたなら、実際に運用をしつつ学ぶということも勉強方法の1つとなります。

銘柄を選ぶ

投資信託の種類は約6,000本に及ぶため、どれを選んでよいか迷ってしまう投資初心者も多いでしょう。まずは、ご自身の運用におけるリスクの許容度を定めることが重要です。果敢にリスクを取りながら資産を増やす運用なのか、あるいはリスクは抑えながら堅実な運用を目指すのか、運用スタンスを明確にしなければなりません。

投資のスタイル、リスクを確認する

また、投資を開始する年齢によっても取れるリスクは異なります。若年層であれば、投資信託の基準価額が下がっても、挽回するための時間的な余裕が残されているため、海外株式で積極的にリターンを追求する投資スタイルを採用することができます。
 
一方でシニア層ともなると、大きな下落に見舞われたときに限られた投資期間でリカバリーができない可能性もあるため、リスクには慎重に向き合わなければなりません。この場合、国内債券を中心としてリスクをコントロールしながら、貪欲に利益を求めるというよりは、資産を減らさないというマインドを軸において運用するのが賢明でしょう。
 
一般的に債券は株式よりリスクは低く、日本国内向けの投資は海外投資よりも為替などの変動がないため、低リスクとされます。また海外の投資においては、先進国向けは新興国よりも安定的とみなされる傾向があります。投資家自身の年代、資産状況などから投資信託をリスクの度合いによって絞り込んでいきます。それでもやはり選択肢を絞り込めないという場合には、全世界の株や債券、不動産に分散して運用する投資信託を選ぶのもよいでしょう。

いつ購入するのか、いつ売却するのか

投資信託の絞り込みができれば、いつ購入するべきかという問題が生じます。できるだけ安いときに買って、高い時に売りたいのはすべての投資家が考えることです。しかし、最安値あるいは最高値というのは「後から振り返るとそうだった」ということです。そのため、最安値、最高値を付けているときはまだ下がる、まだ上がるかもしれないという思惑に駆られ、なかなか取引に踏み切れないというのが投資の常です。
 
投資資金を一気につぎ込んで、高値掴みを避けるための運用スタイルとしては、「ドルコスト平均法」というものがあります。これは、投資信託を100万円分一括して購入するのではなく、たとえば1万円分を100回に分けて購入していく方法です。こうすることで、高値掴みを回避し、長期的に積み立てることでリスクをコントロールできることになります。

投資信託の説明書「目論見書」、そして「運用報告書」を確認する

投資信託はそれぞれ「目論見書」が閲覧できます。これは、投資信託の説明書のようなもので、どのような投資先に資金を配分するのか、投資スタンスはインデックスかアクティブか、手数料の設定水準などさまざまな情報が詰め込まれています。時には数十ページにも及ぶため、すべてを読みこなすのは困難ですが、上記のような基本的な情報から自分の運用に合致した投資信託かどうかを判断し、取引を開始していきます。
 
投資信託購入後はそのまま放置するのではなく、保有期間中は公表される運用報告書をチェックしましょう。想定していた通りの利益を上げられているか、あるいは値下がりした場合の要因などについても分析をして、そのまま投資を継続するのか、あるいは売却してほかの投資信託に乗り換えるのかを検討しなければなりません。つまり、投資信託は購入したら学びが終わりを迎えるものではなく、投資を継続する限り、常に知識のアップデートが求められるということです。

投資信託を運用する口座の種類と特徴を確認しよう

最後に投資信託を運用するためのプラットフォームである口座を3種類に分けて説明します。自分の運用目的にあった口座を活用していくことが大切です。

NISA口座

運用した投資信託を売却する際に利益や分配金が発生すると、それらに対し約20%の税金が差し引かれます。しかしNISA口座を活用すれば、非課税となります。NISAでは毎年120万円の運用を上限として、5年間非課税期間が適用されます。NISAには「つみたてNISA」という種類もあり、こちらは年間の非課税枠は40万円と通常のNISAの3分の1ですが、非課税期間が20年間に及びます。NISA口座は1人1口座のみ開設可能なので、毎年の資産運用に拠出する金額に合わせて、NISAあるいはつみたてNISA口座のどちらかを選択すればよいでしょう。

金融機関の証券口座

NISA口座の限度額を超えて投資信託を運用する場合、銀行や証券会社で投資信託を取引するための口座が開設できます。その際に注意しなければならないのが、特定口座と一般口座の2つのタイプに分かれるという点です。さらに特定口座では源泉徴収あり・なしを選択しなければなりません。
 
投資信託の取引で利益が発生した場合、源泉徴収ありの特定口座では、金融機関が納税するため投資家は確定申告が不要となります。事務手続きが苦手な投資初心者は、この特定口座の源泉徴収ありを利用すれば煩雑な処理が省けます。
 
源泉徴収なしを選択した場合、投資家自らが確定申告をする必要があります。この場合、金融機関から交付される年間取引書を活用して確定申告をします。これに対し、一般口座は投資家自身で1年間の利益を計算し、運用益が上がっている場合は確定申告をする必要があります。この計算の手間は特定口座では省略されます。

iDeCo口座

投資信託を活用して運用する目的が老後資金の形成であれば、iDeCoを活用するのも有効です。iDeCoは原則60歳まで引き出すことはできませんので、余裕資金で長期的な運用をしたいところです。iDeCo口座に毎月拠出できる金額が定められており、自営業者は6万8,000円、会社員で勤務先に企業型個人年金がある場合は2万円、ない場合は2万3,0000円をそれぞれ拠出して、投資信託で運用します。iDeCoにおける投資信託で運用益が発生しても、非課税となるほか、毎月の掛け金は所得控除の対象となり、所得税と住民税が節税できるというメリットもあります。
 
これらの3つのプラットフォームを、資産運用の資金、目的に合わせてそれぞれ活用すれば、投資信託による運用益を目指すだけでなく、節税にも取り組むことが可能なのです。