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株式投資はもちろん、資産運用を行うにあたり、常にチェックしておくべきなのが「株価」です。ところが、実際のところ、日々更新されるこの数字が何を示しているのか、正確に理解している人はそう多くはないかもしれません。株価とは一体何を指しているのでしょうか。株価の性質を正確に理解することは、投資の運用成績にも大きな影響を及ぼします。この機会にきちんとした知識を蓄えておきたいところです。
株価は経済の温度計
平日のニュースなどで「本日の日経平均株価の終値は〇〇円でした」をよく耳にすることでしょう。この日経平均株価とは、日本経済新聞社が東京証券取引所の一部に上場している企業から、自動車や銀行、建設、医薬品、通信などの業種から225社を選択し、その各社の平均株価を算出したものです。
一部上場企業の約10%で算出される日経平均株価
株式会社は、投資家から事業資金を獲得するために、株式を発行して取引所に上場します。東京証券取引所の一部に上場している会社の数は2,170(2020年5月末時点)です。日経平均株価といわれる指標は、これらのすべての企業の株価の平均ではなく、このうちの約10%の企業の株価が対象となっています。つまり、日経平均株価に採用される企業は、日本を代表する意味合いを持っています。
しかし、時代の移り変わりとともに、産業構造にも変化が訪れます。また、日経平均株価の構成銘柄となるような企業といえども、株式の上場廃止になったり、東証一部から二部に降格したりすることもあります。そのような場合、現在の日本経済の指数を正確に反映させるため、この日経平均株価の構成銘柄の入れ替えが行われることもあります。
ですから、日経平均株価に採用されている銘柄は、現時点では日本を代表する企業でありますが、そのステータスは未来永劫ではないということを念頭に入れておくとよいでしょう。
米国株式市場の指標となる「ダウ工業平均株価」「S&P500」
日本国外でも日経平均株価と同様に様々な指数が存在します。例を挙げると、米国では「ダウ工業平均株価」と「S&P500」が代表的な指数です。
ダウ工業平均株価はニューヨーク証券取引所に上場する主要産業のうちコカ・コーラやボーイング、ナイキ、マクドナルドなど30社の銘柄で構成されています。対してS&P500は、ニューヨーク証券取引所に上場している約40業種に及ぶ500社の銘柄で構成しています。
ダウ工業平均株価が構成される銘柄の平均株価を指数化しているのに対し、S&P500は構成銘柄の時価総額を指数化しているという点が両者の間で異なります。
日米でそれぞれ株価の代表的な指数が存在しますが、それぞれの業種を代表するような企業で構成されており、株価はまさに経済の状況を推し量る温度計のような役割を果たしています。従って、株価を継続的にフォローすることは経済の現況を認識することに役立ち、投資をするうえで必要不可欠な情報となり得ます。
特に、こうした日経平均株価やS&P500の指標に連動するインデックス投資を実施している、あるいは投資を検討している場合は、株価の仕組みや変動の要因等に理解を深めておくことが重要になります。
株価の歴史的推移
経済の温度計ともいえる株価ですが、2020年6月末現在の日経平均株価は2万2,000円台で推移しています。さきほど説明したように、この数値は225社の株価の平均であるため、単純にこの数値が高いのかあるいは低いのかを判断することは困難でしょう。株価の基準を判断する1つの方法として、歴史的な推移の中でその変化を捉えることができます。
1989年12月、史上最高値を付けた日本の株式市場
「失われた20年」といわれるような長期に渡る低迷を経験するまで、日本経済はバブル景気に沸いていました。毎晩、ワインは高いものから売れ、終電を逃した後はタクシーをつかまえるのに1万円札を手に運転手へ合図を送るような光景が繰り広げられていました。
時は1989年12月29日、日経平均株価は取引時間中に史上最高値となる3万8,957円44銭を記録しました。しかし、バブルが崩壊すると、株価は右肩下がりに下落していき、2000年代に入るまで長期的な株価の回復傾向はみられませんでした。
株価に反転の兆しがみられたのは2003年、株価は7,000円台の水準まで落ち込んでいました。この年は、政府がりそなグループに対し公的資金を注入し、実質的な国有化を決定するなど金融不安が漂っていました。
この金融危機を乗り越えた日本経済は2007年には株価が1万8,000円台の水準まで回復したものの、バブル期に記録した最高値まで文字通りまだまだ道半ばの段階でした。株価の回復に期待が高まっていましたが、今度は2008年に起きたリーマン・ショックによって、その回復の足掛かりもへし折られてしまうことになるのです。
世界経済を震撼させた米国発の金融危機によって、瞬く間に日経平均株価にも動揺が広がり、あっさりと1万円台の水準を割り込むまで急落してしまいました。そして、2009年3月10日には、バブル経済崩壊後の最安値となる7,054円98銭まで日経平均は下落したのです。
史上最高値からわずか5分の1の水準まで落ち込み、文字通り失われた20年を経験することになったのです。
さらには2011年3月には東日本大震災が発生し、世界的な経済危機からのV字回復を遂げることができないまま、再び低迷期を迎えることになりました。
長期低迷からの回復は2013年のアベノミクスから
この低迷から脱却を果たしたのが、第2次安倍政権によってもたらされたいわゆるアベノミクスです。1万円台の水準にとどまっていた日経平均株価は、大胆な金融緩和策によって一気に2万円台の水準まで回復することになったのです。
このように歴史的な経緯を辿っていくと、現在の株価はバブル期に記録した史上最高値の6割ほどの水準にしか満たない一方、バブル経済崩壊後の最安値からは3倍程度上昇していると捉えることができます。
過去30年で株価10倍に成長している米国株式市場
一方、米国の株価は同じ時期にどのような動きをみせていたのでしょうか。日経平均株価が史上最高値を記録したころ、ダウ工業平均は2,000ドル後半の水準でした。しかし、日本がバブル崩壊によって日経平均株価が右肩下がりで落ち込んでいたのに対し、米国経済は順調に右肩上がりの成長を続けていました。
リーマン・ショックの震源地となった米国は、当時はダウ工業平均も急落しましたが、その後、震災に見舞われ経済回復が遅れた日本を横目に、米国経済はいち早く立ち直り、株価もV字回復を見せました。さらに、2020年2月には史上最高値となる2万9,551ドル42セントを記録しました。
日経平均株価がいまだに30年も前のバブル期の史上最高値を更新できない状態が続いているのに対し、ダウ工業平均は過去30年の間に株価が10倍以上に伸びており、日米で対照的な結果となっています。
株価はどのように動く?
ここまでバブル期以降、長期的な視点で、日本の株価がどのように推移してきたのかを見てきましたが、株価は日々値動きをしており、短期的にも大きな変化が見られる局面があります。さまざまな要因が、短期的に株価に影響を及ぼしますが、個別企業の動きが株価に衝撃を与えた例を紹介しましょう。
たった1社の決算発表が株価下落の引き金になることも
その1つが2003年4月に起きた「ソニー・ショック」です。その端緒となったのは、ソニーが発表した決算において従来予想していた業績を下回る内容となったことに対し、投資家の間に失望が広がったのです。
株価は行き過ぎた値動きを防ぐため、1日に変動できる値幅が定められています。このソニーの決算発表を受け、同社の株価は2日続けて値下げ幅いっぱいまで下落し、その影響は一社だけにとどまらず、関連する業種、さらには株式市場全体にまで動揺が広がりました。この時期はまさに前述した株価が7,000円台とバブル崩壊後の最安値を付けていた時期と重なります。
こうした個別企業が市場全体にインパクト与えた例は、ソニーだけではありません。2007年8月には、フランスの大手金融機関であるBNPパリバグループの傘下にあった投資ファンドが、投資家からの解約を凍結することを発表したのを受け、世界中の株価が下落しました。
当時、信用力の低い個人に対し住宅融資をするサブプライムローンに関連する証券が各金融機関で幅広く取り扱われていました。しかし、ローンの返済が焦げ付き、証券の価値が暴落したことによってBNPパリバグループは、投資ファンドの解約凍結に追い込まれたのです。
パリバ・ショックとして記憶されるこの出来事は、翌2008年のリーマン・ショックの引き金にもなったとも言われています。日経平均やダウ工業平均は様々な企業の株価で構成されていますが、ソニーやBNPパリバのように1つの企業の動向が市場全体に大きな影響を及ぼすこともあります。
各国中央銀行の政策に注目が集まる
個別企業の動きのほか、中央銀行によって主導される金融政策によっても株価の動きは左右されます。各国の中央銀行は、経済が過熱しすぎないようにするとともに、景気が冷え込んでいるときには刺激策に打って出る事で景気を下支えします。その手法の1つが政策金利を上下させることです。
一般的に景気が過熱気味で、バブルの回避が求められるような局面では、中央銀行は政策金利を引き上げます。個人にとっては、預金の金利が引き上がるため、より高い利息収入が見込めるメリットがあります。しかし、経済全体でみると、企業が金融機関から融資を受けて資金を調達する際に、金利が上がると借り入れコストが増加するため、積極的な新規事業への投資などが控えられます。こうして企業活動が抑制されることで、株価の行き過ぎた高騰が抑えられます。
一方、景気が芳しくない状況では、中央銀行は政策金利を引き下げます。これによって企業の借り入れコストが軽減され、積極的に新規事業などに投資しやすくなります。こうして企業活動が積極的になると、株価上昇への後押しとなります。
中央銀行トップの発言で株価が動くことも
中央銀行には政策金利のコントロール以外にも、そのトップである人物の発言によって株価に大きな影響力を与えることがあります。
その一例が2013年、当時の米国中央銀行にあたる連邦準備理事会(FRB)議長だったバーナンキ氏の発言です。バーナンキ氏がそれまでFRBが実施していた量的緩和策を縮小することを示唆したのです。
当時、FRBは債券を購入することで市場に大量な資金を供給していました。しかし、氏の政策の縮小をほのめかした発言に、市場は動揺してバーナンキ・ショックと呼ばれる株価の大幅な下落に見舞われました。
発表される各種の公的な統計データもインパクトあり
中央銀行による政策以外でも、経済に関する統計が発表されると株価が上下することがあります。代表的な統計に米国の雇用統計が挙げられます。毎月第一金曜日に公表されるこの統計は、失業率や非農業部門就業者数などのデータが含まれ、数値の改善や悪化といった結果が株価にも影響を及ぼすこともあり、市場関係者も注目します。
経済の世界では「米国がくしゃみをすると日本が風邪を引く」という格言があるように、景気を占う雇用統計の数字が悪くなれば、日本経済への影響も避けられず、結果として日経平均株価も下落してしまうこともあります。
経済のグローバル化により影響力を増す「為替変動」「自然災害」「テロ」
日米の関係でいうと、為替相場も株価に大きな影響を及ぼします。自動車や電化製品などの輸出企業が日本経済を牽引する産業構造では、ドルに対し円安となった場合は、海外での日本製品が割安になるため、価格競争力が高まり売り上げが拡大することが期待されます。結果として、業績アップが見込まれることから、円安が進行すれば株価が上昇する傾向があります。
一方、円高になると、海外での製品価格が上昇することで、販売にブレーキがかかり企業業績が悪化し、株価も下落圧力がかかります。
直接的な経済のイベントや統計、為替相場以外にも、株価にインパクトをもたらすような出来事として、自然災害や疫病、戦争、テロなどの事件も挙げられます。2001年9月11日に米国で発生した同時多発テロ事件では、世界中の株式市場が政情不安から株価を大きく下げました。事件の現場となった米国では、混乱を回避するため証券取引所の閉鎖に追い込まれ、株式取引が再開した後、株価は暴落に見舞われました。このように、直接的な経済の出来事ではない場合でも、後々の経済活動に影響を及ぼしたり、投資家の心理を冷え込ませたりするようなインパクトがあれば、株価も必然的に下落する可能性が高まります。
こうした出来事は当然ながら予測不能で、いつ発生するのかは誰も知る術はなく、株価の暴落によって莫大な損失を被ってしまう投資家もいます。従って株価の動きを見通すことは一見して困難なようにも見えます。一方で株価には時期に応じて上昇あるいは下落しやすいタイミングというのも存在します。
格言に見る、株価上昇には周期的トレンド
米国の金融の中心地であるウォール街には「Sell in May and go away(5月に売り逃げろ)」という格言があります。これは1月から5月にかけて株価は上昇し6月に下落する傾向があるため、5月に株を売却して利益を確保すべしという意味です。
この格言にはさらに「don’t come back until St Leger day(9月のセントレジャーの日まで戻ってくるな)」という続きがあります。つまり、6月から9月までは株価のパフォーマンスは芳しくなく、9月頃になってようやく株価が底を打ち、上昇を伺う局面に入る傾向があるとされています。
この格言は米国の株式市場では広く知られており、株価にも少なからず影響を及ぼすことがあります。外国人投資家として日本の市場に投資する際にも多少なりともこの格言に基づいた投資行動を取ることで、日経平均株価もこの格言の影響がみられることがあります。
日本独特の株価変動要因「株主優待」
一方、日本の株価の変動に特有の動きとして、株主優待との相関性があります。日本企業は株主に対し、配当金だけでなく、自社の製品やサービスを還元する例が多々あります。これは世界的にみても珍しい株主還元の方法です。
こうした株主優待を目当てにする投資家も多く、株主優待が受けられるタイミングを見計らって株の売買を実施することがあります。国内では3月に決算を発表する企業が大多数で、3月の最終週の時点で対象となる企業の株式を保有していれば株主優待が受けられます。
つまり、本来であれば株を手放したいと考えている投資家も、株主優待を受けるまでは売却を見送る傾向があります。また、株主優待を目当てに、この時期に株を購入する投資家も存在します。
従って、株主優待を目当てにした需要が高まることから株価が堅調に推移する期待が高まる一方、株主優待を受ける権利が確定した後、株を売却する動きが発生することで、4月には株価に下落圧力がかかることもあります。
個別企業の株価はどのように動く?
日経平均株価やダウ工業平均が変動する要因はいくつもありますが、これらの平均株価はすでに説明した通り、個別企業の銘柄で構成されています。それでは、それぞれの企業の株価はどのように上昇したり、あるいは下落したりするのでしょうか。
各企業の決算はマストで確認
投資家が必ずチェックするのが各企業の決算です。企業活動の成績表ともいえる決算は、それまでの売り上げや利益などが公表されるほか、先行きの予想も明らかにされます。たとえ、直近の業績が好調に推移していたとしても、業績予想が芳しくなければ投資家から失望を買い、株が売られて株価が下落することがあります。
また、同じく各企業の株価が下落する要因として、粉飾決算や検査データの捏造といった企業による不祥事、商品やサービスが事故を引き起こし、消費者に損害を与えるケースなども考えられます。業績が悪化したことで、株主に対する配当金を引き下げたり、配当をしない無配の方針に転換したりすると、投資家が嫌気を差して株を手放す動きが加速して株価が下落することもあります。
裏を返せば、業績が好調に推移したことで、株主に利益を還元するためにこれまで無配だった企業が配当金を出したり、あるいは配当金を引き上げる増配を実施したりすると、株が買われ株価の上昇に繋がる期待が高まります。
また、その企業が新商品を開発してヒットを飛ばしたり、特許を取得したりすることで株価が上がるのを下支えすることも、これまでいくつもの企業でみられてきました。
政府の政策や新しい働き方が、特定の業種に影響を与えることも
さらに、政府の政策によって特定の業種に注目が集まり、投資家の期待から株価が上昇することがあります。具体例を挙げると、政府が提唱した訪日外国人観光客の誘致や働き方改革などです。前者によって、インバウンドと言われる小売りや旅行サービスなどの企業で株価の上昇がみられました。
また、働き方改革では、在宅で仕事ができるようなプラットフォームを提供する企業に注目が集まり、株価上昇の後押しとなりました。
株価は投資に必要不可欠な情報
株価と一口にいっても、日経平均株価やダウ工業平均株価、S&P500さらには個別企業の株価など様々な数値が存在します。日経平均株価やダウ工業平均株価は、東京証券取引所の一部、ニューヨーク証券取引所にそれぞれ上場する企業のうち、主要業種の代表的な企業の株価を平均した数値であるということを説明いたしました。
それぞれの数値は、経済の現状を知るための温度計のような役割を果たし、さまざまな要因でその温度が変化します。また、時代の変化のなかで、株価も大きな変動を見せてきました。その変動には、中央銀行による政策のほか、天災や紛争なども大きな影響を及ぼしたことは歴史が証明しています。日経平均株価やダウ工業平均株価がどのように推移していくのかという点を観察しておくことは、経済全体を見渡すことに寄与し、投資をするうえでは運用成績にも関わるため不可欠となります。
さらに、こうした平均株価を構成する個別企業の株価がどのように変化していくかについても説明してきました。大きな経済の流れとともに、個別企業の状況についてもフォローできれば株価についてもより一層の理解が深められていくでしょう。