ビジネスとの関係性が強い言葉を知っておくと、経営の幅を広げられることがある。たとえば、資金調達やブランド力に関するエクイティがよい例だろう。今回はエクイティの意味をはじめ、エクイティファイナンスやブランド・エクイティなどの関連用語をまとめた。
目次
エクイティとは?
エクイティ(Equity)とは、株主資本を意味する言葉であり、ビジネスとの関係性が強いワードだ。企業の資金調達や財務、マーケティングなどと密接に関与している。
ビジネスシーンでエクイティという言葉を使用する場合、エクイティファイナンス(Equity finance)もしくはブランド・エクイティ(Brand Equity)のいずれかをさすケースが多い。エクイティについて理解を深めるには、関連用語の意味まで知っておく必要がある。
エクイティファイナンスの意味
以下に該当する企業の資金調達はエクイティファイナンスと呼ばれている。
・公募増資
・私募増資
・転換社債型新株予約権付社債(CB)
・優先株の発行
つまりエクイティファイナンスとは、株式の発行によって企業が資金を調達することだ。基本的には返済期限がない資金調達方法なので、調達した資金はバランスシート上で資本の部に計上される。
エクイティファイナンスには企業の財務面を強化する側面があり、主に資金を必要とする成長企業が実施している。
【エクイティファイナンスとデットファイナンスの違い】
エクイティファイナンスと対になる言葉としてデットファイナンスがある。デットファイナンスは、金融機関からの借入れや社債発行など負債という形で資金を調達する方法の総称だ。
エクイティファイナンスによる資金調達が難しい場合、デットファイナンスの実施を検討する。各資金調達方法の違いを簡単に紹介しておこう。
エクイティファイナンスは投資家への影響が大きく、ハイリスク・ハイリターン型の資金調達方法といえる。デットファイナンスも利息が負担となる可能性があるため、安易にローリスクと考えるべきではないだろう。
資金調達の必要性に迫られた場合、それぞれの特徴を見比べながら、より適した方法を選びたい。
ブランド・エクイティの意味
ブランド・エクイティとは、企業のブランドが持つ資産価値を意味する。また、資金や労力を投入することで、ブランドの価値を高める行為をさす場合もある。
ブランド・エクイティは、企業のM&Aが盛んになり始めた1980年代のアメリカで広まった考え方だ。
当時、企業のブランド力は明確に数値化される対象ではなかった。しかし、育成に成功したブランド力が売上増加などをもたらすと判明していき、有形資産と同じく資産価値を持つとして認識され始めた。
いつしか、ブランド力を無形資産として計上しようと考える人が増えていき、ブランド・エクイティの概念が世界中に浸透していった。
ブランド・エクイティの評価方法は、一般的に以下の3種類が使い分けられている。
ブランド・エクイティは、企業や事業の売却価格に大きな影響を及ぼす。M&Aを見据えている経営者は、特にこのことを意識しておきたい。
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エクイティファイナンスのメリット・デメリット
資金調達にはさまざまな手段がある。直面する状況によって適した方法が変わってくるので、各方法の特徴はしっかりと理解しておきたい。エクイティファイナンスの主なメリット・デメリットをわかりやすくまとめた。
エクイティファイナンスのメリット
エクイティファイナンスの最大のメリットは、原則として返済義務と利息が発生しない点だ。事業が成功すると株主に配当金を分配するが、調達した資金を返済する必要はない。
また、エクイティファイナンスによって調達した資金は、一般的に自己資本に加えられる。つまり、会社の自己資本比率が高まるので、エクイティファイナンスに成功すると以下のようなメリットも発生する。
・財務面が強化される
・金融機関からの評価が高まる
・投資家や他企業から注目されやすくなる
財務面が強化される意味合いは予想以上に大きい。財務面に余裕があると、大きなビジネスに投資したり、キャッシュ不足のリスクを抑えたりできる。
エクイティファイナンスのデメリット
エクイティファイナンスには軽視できないデメリットも潜んでいる。代表的なデメリットとしては、株式の希薄化が挙げられるだろう。
新たに株式を発行すると、1株あたりの株価が必然的に下がるため、投資家に多大な影響を及ぼす恐れがある。場合によっては株主が大きな損害を被るので、エクイティファイナンスの実施前には既存株主への説明が必須だ。
また、株式の譲渡先によっては、経営権が弱まってしまう点も留意しておきたい。たとえば、新たに発行した株式を1人の投資家が独占すると、最終的には経営権を握られてしまう可能性がある。仮にそこまでいかなかったとしても、企業は株主の意向を無視できない。少なからず経営の自由度が下がることは避けられないだろう。
そのほか無視できないデメリットは、配当政策を見直す必要性が生じる点だ。もし配当政策を見直さずにエクイティファイナンスを実施すると、配当金の負担が大きくなりすぎて経営を圧迫しかねない。
エクイティファイナンスのメリット・デメリットまとめ
メリットだけを見ると魅力的な資金調達方法のように見えるが、エクイティファイナンスには深刻なリスクも潜んでいる。社内や投資家の反応も見ながら慎重に実施を検討していきたい。
エクイティファイナンスの進め方は?中小企業が実施する手順
ほとんどの中小企業は借入によって資金を調達しているが、状況次第ではエクイティファイナンスのほうが望ましい場合もある。特に返済負担を抑えられるメリットは大きいため、エクイティファイナンスの実施手順についても合わせて確認しておこう。
【STEP1】出資者を探す
エクイティファイナンスを成功させるには、自社株式の購入者(出資者)を探さなくてはならない。特に非上場企業の場合は、一般投資家から資金を募ることが難しいため、あらかじめ資金調達の見通しを立てておくことが重要だ。
非上場企業の出資者としては、主に以下のような者が挙げられる。
上記のような出資者が見当たらない場合は、エクイティファイナンスの実施前に人脈を広げておく必要がある。無暗に新株を発行しても、買い手が現れなければ資金調達にはつながらないため、出資者の目星は早い段階でつけておきたい。
【STEP2】新株発行の方法を決める
中小企業が新株を発行する方法は、以下の3つに大きく分けられる。
中小企業が公募増資を行うことは難しいため、基本的には①または②の方法を選ぶことになる。また、すでに調達したい額が決まっている場合は、この段階で株式の発行量や金額を決めておくことも必要だ。
【STEP3】株主総会の開催
増資は経営者の独断で行えるものではないため、計画を立てたら株主総会を開くことになる。決議が必要になる事項としては、以下の4つが挙げられる。
・発行する株式の種類と数
・払込金額
・増資する金額
・払込期日や期間
また、持ち株比率が大きく変わるようなケースでは、株主に対する事前説明も必要になる。特に株式の希薄化が起こり得る場合は、既存株主からの反感を買う恐れがあるので、株主総会の前に説明する機会を設けておきたい。
【STEP4】新株発行の手続きを進める
株主総会の決議が終わったら、あとは事務的な手続きを進めていく。具体的な手続きとしては、取締役会における割当決議や出資金の払い込み、法務局への登記申請などが挙げられる。
また、株主名簿や会社のホームページなど、対外的な資料の更新も忘れてはいけないポイントだ。なお、実際の手続きはケースによって異なる可能性があるため、実際に増資を行う場合は専門家(弁護士や司法書士など)の活用をすすめたい。
エクイティファイナンスを利用できないときの選択肢は?
非上場企業にあたる中小企業は、エクイティファイナンスによる資金調達が難しいこともある。中小企業にとって資金調達は死活問題になり得るため、エクイティファイナンスを利用できない場合の選択肢についても確認しておこう。
日本政策金融公庫は多くの中小企業から利用されているが、申し込みから融資実行までに1~2ヶ月ほどかかることがある。資金繰りがひっ迫した状態で利用すると、資金調達が間に合わなくなる恐れがあるので、金利の低さだけで選ぶことは避けたい。
中小企業の資金調達では、金利の低さ(返済負担)以外にも「調達金額」や「融資までのスピード」に目を向ける必要がある。つまり、全体的なプランを意識した行動が重要になるため、資金調達の前には自社が直面している状況をしっかりと整理しておこう。
ブランド・エクイティを高めるメリット・デメリット
企業がブランド・エクイティを高める施策を打つと、多方面にさまざまな影響が生じる。そのため、ブランド・エクイティを高めるメリットとデメリットも知っておきたい。
ブランド・エクイティを高めるメリット
ブランド・エクイティを高めることに成功すると、消費者が安心して商品・サービスを購入できるため、企業の売上は順調に伸びると考えられる。また、顧客の口コミによって評判が広まり、新たな顧客層を開拓しやすくなる。
最近では、M&Aにおいてもブランド・エクイティが重視されているので、ブランドの育成に成功すると多額で企業・事業を売却できる可能性がある。
そのほか、リピーターの増加や広告宣伝の効果向上、他社との価格競争回避なども期待できる。
ただし、ブランド・エクイティは簡単に高められるものではないため、施策を打ち出す前にはブランディングやマーケティングの基礎をしっかりと身につけておかなくてはならない。
ブランド・エクイティを高めるデメリット
通常、ブランドの育成にはコストや時間がかかる。商品・サービスの質を高めるだけではなく、認知してもらえるよう広告・宣伝にも力を入れなければならない。製品や業種によっては、ブランドの育成だけで10年以上の時間を要することもある。
また、ある程度の育成に成功したブランドは、悪評の影響を受けやすくなる。仮にそれが事実でなくても、悪い噂が一度広まると企業価値が著しく下がってしまうだろう。
ブランド・エクイティを高めるメリット・デメリットまとめ
メリット・デメリットを見比べると、ブランド育成は安易に取り組むべきではないとわかるはずだ。また、あまりにもブランド育成の範囲を広げすぎると、これまで築き上げた企業のイメージが壊れてしまう可能性も考えられる。
したがって、ブランド・エクイティに関する計画は、中長期的な視点をもって慎重に練らなくてはならない。
エクイティに関する知識を増やして経営の幅を広げよう
エクイティファイナンスやブランド・エクイティなど、エクイティに関する言葉について解説した。いずれも経営の場面で欠かせない知識だと、おわかりいただけたのではないだろうか。それぞれの意味やメリット・デメリットをきちんと理解して、資金調達や経営戦略の幅を広げていきたい。