フードロスに対する世間の関心が高まっていますが、中にはその対策が難しいと感じている企業担当者もいらっしゃるかもしれません。業務の仕組みや人員の配置、設備などを変えるケースもあり、そう簡単にはいかないというのが本音ではないでしょうか。

しかし今後は食品廃棄の対策を後回しにしていると、業界の中で取り残され企業価値を失う可能性があります。まずはフードロスや行政が推進する食品ロスの意味を知り、危機感を持って対策を取るべきです。

ここでは日本での食品ロスの実態や政府がどの分野を問題視しているか、さらに食品ロス削減に取り組んでいる企業の事例などを紹介します。

日本は食品ロスとして2分野に区分け

SDGs目標のフードロスと日本の現状 食品関連企業の廃棄対策は急務
(画像=Vasiliy/stock.adobe.com)

日本の行政は、原料収穫から消費までの全体で発生する食品の廃棄を「食品ロス」と呼んでいます。さらにロスの発生場所により「事業系廃棄物」と「家庭系廃棄物」に分けています。

「事業系廃棄物」は、食品メーカーや卸売、小売店、飲食店などでまだ食べられるのに廃棄される食品です。例えば見た目が悪くなった、商品入れ替えで撤去や返品をされた、期限が切れたなどの理由で捨てているものです。

「家庭系廃棄物」は、食べ残しや期限切れの食材、食べられる部分なのに切り取るなどで捨てられる家庭の食品です。

事業系食品ロスの現状

日本の食品廃棄物などは2018年度推計で2,531万トン、そのうち食べられるのに捨てられている食品ロスは約1/4の600万トンです。これは国民1人当たりにすると1日約130グラムで、毎日茶碗1杯のご飯を捨てていることになります。

そしてこの食品ロス600万トンのうち、事業系が324万トン、家庭系が276万トンと事業系の方が多くなっています。ここで注目したいのは、行政は事業系廃棄物の削減に力を入れていることです。

2030年までに事業系食品ロスを半減

国は食品ロス削減のため、2019年に「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律」(食品リサイクル法)を公表しました。この中で事業系食品ロスを、2000年度比で2030年度までに半減させることを目標にしています。

テレビなどのメディアでは、小売や外食でまだ食べられる食品が廃棄される様子を取り上げていることがあります。しかし現実は、食品製造業も含めた事業系企業全体で食品ロスが発生しています。特に食品製造業は、外食産業や小売業より多い食品ロスを生んでいます。

2030年までに10年を切っており、今後は業種を問わず食品に関連するすべての企業が相当な削減努力を求められるはずです。食品ロス対策は大手企業が行えば良いと考えていると、いつの間にか業界の中で時代遅れになっている可能性があります。

食品ロス削減への企業の取り組み

こうした流れを受け、すでに多くの企業で食品ロス削減への取り組みが始まっています。ここでは、農林水産省のサイトで紹介されているいくつかの事例を紹介します。

永谷園ホールディングス

食品メーカーの永谷園ホールディングスでは、食品ロス削減に貢献するため商品の賞味期限延長の可能性を検討しました。より長い期間おいしく食べられるようになれば、期限切れによる廃棄を抑えられるからです。そして検討の結果、75のアイテムで賞味期限の延長を実現しています。

また同社では、製造工程での食品ロスを削減するため各工場で新たな設備を導入したり、工程を見直したりもしています。さらにグループ各工場から排出される食品廃棄物を、肥料や飼料などにリサイクルする取り組みもしています。

あさひ製菓株式会社

山口県の洋菓子メーカー・あさひ製菓では、製造途中で形が崩れたり賞味期限が近くなったりした商品を半額で販売するアウトレット店「ハーフスイーツ」をオープンしています。以前はこうした商品を廃棄していましたが、せっかく作った商品を無駄にしたくないとの思いから生まれました。

他にも、運営する店舗すべての在庫状況をリアルタイムで把握するネットワークを構築。これにより効率的な生産計画や、店舗間の在庫移動を可能にして商品廃棄の削減に努めています。

株式会社ローソン

コンビニエンスストアのローソンでは、店舗への納品期限が切れた食品などをフードバンク推進協議会へ寄贈する取り組みをしています。

フードバンクとは、包装の破損や過剰在庫、印字ミスなどで流通できなくなった食品を企業から提供してもらい、支援を必要とする家庭や施設へ無償提供する活動です。ローソンでは2020年4月時点で、合計15万5,000個の商品を寄贈しています。

コープデリ生活協同組合連合会

コープデリグループでは、規格外農産物の販売で食品ロス削減に取り組んでいます。規格外農産物とは、小さな傷が付いたりサイズが違ったり、天候被害を受けたりした野菜や果物です。これまでこうした農産物は、食べられるのにもかかわらず廃棄されるのが一般的でした。

そこでコープデリグループでは、見た目は劣るものの味に問題のない農産物をちょっとお得な値段で販売しています。大きな値引きではなく少しの割引であるところがポイントで、生産者の利益を守りつつ消費者もメリットのあるWIN-WINの取り組みになっています。

国分グループ本社株式会社

酒類や食品の卸売および流通、加工を手掛ける国分グループでは、同社が展開するコンビニエンスストア「コミュニティ・ストア」で、食品ロスを解決するアプリ「No Food Loss」を導入しています。

これは販売期限を過ぎ今までなら食品ロスとなっていた商品を、消費期限までに見切り販売する情報を消費者に発信する仕組みです。食品ロスを削減するための販売情報を、リアルタイムで直接消費者に届けるという新しい取り組みとして注目されています。

ワタミ株式会社

外食事業を手掛けるワタミグループでは、工場から排出される食品廃棄物を鶏の飼料にしています。さらにその鶏が産んだ卵を、マヨネーズ原料として弁当に使っています。廃棄物を活用して新たな商品を生み出すという、リサイクルループ型の食品ロス対策です。

また2019年からは、同業4社と共同で外食産業から排出される食品廃棄物のリサイクルループ構築に取り組んでいます。今まで店舗から排出される食品廃棄物は、量が少なくリサイクルが難しいものでした。しかし複数企業の店舗から共同で集めることで、リサイクルできる量を確保するのです。

こうして各店舗から集められた廃棄物は、リサイクルされ鶏の飼料になります。そしてその鶏が産んだ卵を各店舗で仕入れ料理として提供しています。

海外取引をする企業はフードロスの意味を知ろう

欧米では、企業の大小を問わずSDGsへの取り組みが熱心に行われています。そのため食品の輸出入にかかわる日本の企業は、より明確に食品廃棄を減らす取り組みを示す必要があります。そこで注意したいのが、フードロスという言葉の意味です。

日本でのフードロスは、食べられる食品廃棄全般の意味で使われることがあります。しかし海外では、食品の原料収穫から加工、製造、流通までに発生する食品廃棄を指しています。その後の小売や外食、家庭で発生する食品廃棄は、フードウェイスト(Food Waste)と呼ばれ区別されます。

持続可能な達成目標であるSDGsの12番目のゴールでは、後半のフードウェイストを2030年までに半減させようとしています。このフードウェイスト該当する小売や外食の企業は、よりしっかりとした食品廃棄の削減対策を取ったうえで諸外国と取引すべきです。

食品企業の廃棄対策は急務

もはや食品を無駄に廃棄することは、世界的な取り組みのSDGsへ逆行することになり対策を後回しにする企業は世論から強く批判される恐れがあります。また政府も事業系の食品廃棄に強い危機感を持っており、2030年の半減目標に向けてさまざまな規制が作られる可能性もあります。

食品廃棄の削減は、持続可能な社会への貢献だけでなく長い目で見てコスト削減となり、企業にとってもメリットがあるものです。将来に生き残れる企業になるためにも、早急に食品廃棄を減らす対策を取るようにしましょう。

(提供:Renergy Online



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