日本国内でのSDGs(持続可能な目標)の注目度がここ最近、急速に高まっています。しかし、SDGsはあくまでも国連加盟国で共有する世界の目標です。そのため、日本単体ではなく、海外と比較して認知率や達成度を評価する視点も必要でしょう。グローバル視点で見たときの日本のSDGsのポジションを確認します。

日本のSDGsは「認知率が低く、達成度が高い」との結果に

日本のSDGsは遅れている?進んでいる?認知率と達成度を海外と比較
(画像=hogehoge511/stock.adobe.com)

本稿では、海外の機関がまとめたSDGsの「認知率調査」と「達成度調査」をもとに、日本のSDGsのポジションを明らかにしていきます。先に結論からお伝えしますと、「認知率調査」と「達成度調査」の結果は相反する結果になりました。

SDGs認知率で見ると、日本は海外と比較して著しく遅れています。一方、SDGsの達成度では、日本は上位にランクインしています。2つの調査の結果をくわしく見ていきましょう。

SDGs認知率ランキングで日本は28カ国中、最下位

世界経済フォーラムの「SDGsの認知率調査(2019年)」で日本は対象国の28カ国中、最下位の結果でした。レポート内では「日本とイギリスはSDGsの馴染みが最もない国としてランク付けされた」と述べられています。この調査に基づけば、日本はSDGsで著しく遅れている国ということになります。

下記が「SDGsの認知率調査」の結果です。日本の「SDGsに精通している〜SDGsを聞いたことがある」という認知率の割合は49%で対象国の28カ国中、最下位。世界平均は74%ですから大きな開きがあります。また、認知率トップのインドは89%であり、日本とは40%もの開きがあります。

日本のSDGsは遅れている?進んでいる?認知率と達成度を海外と比較
出典:WORLD ECONOMIC FORUM News Release

さらに「SDGsに精通している」という人の割合で比べてみても、世界平均の26%に対して日本は8%しかいません。こちらも対象国の28カ国中、最下位の結果です。

参考情報としては、日本のSDGs認知率がここ数年で急速に上がっている点も見逃せません。2021年4月、電通が発表した第4回「SDGsに関する生活者調査(調査期間2021年1月)」によると、SDGs認知率は54.2%に達しています。

これは前回の第3回(調査期間:2020年1月)のときのSDGs認知率29.1%からほぼ倍増しています。今後、国際的なSDGs認知率の調査があれば、ランク付けが改善される可能性があることにも留意したいところです。

SDGs達成度ランキングで日本は165カ国中、18位

(2019年段階の)SDGs認知率では最下位だった日本ですが、「SDGs達成度調査」になるとランキング上位、つまりSDGsにおいて進んだ国との結果になります。

SDSN(Sustainable Development Solutions Network)などがまとめた「サステナブル・ ディベロップメント・レポート2021(Sustainable Development Report 2021)」内で示された「SDGs達成度ランキング(SDG Index scores)」で日本のSDGs達成度は調査対象の165カ国中18位です。上位10%にはおしくも届きませんでしたが上位のポジションといってよいでしょう。ちなみに同じランキングの日本の昨年順位は17位でした。

SDGs達成度調査は、SDGsが掲げる「17の目標」の達成度をもとにその国のSDGs達成度を総合的に評価するものです。SDGs達成度ランキングの上位10カ国は次の通りです。
※()内はそれぞれの国の総合的な評価(score)です。

1位 フィンランド(85.9)
2位 スウェーデン(85.6)
3位 デンマーク(84.9)
4位 ドイツ(82.5)
5位 ベルギー(82.2)
6位 オーストリア(82.1)
7位 ノルウェー(82.0)
8位 フランス(81.7)
9位 スロベニア(81.6)
10位 エストニア(81.6)

上位3位までは北欧諸国が独占、10位までにはドイツやフランスなどのEU主要国もランクインしています。同調査の11位〜20位の国は下記の通りです。日本は18位でこれはスイス、イギリスに次ぐポジションです。

11位 オランダ(81.6)
12位 チェコ(81.4)
13位 アイルランド(81.0)
14位 クロアチア(80.4)
15位 ポーランド(80.2)
16位 スイス(80.1)
17位 イギリス(80.0)
18位 日本(79.8)
19位 スロバキア(79.6)
20位 スペイン(79.5)

参考までにこの「SDGs達成度ランキング2021年版」において、アメリカは32位(スコア76.0)、中国は57位(72.1)となっています。このような結果を見ると、日本はSDGs達成度において、SDGs で世界をリードしているヨーロッパ諸国に交じって健闘しているといえるのではないでしょうか。

「サステナブル・ ディベロップメント・レポート2021」内で日本が具体的にどのように評価されているかについても見てみましょう。下記の表がSDGsが掲げる17の目標ごとの各国の達成度です。

表の見方は、最下段が日本(Japan)の評価です。グリーンの丸は現時点で達成されている目標。イエロー、オレンジ、レッドと丸の色が変わるにつれて、その目標でより大きな課題が残されていることを示します。

日本のSDGsは遅れている?進んでいる?認知率と達成度を海外と比較
出典:「Sustainable Development Report2021」

上記をもとに、日本のSDGsにおいて「達成度の高い目標」と「課題が残る目標」をまとめると次のような結果になります。

達成度の高い目標目標4:質の高い教育をみんなに
目標9:産業と技術革新の基盤をつくろう
目標16:平和と公平をすべての人に
大きな課題が残る目標目標5:ジェンダー平等を実現しよう
目標13:気候変動に具体的な対策を
目標14:海の豊かさを守ろう
目標15:陸の豊かさも守ろう
目標17:パートナーシップで目標を達成しよう

このように評価の中身を見てみると、日本はSDGsの達成度において上位のポジションではありますが、まだまだ課題が残されていることを再認識します。

目標5の「ジェンダー平等」においては、男女の賃金格差が解消されないこと、女性の管理職比率が低いことなどがフォーカスされていますが、大きく改善する流れになっていません。日本のSDGs達成を阻む大きな壁といってよいでしょう。

目標13の「気候変動の具体的な対策」については、2050年に温室効果ガス排出を実質ゼロにする、いわゆる「2050年カーボンニュートラル」が掲げられました。そして、カーボンゼロの通過点である「2030年に温室効果ガス約46%削減」などの高いハードルが設定されるなど徐々に具体化しつつあります。今後、さらに具体的かつ実現可能な対策を構築できるかという日本の本気度が問われています。

目標14と15の「海と陸の豊かさを守ろう」や目標17の「パートナーシップで目標を達成しよう」については、ジェンダー問題や気候変動対策などに比べて日本国内の注目度が低い感もあります。これらが日本のSDGs達成の課題であることを共有する流れを醸成する必要がありそうです。

日本のSDGs達成度が高いのは、戦後の資産頼みの面も

最後に前項目でご紹介した「SDGs達成度ランキング」についての補足です。この調査で日本はランキング上位、つまりSDGsにおいて進んだ国との評価でした(165カ国中、18位)。ただ、この結果だけを見て「日本はSDGsに十分取り組んでいる」と評価するのは早計です。

もう一度、日本のSDGsで達成度が高いと評価された目標を見てみましょう。

目標4:質の高い教育をみんなに
目標9:産業と技術革新の基盤をつくろう
目標16:平和と公平をすべての人に

これらに共通するのは 「SDGsが始まる以前からすでに達成されていた」ということです。「質の高い教育環境」「産業のしやすいインフラ」「平和な国家」などはすべて戦後の日本で構築されてきた環境です。

一方、以前から社会問題として取り上げられることの多い「ジェンダー問題」や「気候変動対策」などは、徐々に改善されている面もありますが、そのスピードは国際社会が納得するまでには至っていません。今後の日本が「戦後の資産頼み」ではなく、「自発的な努力」によってどこまでSDGsの達成度を向上させていけるのか。その真価が問われています。

(提供:Renergy Online



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